101キロ以上のJR線の乗車券が2割引きで買える学生割引。購入するには学生・生徒旅客運賃割引証が必要になりますが、これには有効期限(通常は発行から3か月)が定められています。学生割引証は有効期限日まで乗車券の購入に使用することができます。乗車券の利用開始日は問われませんので、最長で有効期限日の1か月後に利用する乗車券を買うことができます。使用目的に注意。単なる遊びの目的で使うのは、本来はNGです。
学生割引乗車券とは
概要
JR線には学生割引の制度があり、該当する場合は乗車券(運賃)が2割引きになります。
どうせ遠くまで行かないと適用されないんでしょ?なんて思ったあなた。
適用条件は「JR線を片道101キロ以上利用する場合」です。東京起点で考えると、熱海、高崎、宇都宮、水戸、館山などは101キロ以上となります。都市間の大移動を考えていたかもしれませんが、週末のちょっとした遠出(←記事後半に注意点アリ)で簡単に超えてしまう距離感ですよね。
幹線であれば1980円以上の乗車券が該当します。仮に1980円の乗車券を学割で購入すると1580円となります。400円もオトクになります。
運賃2割引は超オトク。学生であれば使い倒したい特権ですし、事実、私が学生の時は使い倒してきました(←繰り返しですが記事後半に注意点アリ)。
学割証が必要
そんなオトクな学生割引ですが、1点厄介なことがあります。それは…
学割の乗車券を買うには「学生・生徒旅客運賃割引証(=以下、学割証)」が必要であるということ。
私は残念ながら学生ではなく、下記は知人からの借り物なので黒塗りが多くなりますが、このような紙がないと買えません。この紙は学校に依頼して発行してもらうことになります。
ある程度大きい大学などであれば自動発行機で出せますが、学校によっては手書き発行で数日かかることもあります。1学生あたりの発行枚数を独自に制限している学校もあります。
入手するのに手間がかかるものですので、大切に使いたい。しかし、大切にしすぎると有効期限が切れてしまいます。計画的に使いましょう。
学割乗車券の買い方と買える場所
学割乗車券の買い方
学割乗車券は、学割を利用したい旨を伝える以外は、通常の乗車券を買う要領で購入できます。
すなわち、
- 出発地と目的地
- 経路
- 使用開始日
を伝えれば発券することができます。
なお、購入の際には「学生証」と「学割証」が両方必要となりますので、用意して挑みましょう。
学割乗車券を買える場所
学割乗車券は、発券にあたって身分証明が必要になりますから、対面で購入するのが基本となります。
みどりの窓口
最も多いケースでは、最寄りの「みどりの窓口」での購入でしょう。
最近では窓口の閉鎖が相次いでいますので、日頃の行動範囲内でみどりの窓口が営業されているか、最新の状況を確認するようにしてください。
話せる券売機
みどりの窓口が閉鎖された代わりに、「話せる券売機」が導入されるケースもあります。
話せる券売機であれば、オペレーターとオンラインで会話することができ、学割乗車券の購入も可能です。
ただし、オペレーターの人数にも限りがありますので、状況によっては長時間待たされることもあります。
学割証の有効期限について
有効期限は発行から3か月
学割証の有効期限は原則として発行から3か月に設定されています。
3か月以内に使わないと無効となりますので、枚数制限などがかかっている場合は有効に使いたいところ。
ここで気になるのは「有効期限」とは何を示すのか、ですよね。
有効期限は購入日基準
有効期限は、購入期限です。
JR線の乗車券は1か月前から購入できますので、使用開始日に有効期限が切れそうな場合であっても、前もって買っておけば大丈夫です。
例えば7月31日まで有効の学割証をお持ちの場合、きっぷを購入するのが7月31日であれば大丈夫です。7月31日の時点では8月31日使用開始となるきっぷまで購入することができますので、実質1か月猶予があることになります。
JRのきっぷは1回に限り変更ができます。学割の乗車券も同じで、変更時には学割証は必要ありません。変更先のきっぷは変更操作日に発売されている他の日程でも大丈夫ですので、極端な例でいえば、7月31日まで有効の学割証で8月31日の乗車券を購入し、8月31日に変更をかければ9月30日の乗車券が手に入る(実質2か月の猶予)ということになります。なお、変更は1回までしかできません。
