秋田新幹線は一部の区間【大曲ー秋田間】で逆走します。初めて乗る人はびっくりするかもしれませんが、バグではありませんし、あなたが寝過ごしたわけでもありません。線形上やむを得ず逆走する理由を地図で説明します。秋田新幹線の景色がいい区間をご紹介するとともに、座席指定時の注意点もお伝えします。A席を取るか、D席を取るか、ご参考ください。
【問題】どっちが東京側?
突然ですが問題です。
一般の方は30秒以内に、鉄道ファンの方は1秒以内にお答えください。
秋田駅で出発準備中の秋田新幹線「こまち」の先頭車両の写真です。では、仙台に停車した際に、この車両は、
・東京側ですか?
・新青森側ですか?
さぁどっちだ??
正解は【新青森側】です。
知っている人ほど、頭の中で車両の向きが行ったり来たりしたと思います。
お疲れさまでした。
秋田新幹線は逆走します
東京~秋田間を結ぶ秋田新幹線。1997年に開業し、25周年を迎えた赤色の新幹線はすっかり定着しました。
定着した今だからこそ、秋田新幹線に初めて乗る人にはびっくりする出来事が起きます。それが…
突然の逆走です。
途中の「大曲」という駅で列車の進行方向が変わります。
新幹線と名の付く列車で進行方向が変わるのは秋田新幹線だけ。
開業当初の頃は進行方向が逆になることが車内でも話題になりがちだったのですが、今では誰も触れません。そのため、特に東京から長らく乗ってきた末に逆走し始めた時に「あっ自分やっちまったか?」と思うのも無理はないです。
でも大丈夫。その電車、ちゃんと秋田に行きますよ。
秋田新幹線が逆走する理由
大曲駅で進行方向が変わるのは駅構内の構造が影響しているのですが、何でそうなったのか、なぜ逆走しないように建設しなかったのか、疑問に思いますよね。
秋田新幹線は在来線です
多くの人は、今から25年前に「秋田ー盛岡間に秋田新幹線という新しい路線ができた」と思っています。
でも、この機会に上記イメージをちょっとアップデートしてほしい。
本当は、秋田新幹線って在来線の特急なのです。
秋田ー大曲間は奥羽本線、大曲ー盛岡間は田沢湖線と呼ばれる在来線を走っています。
ただし、「普通の在来線の特急列車」とは違って「新幹線も走れるぜ」っていう、そこら辺のやつらとは一線を画した車両…しかし結局は単なる在来線の特急なのです。
もちろん、奥羽本線の該当区間や田沢湖線の全区間において、新幹線を走れる車両を通すための大規模な工事が行われたのですが、結局は在来線ですので、最高時速も130km/hに抑えられています。
大曲駅の構造
で、逆走が云々という件で登場した大曲駅って何なのという話に移ります。
下にGoogle mapを載せます。
中心にある大曲駅をはさんで北西(秋田方面)から南東(新庄方面)に伸びるのが奥羽本線。奥羽本線から分かれて北東(盛岡方面)に伸びるのが田沢湖線です。
秋田新幹線は、奥羽本線と田沢湖線との線形の関係で大曲駅を中心にV字型の進路を取っています。
大曲駅では、盛岡方面から来た秋田新幹線が行き止まりのホームに到着します。その後、ポイントを切り替えたのちに逆走し、秋田方面に向かうんですね。
決して山奥で急勾配を上れないからスイッチバックしているんだ…というわけではないんです。
ちなみに、大曲駅で進路を変える関係上、必ず停車しなければならない駅として存在しています。速達化を目的に、大曲駅を移転させたり駅の北側に新線を設置する構想もあったようですが、用地取得が難航して断念したそうです。
逆走区間の座席の向き
新幹線で逆走するのは秋田新幹線のみですが、全国には運行区間の途中で逆走する列車は他にも存在します。
地域によってはお客さん同士で声を掛け合って座席を回転させたりしますが…
秋田新幹線の場合、基本的には逆走したまま秋田に向かいますし、秋田始発の場合は出発時点で逆走する向きに座席があっています。
1区間だけなので、わざわざ回転させないんですね。
予約時の注意点
秋田新幹線を予約するときに進行方向どっち側に座るのか?という点を気にされる場合は注意が必要です。
秋田新幹線の場合「どちら側の景色がいい」というのは特段ありませんが、
- 見たい景色がある
- 日の当たらない側がいい
などの理由で席を選びたいこともありますよね。
この場合、A席を選ぶかD席を選ぶかは、下記の図を参考にしてください。
えきねっとは親切設計で、大部分の時間を過ごす大曲ー東京間の進行方向で案内してくれています。逆に言えば、秋田ー大曲間は逆側となりますので、座席方向に特段のこだわりがある方は気を付けてくださいね。
秋田新幹線の景色がいい区間
繰り返しとなりますが、秋田新幹線は盛岡から秋田にかけて在来線を走ります。
その中で特に景色がいいのは「雫石~田沢湖」間となります。
山越えにあたる区間で、新幹線が人里離れた秘境を走ります。夏は新緑・冬は雪景色を楽しめますよ。
東京→秋田で乗車する場合、東京→盛岡では爆睡していただき、
盛岡駅を発車して東北新幹線と別れて在来線に入ったら起きましょう。
進行方向に山が見えてきたらそろそろです。
特に冬だと、途中の交換駅に停車した際には窓枠ぎりぎりに迫る雪壁をご覧いただけます。
車内から撮影した車外の氷のようすです。特に雫石~田沢湖間では雪深くなりますので見物です。
ちなみに夏は緑の世界(←語彙力)を進むことなります。これも気持ちがいい。
田沢湖について、まだお疲れでしたらまた寝てください。起きる頃には逆走していますが、ちゃんと秋田まで行けます。
線路の幅について
新幹線と在来線では線路の幅が異なります。
新幹線は標準軌と呼ばれる幅が広い規格ですが、在来線は狭軌と呼ばれる幅の狭い規格が一般的です。
秋田新幹線は在来線を走りますが、車体は標準軌で作られていますから、このままでは走れないですよね。
そこで、田沢湖線(盛岡ー大曲間)は全区間標準軌に改造されました。田沢湖線を走る普通列車は標準軌の車両が充当されています。
一方、奥羽本線(大曲ー秋田間)を走る普通列車は狭軌のまま。その代わりに在来線の線路を単線とし、その横に新幹線用の標準軌の線路を敷きました。
一部区間では、在来線も新幹線も走れるように3本の線路が敷かれている「三線軌条」と呼ばれる珍しい区間もあり、見どころの一つになっています。
まとめ
秋田新幹線に初めて乗車した時のことを思い返し、以下の知見を得ました。
- 秋田新幹線は大曲ー秋田間で逆走します
- 逆走区間での座席の回転はしないことが多いです
- 座席指定時にこだわりのある人は進行方向と座席番号の関係に注意です
- 見どころは雫石~田沢湖間です
ではまた。