定期券を払い戻す際の、払戻額計算方法は想像以上に残酷です。たった1日違うだけで最大1か月分の定期券相当額の差が出ます。払い戻しのタイミングはくれぐれも注意しましょう。なお、全く鉄道を利用しないことで払い戻す場合と、異動などで区間が変更になることで払い戻す場合では、計算方法が全く異なります。この記事では、一般的な定期券の払戻額計算方法について解説します。駅で払い戻しをすると、学校や会社に求められた際に必要となる払い戻し計算書が渡されますが、これは「モバイルSuica」でも出せますよ。
定期券の払い戻しについて
定期券は、多くの人々が利用する公共交通機関において欠かせないサービスの一つです。定期券を購入すれば、期間中は定められた区間内を何度でも利用することができますので、通勤や通学に鉄道やバスを利用する人にとっては必携アイテムですよね。
定期券の利用期間は長いもので6か月も有効。当然、6か月をまとめて買うと安いので、交通費支給の企業では6か月定期相当額の補助になっているケースが多いでしょう。
一方、期間途中で利用ができなくなった場合や、利用頻度が予想よりも少なくなった場合などに、定期券の払い戻しが必要になることがあります。
経験がある人も多いと思いますが、12月や3月、9月頃になると…
“サラリーマンの宿命”が背後から忍び寄ります。
4月から異動ね。
え~っ!
ここで多くの人は「住居」や「家族のこと」を思い浮かべるわけですが、鉄オタだと真っ先に…
「定期券、どのタイミングで払い戻そうかなぁ。」
って思うわけです。発想が痛いですが。笑
本記事では、定期券の払い戻しについて、手続きや条件などを詳しく解説していきます。また、利用者が知っておくべきポイントや注意点なども合わせて紹介します。
異動に限らず、転職や引越し、休職せざるを得ない状況になることもあるでしょう。
今は払い戻す気がないという人でも、公共交通機関を利用する上での重要な情報となるため、ぜひ最後まで読んでいただき、今後の利用に役立てていただければ幸いです。
定期券の払い戻し「どのタイプ?」
定期券を払い戻す際には、いくつかの「タイプ」があります。
- 【使用中止】定期券を全く使わなくなるための払い戻し
- 【区間変更】定期券の区間を変更するための払い戻し
- 【特例措置】新駅開業など鉄道会社都合による払い戻し
どちらにしても「払い戻し」なのですが、計算方法が全く異なります。
上から下に行くにつれて優遇されていきます。
具体例を交えながら説明していきます。
【使用中止】定期券を全く使わなくなる場合
計算方法の概要
定期券を全く使わなくなる場合は、1か月単位で計算されます。
具体的には、既に経過してしまった分について
「仮に最も安くなるような定期券の買い方をしていたら、いくらになっていたのか?」
を算出し、既使用金額とします。
払戻額=発売額ー(既使用金額+手数料220円)
を計算し、払い戻します。
具体例(キリのいい場合)
賢く払い戻しをするには、キリのいい日を見極めることが大切です。
4月1日から9月30日まで有効の6か月定期を持っているのであれば…
【4月30日に払い戻しをする場合】は、1か月定期(4月1日から4月30日まで有効)を購入したものとみなし、既使用金額を算出します。
【6月30日に払い戻しをする場合】は、3か月定期(4月1日から6月30日まで有効)を購入したものとみなし、既使用金額を算出します。
【8月31日に払い戻しをする場合】は、3か月定期(4月1日から6月30日まで有効)と1か月定期(7月1日から7月31日まで有効)と1か月定期(8月1日から8月31日まで有効)を購入したものとみなし、既使用金額を算出します。一般に6か月定期は割安に設定されていますので、払い戻し金額はわずかになるでしょう。
具体例(キリの悪い場合)
キリの悪い日に払い戻しをしようとすると、こうなります。
4月1日から9月30日まで有効の6か月定期を持っている人が…
【5月1日に払い戻しをする場合】は、1か月定期(4月1日から4月30日まで有効)と1か月定期(5月1日から5月31日まで有効)を購入したものとみなし、既使用金額を算出します。
2枚目の1か月定期はたった1日しか使っていないにもかかわらず、1か月分が全額でかかりますので、5月1日に払い戻しをするくらいなら5月31日まで持っておいても結果は変わらないのです。
【9月1日に払い戻しをする場合】は、6か月定期(9月30日まで有効)を購入したものとみなすことになりますので、払い戻し金額はありません。
このように、たった1日ズレるだけで明暗を分けるのが定期券の払い戻しです。
タイミングが非常に重要になりますから、心得ておきましょう。
【区間変更】定期券の区間を変更するための払い戻し
計算方法の概要
定期券の区間を変更する場合は、全く使わなくなる場合(前項)と比較して優遇措置が用意されています。
