【貨物新幹線の検討】鉄道利用者が覚悟すべきこと。(並行在来線の危機)

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鉄道

今後の鉄道物流のあり方に関する検討会が、貨物新幹線の導入検討を開始するとのこと。我々人間は貨物ではないので一見関係のない話ではあるのですが、一つ注意点があります。貨物新幹線が本当に実現すれば、地域鉄道の未来が大きく変わる可能性があります。特に危機的な状況に陥ると思われるのが函館本線の新函館北斗ー長万部間。現時点では単に私の考えとなりますが、なるべく分かりやすくお伝えします。

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貨物新幹線の検討

日本の鉄道物流

日本全国縦横無尽に張り巡らされた鉄道網。沖縄県を除くすべての都道府県の鉄路が繋がっていて、多くの人の移動をサポートしてくれています。

鉄道が運ぶのは人だけではなく、貨物輸送も担っていて、機関車を先頭に数えきれないほどの貨車を率いる貨物列車もまた、日本全国を走り回っています。

ホテルメッツ水戸から撮影

貨物列車にもダイヤが存在し、一般の人でも見ることができます。見慣れた鉄道の時刻表とは異なり、どちらかというと2拠点間を結ぶ列車の一覧がずらりと並んでいることから航空機の時刻表を連想させるような内容になっています。読み解けなくても、とりあえずいろんなところを多くの貨物列車が走っているんだなぁということが分かってもらえればいいと思います。

そんな中、唐突に出てきたのが「貨物新幹線の検討」に関する話題です。

貨物新幹線の検討開始へ

国土交通省の中に「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」という有識者委員会があるらしいのですが、ここが2022年7月28日に中間とりまとめを発表したとのこと。

えっ…もう中間まで来ているの?

…という感じですが、この検討会は貨物新幹線に限ったものではなく、鉄道貨物輸送全般に関して考えているようです。

特に、カーボンニュートラル(環境対応)やトラックドライバーの人員不足に対する期待の星として鉄道輸送があり、一方でその期待に十分応えられていない貨物輸送の現状があり、この状況下で次手を考える検討会のようです。

貨物新幹線に関してはこれから着手ということなのですが、とはいえ…

「リードタイムや輸送品質の面で、鉄道が他の輸送モードに対して十分な競争力を有するようになるために、新幹線による貨物輸送の拡大に向けて、国・JR貨物・JR旅客会社などによる各種検討に着手する必要がある」

国土交通省PDF資料(こちら)

との決意表明が置かれています。

つまり、貨物新幹線の実現に現実味が帯びてきたということです。

青函トンネル区間とは異なる

現在でも新幹線と貨物列車の共有区間は存在します。それが、北海道新幹線の奥津軽いまべつー木古内間です。

ここでは3本の線路を敷き、車輪の幅が異なる新幹線と貨物列車が青函トンネルを共用しています。

このような形態が他の線区に広がるのか、または完全新幹線規格の貨物列車ができるのか、そのあたりも詰めていくことになると思いますが、おそらく後者だと思います。

新幹線の並行在来線

ここで少し話題がずれますが、新幹線と並行して敷かれている「並行在来線」について触れておく必要があります。正しい説明は難しいのですが、ざっくり説明していきます。

かつては日本全国を”新幹線ではない”在来線の幹線が通っていて、都市間の移動を目的とした長距離特急列車が走り回っていました。その後、各新幹線が開業し、長距離移動の需要は新幹線に移ります。

ここで問題となるのは残される並行在来線の経営。これまでは長距離特急列車が多く走っていたのに、新幹線の開業でその役割を終え、地域輸送中心となりますが、多くのケースでは地域の利用者だけではボリュームが限られるうえに特急料金収入も消えるので極めて厳しい経営状態になります。

国鉄であれば国が経営するので関係なかったわけですが、今では経営がJRに移っています。言い方に語弊があるかもしれませんが、新幹線が開業してしまった後の在来線は「もはやお荷物でしかない」と言わざるを得ず、JR各社も許されるなら手放したい。

実際には背景に整備新幹線に関する法律もあって、この動きを後押しします。新たに新幹線が開業する区間に関しては、並行する在来線はJRとして存続してもいいし、第3セクターとして地元に押し付けてもいいことになっています。

その第一弾となったのは北陸新幹線の並行在来線である信越本線の軽井沢ー篠ノ井間で、しなの鉄道という第3セクターが引き継ぎました。北陸新幹線の延伸を経て、今では3つに分断されています。

