谷川岳の深くを突き抜ける新清水トンネル内には土合駅の下りホームが設置されています。10年に1回のペースで土合駅を訪問している筆者が、これまでの変化の経緯をご紹介します。2008年には地下ホームに大きな変化がありました。2020年には地上にカフェがオープン。初めて訪れた2001年当時の写真は体感通り!?の暗さを表した写真となってしまいましたが、よろしければご覧ください。
土合駅について
現上り線の開業
高崎と長岡(宮内)を結ぶJR上越線。
上越線の中でも、水上ー越後湯沢間は上越国境と呼ばれ、多くの鉄道ファンから愛されてきました。
そんな上越国境の途中駅に設置されているのが土合駅です。
JR上越線が開通したのは1931年のこと。
首都圏と新潟を結ぶ鉄路としては、既に信越本線がありました。しかし、長野方面へ大きく迂回することを余儀なくされており、両都市間を一直線に短絡しようと作られたのが上越線の始まりです。
壁となるのは谷川岳。直下に長大なトンネルを掘る技術もなかったことから、山の前後にループ線を設けて高度を稼ぎ、トンネルの長さを可能な限り短くして単線開業しました。
土合駅は、トンネルの高崎側の入口に信号場として設置され、トンネルを越える直前の、待避線も構える要の設備として機能していました。
冬季限定でスキー客を扱う臨時駅を経て、1936年には正式な駅として昇格しました。
現下り線の開業
開業してからしばらくの間は単線で捌いていましたが、増加の一途をたどる旅客数や貨物量に供給が間に合わなくなり、上越線を複線化することが決定します。
その頃には技術も進歩し、長大なトンネルを掘ることもできるようになりました。
既に建設された清水トンネルは上り線用とし、一駅手前の湯檜曽駅から土樽駅に至る区間の下り線用として新たに新清水トンネルを建設しました。
ループ線を設けることなく建設できた下り線用のトンネルは、既存の上り線用のトンネルよりも深い場所を貫きました。
通り抜けるだけであればいいのですが、土合駅の上りホームがある場所の下り線はトンネル内。
「土合駅の下りホームはどうする?」という問題が発生します。
土合駅下りホームはトンネル内で開業
長大なトンネルを効率的に作るために、斜坑というトンネル中央部から地上に繋がる斜めの通路を掘ることがあります。
新清水トンネルの斜坑は土合駅付近に作られていたため、斜坑に462段の階段を設置して地上と結び、トンネル内に設置された待避線にホームをくっつけて、そこで客扱いをするチカラワザに出たのです。
下り線の開業は1967年のこと。
それから今に至るまで、トンネルの中の駅は健在です。
土合駅は谷川岳登山口への最寄り駅で、登山客に多く利用されています。登山者にとって462段程度の階段は朝飯前。地上の通路に出た後に追加の24段がありますが、この程度の誤差にぶつくさ文句を言っているような登山者は門前払いと言われています。
土合駅の下りホームのようす
今の下りホームのようす
トンネル内の駅なんて東京に行けばいくらでもありますが、ここのそれは違います。
本当にトンネル内に取り残されたかのような様相を呈しています。
しかしここはれっきとした駅。
待合室が設置されています。ここにはたくさんの張り紙がされています。いいのか悪いのかは判断できませんが、まるで駅ノート化していますね。
ビールの熟成もされているようで、なんだか楽しそうです。
昔の下りホームのようす
今では観光客で賑わっていますが、昔はあまり人もいなかったので、一人で降りたときはちょっと怖かったですね。
2001年に訪れた時の写真がありました。
当時のカメラの性能を差し引いたとしても、ほぼ体感通りの暗さを再現した写真です。トンネルの壁に貼られた蛍光灯の光だけが頼りのホーム。
土樽方面をどんなに眺めても、出口は全く見えません。…というのは今でも同じですが、その閉塞感は倍以上でした。
今でも現存する薄汚れた待合室。当時は土合駅が観光地化しておらず、張り紙は皆無。私はここで水上駅の駅弁を食べましたが、なんとも不気味な空間です。
かつての土合駅は「信号場」としての役割もありました。通過線と待避線が設けられていて、待避線側にホームが設置されていました。写真の運転事務室も機能していたのでしょう。
