夏になると各地で花火大会が開催されます。色とりどりに輝く夜空を楽しみに多くの人が訪れますが、その陰で歓喜に舞う鉄道ファンがいます。大勢が移動するが故に、花火大会へ出かける際は自動車での移動は不可能に近い。花火を楽しむ人々を陰で支えるのが公共交通機関で、工夫を凝らして大量のお客さんを効率よく運んでいます。その中で珍しい列車が見られることがあり、中には列車に乗るのが目的で「花火はついで」という人もいます。珍しい「花火臨」の一例として、(1)大曲の花火、(2)諏訪湖の花火、(3)伊東の花火、(4)土浦の花火をご紹介します。
花火大会とは
みなさん、当然ご存じかとは思いますが、花火大会について復習しましょう。
花火大会の正式名称はご存じですか?
花火鑑賞客輸送のための臨時列車の運転大会
=花火大会
でしたよね!?
ここまで大丈夫でしょうか?
…はい、大丈夫ですね。では先に進めましょう。
花火大会時は多くのお客さんが移動します
多くのお客さんが現地に向かいます
花火大会の魅力は、その圧倒的な美しさと迫力にあります。夜空を彩る色とりどりの花火は、心を打つ感動を与え、観客を魅了します。家族や友人と共に楽しむことで、特別な思い出が生まれるのも魅力の一つです。おじさんは知ってます。カップルが生まれたり消えたりしていることも。
とりあえず、これらは決してスマホの画面で花火の映像を見るだけでは味わうことができませんから、現地に赴きたいと思うのは自然なことですし、それが最大限に楽しめる方法でしょう。
その結果、花火大会に多くの人が集まります。
自家用車の利用は無謀
自家用車を使って会場に向かうのは非常に厳しい。
交通渋滞、交通規制、高額な駐車場代…
花火大会に車で行くという発想はあまりに無謀であることは言うまでもありません。
結果として、多くの人が電車やバスで花火大会に出向くことになります。
電車もパンクします
電車は大量輸送に適した乗り物で、狂気の沙汰とも言われる通勤ラッシュもこなしています。これと同じ要領で花火大会に出向くお客さんも大量輸送しますが…
ここで2つの問題が発生します。
当日は「土休日ダイヤ」
前述のように大勢の人を一度に運べる利点がある鉄道ですが、そのダイヤは需要に合わせて効率的な供給ができるように組まれています。
花火大会が実施される多くのケースで、当日は土休日ダイヤとなっており、そもそも「多くのお客さんを運ぶ」想定にはなっていないのです。
お客さんの数が「短時間集中型」
特に花火大会終了直後の時間帯に“通勤ラッシュを超える”利用が集中し、普通のやり方では運びきれなくなります。
大量に押し寄せるお客さんをいかにして捌くかが、腕の見せ所となります。
花火大会の臨時列車(=花火臨)を運転
多くのお客さんを効率的に運んだり、または遠方から花火大会へ向かう際の利便性を向上するため、数多くの臨時列車が運転されます。
これらは花火臨と呼ばれています。
花火大会の臨時列車
=花火臨
花火臨は、まさに花火大会のために運行される列車ですから、花火大会とは切っては切れない関係。
通常は、当該路線で運用されている列車を使って運行されるのですが…
- 車両が足りない場合は他地域から引っ張り出して運行する
=通常とは異なる車両運用を楽しめる - 極端に利用の多い区間に限定して運行する
=普段は見られない行先表示を楽しめる - 極端に遅い時間まで運行する
=夜行列車のように楽しめる - 遠方客の便宜を図った臨時列車を運行する
=普段は乗れない臨時列車を楽しめる
などの理由から、鉄道ファンが騒ぎ出します。笑
笑えない?
…ですかね。
たしかに、花火を見るお客さんを運ぶための電車なんだから寄ってくるなという意見はごもっとものようにも見えますが…
花火大会の楽しみ方は人それぞれというのが私の考え方ですので、この先はご同意いただける方のみどうぞ。そうではない方は読んでも楽しめないと思いますので、花火大会の詳細情報を別サイトでお探しくださいませ。
珍しい花火臨の一例をご紹介
大曲の花火
大曲の花火は、雄物川の河川敷で行われる花火大会で、特に夏に行われる「全国花火競技大会」は全国の花火師が本気を出して競い合う”日本一盛大な花火大会”とも言われています。
…って、そういう話を聞いているわけではないですよね?
大曲の花火での最大の見どころは、秋田新幹線「こまち」の深夜臨時運行です。
8月26日(27日)に運行される「こまち376号」は大曲00:58発、盛岡01:57着として運行される、通常では考えられない夜中に走る新幹線となっています。フル規格の新幹線区間は24時以降は原則として運転されませんが、秋田新幹線は在来線なので特段気にせずともセーフですね。
そのほか、奥羽本線方面に向かう、大曲00:31発、新庄02:16着の「スターマイン20号」なども注目できる存在でしょう。真夜中の奥羽本線を行きます。
なぜそんな夜中に長距離走るのかというと、大曲周辺には宿泊施設が限られていて、花火鑑賞客が路頭に迷うのを防ぐためと思われます。大曲に宿泊できないのであれば、盛岡・秋田・新庄方面に利用客を流すしかないのです。
一方、花火大会終了直後に一気に走らせようとしても、車両にも線路容量にも限界がありますから、長時間にわたる運行になるのではないかと考えられます。
または、花火の運営にかかわられた方々が現場撤収後に利用することも想定されているのかもしれません。
さすがに深夜帯の乗客は少ないようで、利用者としても分散利用を図りたいですね。
秋田新幹線のおすすめ座席に関しては下記で紹介しています…が、夜は何も見えないのでどこに座ってもいいです(笑)
奥羽本線の解説は下記。新庄までの間は山を越えていきます。夜中の2時…丑三つ時…いや、なんでもないです。
諏訪湖の花火
諏訪湖の花火は、諏訪湖畔で打ち上げられる花火大会です。4万発もの花火が夜空を彩り、湖面に移る花火も美しい。公式サイトによると、四方を山に囲まれているために花火の音がこだましやすいとか。全長2kmにも及ぶ大ナイヤガラ瀑布も見どころのようですよ。
…って、そういう話を聞いているわけではないですよね?