ある程度の収入が見込める区間や、地元の協力を受けながらJRとしての経営が継続されるケースもありますが、多くの場合は第3セクター化することになります。

地元が引き受けてでも経営を続ける理由は2つあります。

  • 地元利用客の利便性を確保する
  • 貨物列車の大動脈として維持する

経営状況が厳しいことは確かであり、第3セクター化されるタイミングで普通運賃が大幅値上げされます。

実際に、盛岡ー青森間を在来線(IGRいわて銀河鉄道+青い森鉄道)で移動するくらいなら、新幹線に乗ってしまった方が安いケースも出てきます。それくらい、大幅な値上げです。

少し大げさな体感としては、これまでの運賃+特急料金相当額を支払って普通列車に乗る感覚に近いのです。

それでも、その程度で済んでいるのは「貨物列車が通ってくれるおかげ」なのです。

かつての東北本線だった「いわて銀河鉄道」の経営資料によると、「1日約50本の貨物列車が昼夜を問わず走行している」といいます。日本の物流の大動脈として、鉄路を維持する使命もあるのですが…

貨物新幹線と並行在来線

本項目には私見を含みますのでご了承の上でお進みください。

貨物新幹線が実現し、貨物輸送までもが新幹線に移行したら、並行在来線はどうなるか。

  • 特急列車の収入
  • 寝台列車の収入
  • 普通列車の収入
  • 貨物列車の収入

と、稼ぎ頭がたくさんあったのも過去の話。かつての大動脈だった並行在来線は

  • 特急列車の収入
  • 寝台列車の収入
  • 普通列車の収入
  • 貨物列車の収入

と、普通列車利用による収入だけになります。

ある程度の街中を走っていて、利用者のボリュームを稼げるエリアであれば、運賃をさらに値上げしたり自治体による補助を出すなりして延命することは可能ですが、それすら難しいという地域の場合は絶望的な状況になります。

さすがにもう、持ちません。どんなに補助を受けたとしても、鉄路を維持するのは非常に厳しい状況となります。

函館本線 新函館北斗~長万部間

最も危機的だと思われるのは、函館本線の新函館北斗~長万部間です。

現在は、函館と札幌を結ぶ特急列車が走っているほか、本州と北海道中心部を結ぶ貨物輸送の要となる路線のため、重宝されています。

しかし、2030年に北海道新幹線が札幌まで延伸すると世界が変わります。都市間の特急列車が消えるため、普通列車と貨物列車のみ通過する路線となります。

そのうち、函館~長万部間を走破する普通列車は4本/日しかない状況。逆に言えば、その程度の需要しかないエリアということです。経営が非常に厳しくなることから廃線への話題が見え隠れしていますが、しかしここは貨物列車にとっては大動脈です。この事実が廃線への一歩を踏みとどまらせているのでしたが…

新函館北斗~札幌間の北海道新幹線上で貨物輸送ができるようになったらどうでしょうか。

もはや止める要素は1つもなくなります。

残念ながら廃線一直線。

北海道新幹線が全線開通した後のダイヤを知りませんが、おそらく奥津軽いまべつー札幌間は貨物輸送ができる程度の余裕がある可能性は高く、つまり日本で最も貨物新幹線に近い存在と言えるのではないかと思っています。

資料の中では「リードタイムにおける優位性」を訴え、函館本線の件には触れていませんが、裏には函館本線の廃止に向けた思惑があるように思えてなりません。

ってまぁ、私自身も函館本線を毎日使っているのかと問われれば「No」ですし、こればかりは何を言う権利もありませんが。

まとめと参考資料

まとめ

貨物新幹線の話題に触れ、以下の知見を得ました。

  • 国土交通省内の有識者会議で鉄道貨物輸送に関する検討が行われている
  • 貨物新幹線について本格的な検討が始まる
  • (私見) 実現すれば北海道新幹線が活用される可能性が高い
  • (私見) その場合は函館本線はほぼ確実に廃止となる

参考資料

本文中で紹介したいくつかの参考資料を下に示します。

JR貨物
>> こちら
公式ホームページ内に貨物列車の時刻表カタログがあるので、暇つぶしにどうぞ。

今後の鉄道物流のあり方に関する検討会
>> こちら
検討会から発表される公式資料をご確認いただけます。

ではまた。

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