2015年8月1日。青春18きっぷで西を目指していた我々を襲ったのは線路内自転車投棄による東海道線の大遅延祭り。当日はももクロのイベントも重なり、日の暮れた東海道は大混乱。多くの列車が運休となる中、東海道を快適に移動できる列車として知られる「ホームライナー浜松3号」は意地になって豊橋を目指して走ります。その理由とは?
ホームライナー浜松3号とは
かつては各方面に、乗車券のみで利用できる、知る人ぞ知る快適な列車が数多く走っていました。その多くは特急用車両が普通列車として運転されるもの。他には指定席券やライナー券のみで利用できる快速列車などもあり、上手に行程に入れると一味違った旅を楽しむことができました。
しかし、ダイヤの平準化が進んだ2021年には、変わり種の列車は激減。
快適に移動したいのであれば特急や新幹線に乗れ!というのが至極当然のトレンドになりました。
しかし、まだ一部には残っています。
今回ご紹介するホームライナー浜松3号は沼津を18時30分頃に発車する浜松行きの列車ですが、使用される車両が373系という特急型車両。しかも、浜松到着後にそのまま豊橋行きの普通列車として運行されるのです。
【おすすめ時刻】
東京1537→1741沼津
沼津1831→2010浜松2012→豊橋2046
豊橋2049→2143名古屋
【最速時刻】※おすすめしません
東京1618→1803熱海1807→1827沼津
沼津1831→2010浜松2012→豊橋2046
豊橋2049→2143名古屋
※沼津駅での乗り換え時間が短く、乗車整理券の争奪戦に巻き込まれます。また、沼津駅から豊橋駅まで直通で便利というのは、言い換えれば豊橋まで缶詰にされるという意味でもあります。以上のことから、沼津駅では長めの休憩を挟むことをおすすめいたします。
わずか330円の課金で東海道線の静岡区間を一気に移動でき、さらに豊橋まで乗り入れることができる数少ない快適列車としてあまりにも有名になりました。
あまりにも有名になりすぎて、近年では車内が鉄オタだらけになっています…笑
私が乗ったときも、通路挟んで反対側の人が373系のコンパートメント席について熱弁していて、聞き入ってしまいました。
そんな感じで情報も溢れていますので、基本情報は程々に、当ブログでは大遅延したときのエピソードを共有します。
自転車が投げ込まれる
2015年8月1日、東海道線焼津付近の線路内に自転車が投げ込まれて列車と接触。この事故で当日のJR東海管内の東海道線は終電までダイヤが大幅に乱れました。
夕方には運転を再開したものの、車両繰り、人員繰り、信号の調整などが予想以上に難航しており、思うように運行できない状況が長時間続きました。
茨城県内の某駅から熱海までの長大なグリーン券で向かっていた我々が異変に気づいたのは熱海駅到着直前のトンネル内。5分くらい閉じ込められていて、熱海駅での発着が混乱しているのが伝わってきましたが、まだ事態の重さをよく理解出来ませんでした。
熱海駅からは島田行きっぽい電車に乗車。丹那トンネルはすんなりと超え、沼津駅に到着したのは18時前。
ライナー券も普通に売っているし、別に行けるよね!?という心持ちで、列車の入線を待ちますが、乗ってきた島田行きっぽい電車が全く先に進む気配がありません。これは…
意地でも豊橋に行きたい373系
沼津駅の駅員さんによると、車両繰りが全くつかず、本数が大幅減になっているとのこと。
しかし、そんな大混乱の中でも「ホームライナー浜松3号は運転します」の一点張り。大丈夫なの?と余計な心配をしながら待ちますが、この電車を運転できる・運転しなければならないのには理由があります。
運転できる理由
ホームライナー浜松3号に使用される車両は、当日の朝に沼津駅に到着後、昼間は車両基地に留置されています。
そのため、昼間の東海道線内で壊滅的なことが起きても、沼津駅に入線すること自体は可能なのです。
運転しなければならない理由