既使用金額は1旬(約10日)単位で計算されます。原則として旬割りで計算します。
具体的には、既に経過してしまった分について
「払い戻す定期券の1旬当たりの金額を計算し、既に経過した旬数を掛け算するといくらになっていたのか?」
を算出し、既使用金額とします。
払戻額=発売額ー(既使用金額+手数料220円)
を計算し、払い戻します。
1旬とは
ここで、“旬”について補足説明します。
4月1日から6か月定期を購入した場合、
1旬:4月1日から4月10日
2旬:4月1日から4月20日
3旬:4月1日から4月30日
・・・
6旬:4月1日から5月31日
7旬:4月1日から6月10日
…と、原則として10日単位で数えていくやり方です。
月末は月によって長かったり短かったりしますが、その分は誤差範囲として多少前後します。31日まである月はオトクですが、閏年ではない2月は損。この辺りは1か月単位で購入する定期券と考え方は同じですね。
1か月定期の場合は全3旬、
3か月定期の場合は全9旬、
6か月定期の場合は全18旬となります。
具体例(キリのいい場合)
区間の変更を伴う場合であれば、過度に神経質になる必要はありませんが、それでも賢く払い戻しをしたいですよね。
4月1日から9月30日まで有効の6か月定期を持っているのであれば…
【4月30日に払い戻しをする場合】は、3旬(6分の1)を使用したものとみなし、既使用金額を算出します。
【6月30日に払い戻しをする場合】は、9旬(2分の1)を使用したものとみなし、既使用金額を算出します。
【8月31日に払い戻しをする場合】は、15旬(6分の5)を使用したものとみなし、既使用金額を算出します。一般に6か月定期は割安に設定されていますが、定期券を細切れに買ったとはみなさずに、旬割で計算するため、「使用中止の場合」と比べれば払い戻し金額が増えることになります。
具体例(キリの悪い場合)
キリの悪い日に払い戻しをしようとすると、こうなります。
4月1日から9月30日まで有効の6か月定期を持っている人が…
【5月1日に払い戻しをする場合】は、4旬(5月10日まで使った)とみなし、既使用金額を算出します。
4旬目はたった1日しか使っていないにもかかわらず、10日分がかかりますので、5月1日に払い戻しをするくらいなら5月10日まで持っておいても結果は変わらないのです。
しかし、「使用中止」の場合とは違うのは、10日単位で計算してくれるということ。5月10日までであれば払戻額は変わりませんが、1か月単位であると勘違いして5月31日まで持っていると払戻額が減ってしまいます。
【9月1日に払い戻しをする場合】は、16旬(9月10日まで使った)とみなすことになります。わずか2旬分ではありますが、「使用中止」の場合とは異なり払い戻し金額が発生します。
【特例措置】新駅開業など鉄道会社都合による払い戻し
新駅や新路線の開業に伴い、通勤・通学経路の変更を希望するケースも出てくるでしょう。
上記の理由によって変更する場合でも、元の定期券は払い戻しとなってしまいますが、
- 元の定期券は日割りで計算する
- 払戻手数料は発生しない
など、さらに優遇された条件で定期券を切り替えできることが多いです。
これは規則では定められていない「特例措置」で、多くの場合で”期限”が設けられています。特例措置の恩恵を受けるためには、定期券の変更手続きを早めに進めることが大切です。
変更方法についてもケースバイケースとなりますので、鉄道会社の窓口やホームページなどで確認することをオススメします。
なお、最近では「東急新横浜線の開業」や「幕張豊砂駅の開業」などに伴う特例措置での変更を受け付けていました。
払戻しも「モバイルSuicaやモバイルPASMO」が便利
定期券の払い戻しは、駅の窓口に出向いて行わなければなりません。
しかし、モバイルSuicaやモバイルPASMOであれば、端末上でお手続きできます。
タイミングが大切ですので、これは助かりますよね。
かくいう私も、”タイミング最終日”に布団の中で手続きしました。
会社勤めの方で「証明書を出さなければならない」ケースも多いと思いますが、モバイルSuicaであれば計算書を出すことができ、多くの会社ではこれで代用できると考えます。
払戻し(使用中止)でも、変更(区間変更)でも、以下のような計算書が出力されます。
この計算書は、モバイルSuicaのマイページから取得することができます。
まとめ
定期券の払い戻しについてまとめてみました。
- 定期券は払い戻しができる
- 全く使わなくなる払い戻しの場合は1か月単位で計算される
- 区間変更目的の払い戻しの場合は1旬単位で計算される
- 新駅開業などに伴う変更時は特例措置が設けられることがある
- モバイルSuicaやモバイルPASMOが便利
ではまた。