東京から新潟に向かうとき、一部区間で在来線を選択するのも旅の楽しみ方の一つです。みなさまの計画のヒントになればと、水上~越後湯沢の様子をご紹介します。なお、同区間は本数が限られ、混雑する列車もあります。オススメの列車もご紹介しますのでご参考ください。
東京~新潟の移動手段
新幹線が第一候補
東京から新潟まで公共交通機関で移動する場合、第一選択肢となるのは上越新幹線でしょう。
在来線を敷くのにも一苦労だった群馬県ー新潟県の国境越えですが、某大物政治家が新幹線を敷いた時には技術も発達していて、長大な山越えのトンネルを通って楽々到着。
今では何事もなかったかのように群馬県と新潟県を往来していますので、出張や用事等での単なる移動であれば、上越新幹線を使うというのが最適な選択になります。
在来線も走っています
長大な山越えと表現したこの区間にそびえるのは「谷川岳」で、同区間には4本のトンネルが通っています。
- 清水トンネル(在来線上り)
- 新清水トンネル(在来線下り)
- 大清水トンネル(新幹線)
- 関越トンネル(高速道路)
これらのうち、3本は鉄道トンネルで、うち2本は在来線のトンネルなのです。
同区間は新幹線と並行しているため、在来線は役目を終えた…
と思ったら大間違い。
新幹線では貨物輸送ができないため、関東と日本海側を結ぶ物流の大動脈として健在。まだJRとしての経営が続いているので、旅客としても使い勝手の良い貴重な路線です。
在来線で行ってみよう
新幹線ではあっけない山越えも、在来線であれば一味違った光景が広がります。
群馬県の高崎駅と新潟県の長岡駅を結ぶ国境越えのJR上越線。
同路線のうち、みなさんに特におすすめしたいのが「水上~越後湯沢」間の下り線です。鉄道のことを何も知らない人にとっても分かりやすく特殊です。
使用車両
水上駅では、高崎方面からやってきた列車と顔を合わせますが、乗り換えには跨線橋を通らなければなりません。事実上、この橋が関東と新潟の間の関所みたいなものですね。
このホームから発車する上越線長岡行きに乗車。
水上~越後湯沢間の運行に使われるのはE129系という車両です。詳しいことはわからなくてもいいですが、人をたくさん乗せられるロングシートと、グループ旅行で景色を楽しめるボックス型のシートを兼ね備えた面白い造りをしています。
何でこんな構造なのかというと…この車両、新潟駅周辺でも活躍する車両なのですが、新津ー新潟を中心に首都圏顔負けの乗車率を誇る通勤通学路線を抱え、多くの利用者を運ばなければなりません。一方で旅行者も利用する路線としても利用されるため、ボックスシートも残したい…間を取ってこんな構造になったのではないかと思います。
車窓のようす
観光客の多い(というより鉄道ファンの多い)上越線においては、ボックス型のシートは真っ先に埋まってしまいます。しかし、ロングシートはガラガラ…ということで、ロングシート部分の大きい窓を独り占め。
水上を発車すると早速、山岳路線の様相を呈してきます。速度を落としながらトンネルに入ると、
トンネルの中で停車。ここは湯檜曽という駅です。
湯檜曽駅は峠越え区間のうち、水上側の入口駅にあたるところ。上り線は地上ですが、下り線はトンネルの中に入ってしまったため、このような構造になっています。
湯檜曽を発車すると再びトンネルの中。
トンネルを抜けていないのに加速をやめてしまいますが、トンネルの中はず~っと上り坂なので自然と速度が落ちてきます。
そして再び停車。ここは土合という駅です。
ここもトンネルの中で、ここで下車する場合は486段の階段を上ることになります。
土合を発車するとしばらくの間は漆黒の闇の中が続きますが、抜けた先の景色は水上のそれとはまるで異なります。
雪の積もり方も、水上とは別次元です。
列車は土樽駅に停車。ここでは上り線用の線路と合流します。
土樽を発車すると、あとはずっと下り坂です。上り線の線路はループ線へ向かいますが、下り線にはループ線は設けられておらず、大きく迂回をしながら下っていきます。
越後中里、岩原スキー場前に停車。両駅でたくさんのスキーヤーをお迎えし、越後湯沢に到着します。
時間にして約40分間の山越えの旅。写真ではうまく伝えられませんが、トンネルの中での加速や景色の違いなどを、実際に乗って感じてみてください。
越後湯沢から先の区間はそんなに見どころはないので、あとは新幹線に乗車すればいいと思います。
水上~越後湯沢間の基礎知識
何でこんなことになってしまったのか、以下は興味のある人向けに説明しています。
現・上り線の開業
繰り返しになりますが、この区間は谷川岳が立ちはだかる難所となっていて、開業当時は山の前後にループ線(らせん階段の鉄道版)を設置して高度を稼ぎ、トンネルの長さを短くしていました。
どんだけ必死なんだと思うかもしれませんが、それもそのはず。上越線が山を貫く前までは、東京から新潟に向かう列車は長野方面への迂回を余儀なくされていました。必死な開通でしたが、その甲斐があって東京ー新潟間は劇的に近くなりました。
この時に開通したのが「清水トンネル」です。