諏訪湖の花火での最大の見どころは、「中央本線での出稼ぎ運行」です。
多くの人から注目を浴びる諏訪湖の花火は、首都圏からも、松本や長野からも行ける場所で開催されますが、帰宅時間の定期普通列車は1時間に1本程度しかなく、これは確実にパンクしますよね。
上諏訪駅の発車は10-20分に1本計画されています。
頑張って長野周辺の車両を集めてもたかが知れていますので、首都圏から「中央線のE233系」や「南武線のE233系」などが駆け付け、上諏訪駅を中心に溢れかえる乗客の輸送を手助けしています。
通常は中央線のE233系は大月まで、南武線のE233系に至っては中央線に乗り入れることすらありませんから、貴重な乗車ができるのです。
また、花火大会終了後に「その日に帰ることを諦めた人」向けに、夜行列車も運行されます。
2023年には、おそらく夜行列車としての運行が初めてであろうE353系での特急「諏訪湖花火大会号」が注目されています。
上諏訪23:59発、新宿05:00着。「あずさ」を名乗りませんので、特急料金は高額(=3,130円)ですが、興味のある方は乗ってみてください。※通常の「あずさ」の特急料金は2,240円
臨時列車が高額になる理由を詳しく知りたい方は下記の記事が参考になります
ちなみに…この列車に乗ると東京近郊区間内で日付を跨ぐことになります。同区間内の乗車券は当日限り有効ですが、日付が変わっても最初の下車までは有効ですので、乗車券の日付は”乗車日で購入”するようにしましょう。
上諏訪駅には足湯がありますので、疲れた時にはぜひどうぞ…とはいえ、花火大会の日は厳しいでしょう。
伊東按針祭花火大会
伊東の花火大会は、約1万発が打ちあがる伊東で一番の花火大会です。公式サイトによると、灯篭流しも行われるようで雰囲気抜群。川を流れる灯籠の灯りと、空高く上がる花火をセットで楽しめるようです。
…って、そういう話を聞いているわけではないですよね?
伊東の花火での最大の見どころは、常磐線特急「E657系」での臨時運行です。
通常、伊東方面の臨時列車であれば「E257系2000番台」という普通の踊り子用列車を走らせます。それでも足りなければ、「E257系5000番台」という波動用の車両を、それですら足りなければ、乗り入れ実績のある「E259系」という成田エクスプレス用の車両を使う…それがスジです。
しかし、それらを一気に飛び越えて「E657系」を充当するという発表には騒然となりました。もう鉄道ファンの想像の斜め上からさらに垂直方向に打ちあがり、”お前らが花火状態”です。
なお、E657系が充当されるのは伊東按針祭花火大会3号/4号のみで、1号/2号は通常のE257系が充当されます。
伊東駅ではホームを間違えないように気を付けてね。
土浦花火大会
茨城県の土浦で開催される土浦花火大会。こちらも全国花火競技大会となっていて、桜川周辺は大変な賑わいとなります。ジョルダンによる花火大会2023ガイドによると、ワイドスターマイン「土浦花火づくし」が複数の場所から同時に打上げられるようで、この迫力はすさまじいものがありそうです。
…って、そういう話を聞いているわけではないですよね?
土浦の花火での最大の見どころは、いわゆる「関鉄バスまつり」といわれるバスの大行列です。
土浦の花火は土浦駅から離れたところで実施されます。そのため、ラストワンマイルはバスの出番となりますが、前述のように土浦の花火大会の観客は大変多いため、呑気に運んでいては間に合いません。
そこで、土浦駅東口から粕毛付近を結ぶ土浦高架道を関鉄バス専用にし、グループ会社を含む全ての営業所から集められる限りの車両を持ってきて、力づくで運んでいます。
ビビ様による、Twitterの情報を引用させていただきます。ちょっとびっくりしますよね。
土浦花火大会輸送開始。 関鉄バス祭りのスタートだ! pic.twitter.com/1datbRoAGm
— ビビ (@jo231531) October 6, 2018
このように言われています。
「土浦の花火もいいが、関鉄バスもいい。」
お気に入りの「花火臨」探してみて
このように、全国各地で変わり種の列車(バス)が走ります。
さぁ復習しましょう。
花火鑑賞客輸送のための臨時列車の運転大会
=花火大会
私がこのように言っている理由が分かりましたでしょうか?
この時期は鉄道ファンがソワソワしだします。
普通の花火客に交じって別の角度からも花火大会を楽しみましょう。
JR東日本
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ではまた。