「出口」の看板が輝いて見えます。
待避線が埋められている
と、ここでお気づきの人もいると思いますが、昔と今ではホームの場所が違います。
昔はトンネル壁面から出ているホーム上で乗降していたのですが、今はさらに中央寄りに仮設のようなホームが取り付けられているのが分かります。
実はこれ、前述の「待避線」が潰されていて、通過線のみとなっています。上越新幹線が開業して旅客列車の本数が激減した今では、待避する必要がないからですね。
これに伴い、通過線上で乗降できるように旧待避線上にホームを増設。増設されたホーム上にもライトが取り付けられているので、非常に明るくなった印象です。
下りホームから出口までの道のり
ホームは明るくなりましたが、階段は健在です。
このページをご覧の方はすでにご存じでしょうが、とりあえずお約束の写真を載せておきます。
下りホームからみた階段はこんな感じ。
あぁ…はぁ。
階段の横に側溝がありますよね。あそこにはエスカレーターを設置する計画があったそうですよ。
高崎で買い物だけして家に帰るつもりが、思い付きで土合駅に連れてこられてしまったかわいそうな人が映り込んでいます。
全部で486段(462段(大階段)+24段(連絡通路))の階段を登り切れば
こんなにきれいな駅舎が出迎えてくれますよ。
ちなみに、土合駅を出て川の方を見ると、山にぶっ刺さっている通路を見ることが出来ます。この先が大階段です。
こちらは冬の様子で
夏はこんな感じ。
ちなみに連絡通路から外を見ると
大自然ですね。
すぐ横にあんな人工物があるなんて想像もできませんね。
土合駅にカフェが開業
かつては「トンネルの中の秘境駅」だった土合駅は、今や「トンネルの中の観光地」と化しています。
これにより、なんと土合駅にカフェがオープンすることになったのです。かつての土合駅を知っている人には信じられない流れですが、「駅茶(エキッサ)mogura」という店名でオープンしています。
ここでは、コーヒー、紅茶などのドリンクの他、小倉(もぐら)トーストやカレーといった軽食もいただけます。
喫茶店はかつての駅事務室を改装して営業しています。きっぷうりばは当時のまま残されていて、帽子をかぶって駅員さん気分になることもできます。
駅員さんごっこも盛り上がります。
土合駅へのアクセス
土合駅への公共アクセスは難易度が高い部類に入ります。
高崎ー水上間は1時間に1本程度の列車が確保されていますが、山越えとなる水上ー長岡間は悲惨。1日5本に激減します。しかも、昼間は1本。これは私が物心ついた頃から変わっていませんね。
狙うなら昼間の1本
昼間の一本に乗ると、2時間近くじっくり土合駅周辺を探索することができます。
水上1340→土合1348
土合1534→水上1546
穴場は夕方の1本
夕方の一本もアリです。比較的短い時間で上り列車に接続します。
水上1750→土合1758
土合1818→水上1830
※土合1818発は最終列車です
バスでのアクセスも可能
バスを使ってもいい、という事であれば、アクセスの難易度は急に下がります。
水上駅から谷川岳ロープウェイ行きの関越交通バスに乗れば15分ほどで到着です。
冬はバス停が埋まりますけど…
階段を上らない方法もあります
ちょっとずるいですが、階段を使わずに地上ホームに出る方法もあります。
この方法では、階段を上らずに、下るだけです。
我々は小さい子ども同伴だったときにこちらのルートを採用しましたが、下りは下りで足がガクガクになります。ぜひ体験してみてください。
越後湯沢1214→土合1240
土合1349→越後湯沢1413
※越後湯沢までは上越新幹線が便利です
まとめ
土合駅のようすを纏めてみました。行きにくい駅ではありますが、上手く計画を立てて訪れてみてください。
- 土合駅には1日5本しかない
- 下りホームはトンネルの中
- 486段の階段を上る必要がある
- ノンバリアフリー
- バスでのアクセスも可能
- 地上ではカフェがオープンしています
バスの情報を貼っておきます
>> 関越交通
上越線(水上→越後湯沢)の前面展望がYouTubeに上がっていたので共有いたします。
>> こちら (YouTube)
ではまた。