なお、当時の線路は今も残っていて、上越線の上り方面の列車に使われています。乗車して外をよく見ていると、山の上から湯檜曽駅を望むことができます。
複線開業
関東と日本海側を最短距離で結ぶルートということもあって、上越線はパンク状態に。そこで、谷川岳にもう一本トンネルを掘ることになりました。その頃には技術も発達し、標高の低いところに長いトンネルを作ることができるように。
これが現・下り線として使用されている新線で、貫くのが「新清水トンネル」です。
湯檜曽駅や土合駅がある場所では、下り線はトンネルの中になってしまいました。そこで、階段を使って地上ホームとつなぐことに。特に土合駅では70mに及ぶ高低差が生まれてしまい、486段の階段の設置をすることになりました。
このように技術進歩を伴う時差をもって上り線と下り線が建設されたため、あとから建設された下り線に設置された駅は地下深く潜ってしまい、トンネルの中に設置されることになったんですね。
東京~新潟のオススメ鉄道旅
東京~新潟間の移動について、一般利用者も楽しめそうな鉄道旅ルートをご紹介します。
東京~高崎間
東京~高崎間はJR高崎線で移動できます。
同区間にはグリーン車も設定されていて、土休日であれば800円の追加料金で利用できます。JRE POINTを持っている人であれば600ポイントで交換できるのでお得ですよ。
高崎~水上間
高崎~水上間はJR上越線で移動できます。
同区間は、時間帯によっては新前橋~水上間の折り返し運転となることがあります。その場合は高崎~新前橋間は両毛線(伊勢崎行き・小山行きなど)を利用しましょう。
この区間は、最初は住宅街を通りますが、途中から山岳区間に入ります。特に冬季であれば、後閑や上牧を過ぎたあたりから雪の量が変わってきますので、景色の変化を見るのも面白いです。
水上~越後湯沢間
今回ご紹介した水上~越後湯沢間もJR上越線ですが、同区間は本数が非常に少なく(5本/日)、かつ日中は1本のみなので、かなりの難所です。
利用が見込まれる時期には、水上~越後中里間を延長運転することによる増発も行われ、この場合は7-8本/日になります。
当然、日中の1本(水上13:40発)に利用が集中するので、できれば避けたほうがよく、個人的には水上09:44発か17:50発の列車をオススメしています。17:50発の場合は日が傾き始めますので、できれば09:44発がいいのですが、高崎08:23発に乗車する必要があるので、乗車できる人は限られそうです。
増発が実施される日であれば、水上11:40発か16:42発がオススメです。今回紹介した様子も同列車で撮影したもので、空いているのがお分かりいただけると思います。運転日注意ですので、あらかじめJR東日本の時刻表サイトで必ずご確認の上で出発してください。
なお余談になりますが、水上16:42発から乗り継いでいくと、同日中に秋田県までたどり着くことができます。すごいですよね。
越後湯沢~新潟間
お世辞にも見どころと言える区間はありませんので、新幹線で移動しましょう。
なお、越後湯沢より先の区間では、自由席利用が減ります。最繁忙期でない限り指定席を取る必要はないでしょう。
ある週末の越後湯沢駅の新幹線ホーム。上り方面は大混雑ですが、下り方面は2-3名しかいませんでした。
費用面でのメリット
新幹線の利用区間が短縮されること、新幹線を自由席利用にすることにより【2,400円】のコスト低減が図れます。
東京~新潟間の新幹線特急料金:5,040円
越後湯沢~新潟間の新幹線特急料金(自由席):2,640円
越後湯沢~浦佐間を在来線経由としたうえで、浦佐~長岡間を新幹線に、乗継割引適用で長岡~新津間を特急「しらゆき」利用、新津~新潟間を普通列車利用とすると【3,780円】ものコストを削減できます。これは、新幹線特定特急券を利用できることと、長岡での乗継割引で在来線の特急料金が半額になること、在来線特急を新津で降りること(新津ー新潟間は普通列車が豊富)がトリプルで効いてくるためです。浮いたお金でアパホテル一泊できますね。
東京~新潟間の新幹線特急料金:5,040円
浦佐~新津間の新幹線・特急乗継(自由席):1,260円
まとめ
JR上越線の水上~越後湯沢間に乗車し、以下の知見を得ました。
- 東京~新潟間は在来線でも移動できる
- 水上~越後湯沢間の下り線は分かりやすく特殊な路線
- 本数が少ないので注意
普通の旅行者は新幹線、貧乏旅行者は在来線…なんて言わせない。在来線にも魅力あふれる区間があります。そのような区間を楽しみながら、新幹線を賢く使う。新幹線か在来線か、両極端な旅行ではなく、バランスよく使うことが満足度の高い旅行に繋がるんじゃないかなぁと思います。
土合駅について詳しく知りたい方は下記のページもご参考です。
ではまた。
鉄オタ向けアナウンス
本記事中では、上越線の区間を高崎~長岡としてご紹介しているほか、高崎を発着する小山方面行列車を両毛線と記載しています。いずれも正確ではありませんが、当ブログは一般利用者が分かりやすいように書いていますのでご理解ください。