ホームライナー浜松3号に使われる373系車両は、東海道線のホームライナーの他、身延線や飯田線方面への特急列車としても利用される、運用範囲が広域にわたる車両です。
ホームライナー浜松3号として運行されたあとは、そのまま豊橋行きの普通列車として送り込まれたあと、翌日は豊橋を起点に運行します。
つまり、その日のうちに豊橋まで行っておかないと、代車を用意できない限り、翌日の仕事に支障が出てしまうんですね。
豊橋行きを阻む東海道線
東海道線を進む決断
栄に宿を取っていた我々は、どうしても当日中に名古屋に到達したかった。
全く動く気配のない下り方面の東海道線を尻目に、東京行きのE231系普通列車が定刻に出ようとしています。
「…新幹線?」
三島に戻れば、東海道新幹線で移動できる。こうすれば、心配することなく名古屋に到達できる…
散々迷いましたが、ホームライナー浜松3号の特殊な事情にはなんとなく気づいていたので、壊滅的な東海道線に突っ込んでいく決断をしました。
沼津発車
車内では「島田行きの後に発車します」と繰り返し放送されます。
本来であれば速達型のホームライナーを先に出す判断が正しいのですが、それをしない。
ということは、「島田まで普通列車の後をついていく」という予測が付きます。
これは大変な旅になりそうだな。
やっと動き出した島田行きのすぐ後を追いかけるように、ホームライナーは20-30分くらい遅れて発車。
快速に格下げへ
静岡駅に近づく頃、ついにホームライナー浜松3号は、ホームライナー浜松3号であることを放棄します。
「この先は快速列車として運転いたします」
「お手持ちのライナー券は払い戻しいたします」
なぜこんな判断をしたのかというと、単なる快速であればホームに溢れるお客さんをギュウギュウ詰めになるまで満載することができるから。
夜の東海道線を下る数少ない貴重な列車なので、座席定員制で走らせるのは現実的ではないと判断したのでしょう。
普通列車に格下げへ
掛川での長時間停車中、恐ろしい情報がTwitterで流れ始めます。
「ももクロのコンサート後に帰れない大勢のモノノフで愛野駅が大変なことになっている」
さて、次に愛野駅に向かうのはこの電車です。しかし、ホームライナー浜松3号は愛野駅は通過するダイヤになっています。
そこでJR東海は、快速列車の普通列車化を決断。掛川より先の全駅に臨時停車することを決定しました。
後に賛否を呼ぶことになりましたが、プロデューサーの方が愛野駅で人流を仕切ったり、JR東海側に列車運行に関する直談判をしたとかしないとか。
愛野駅に停車した373系普通列車は、デッキ・通路までパンク寸前のお客さんを載せて東海道を下ります。旅情も何もない、殺伐とした空気で…
浜松到着後
さて、この頃になると車内の鉄オタ(自分を含む)の気がかりなことはたった一つ。
この列車は豊橋に行くのか??浜松打ち切りになるんじゃないか??
そうしたら今日中に名古屋にたどり着けるのか??
しかし、杞憂に終わりました。
ホームライナー浜松3号の特殊事情の復習ですね。この子は明日の朝までに豊橋に行かなければならないのです。
浜松発車後はスムーズな運行が実現しましたが、豊橋に到着する頃には22時をとっくに回っていました。
名古屋への接続
豊橋駅では22時16分発の新快速大垣行きが接続を取ってくれました。
静岡県内でのダイヤ乱れは名古屋・大垣方面にも影響していたようですが、なんとかその日のうちに名古屋駅に到着。
名古屋駅の改札口でライナー券の払い戻しを受け、栄までの地下鉄を捕まえることができました。
まとめ
大遅延のホームライナー浜松3号に乗車し、以下の知見を得ましたが、状況により異なる対応となりますのでご参考程度にお願いします。
- ホームライナー浜松3号は東海道線の旅の強い味方
- 使用車両の373系は浜松から豊橋まで行きたい(?)
- 大遅延でも豊橋めざして構わず猛進
- 各駅停車化されることもある
何事もなければとても快適な列車なので、青春18きっぷなどを利用した旅行にご活用ください。