注意点
使用開始日に有効期限が切れてしまう学割証を持っている人に希望が見えてきたところで、注意点も少しお伝えしておきます。
割引は乗車券のみ
乗車券が2割引になるという学割。
「2割引」というのが独り歩きしてしまうケースも見受けられますが、2割引になるのは乗車券のみです。特急券などは割引対象外ですのでご注意ください。
例えば東京から大阪まで新幹線で行く場合、東京都区内→大阪市内の乗車券は2割引になりますが、東京→新大阪の新幹線特急券は割引にはなりません。
割引は101キロ以上
冒頭でも書きましたが、すべてのきっぷが割引になるわけではなく、片道101キロ以上の乗車券のみ割引となります。
極端な例として、東京→神田の乗車券(140円)は2割引にはなりません。
また、JR線区間が101キロ以上である必要があるほか、他社線との連絡乗車券の場合はJR線区間のみの割引となります。
往復でも片道ずつ買うと2枚必要
学割証で購入できる乗車券の種類は「片道・往復・連続」の3種類です。
東京から大阪まで、東京⇔大阪の往復乗車券を購入する場合は、学割証は1枚でOKです。
ただし、東京→大阪、大阪→東京と、片道乗車券で2回購入する場合は、学割証も2枚必要になります。よって、単純往復であれば往復乗車券として購入するのがいいでしょう。なお、長期滞在となる場合は乗車券の期限に気を付けてください。
往復乗車券と片道乗車券2枚との大きな違い
往復乗車券は同じ区間を同じ経路で往復する場合に購入できます。有効期間は片道乗車券の2倍となりますが、「ゆき」「かえり」で個別に使用開始日を設定することはできません。例えば3日間有効の乗車券において、極端な例として「ゆき」を8月1日から3日間、「かえり」を9月10日から3日間などと設定することはできず、「ゆき」「かえり」とも8月1日から6日間となります。なお、往復乗車券は「ゆき」「かえり」を合わせて1枚とみなしますから、払い戻しの際は1枚分の手数料で済みます。
片道乗車券であれば「ゆき」「かえり」の概念がありませんから、個別に使用開始日を設定することができます。ただし、払い戻しの際は2枚に対して手数料がかかるほか、学割証も2枚必要となるなど、往復乗車券と比べて不利な点もあります。
ちなみに、この世には「連続乗車券」というのもあります。A駅→B駅→C駅→B駅→D駅というような、途中で経路が重なる(黄色部分)&単純往復ではなく、経路は連続しているのに片道乗車券では発券できないケースに連続乗車券が出されます。この場合も学割証は1枚で大丈夫ですが、連続乗車券については話が複雑になりますので、ここでは省略します。そういうものがあるんだな…という程度で生きていけます。
無割引の乗車券から学割への変更は難しい
乗車券の変更は学割であろうとなかろうと、1回限り無手数料で行うことができます。
ただし、どうやら無割引の乗車券から学割の乗車券への変更は取り扱ってくれないようです。事実として私も1回断られています。
なぜ「どうやら変更は難しい」という書き方にとどめ「できない」と言い切れないかというと、自分の中でこのルールに対する理論武装ができていないからです。このルールの背景はよくわかりませんが、取り扱ってくれないケースが大多数ということで、トラブル回避のために共有しています。
…ということで、もし無割引の乗車券を買ってしまった後に学割の乗車券に変更したい場合は、一旦「だめですよね?」と確認したのちに、新規に学割の乗車券を購入しましょう。既に購入済みの無割引の乗車券は払い戻すと220円の手数料がかかってしまいますので、払い戻すくらいであれば生活圏で絶対に使いそうな(220円以下の)近距離のきっぷに変更しておいてもらうといいです。万が一使わなければそのまま捨てましょう。
ちなみに学割の乗車券から無割引の乗車券への変更はできるらしいです。もっともこんなことは変更先の乗車券が101キロに満たない場合など、学割の要件を満たさないときに起きることではあるのですが…
なお、この際に学割証の返還はありませんので心得ておきましょう。
卒業を控えている場合は短くなる
卒業を控えている場合、その学割証の有効期限は3か月ではなく、3月31日までとなるようです。
特に進学のタイミングなどには注意が必要です。
卒業しても、3月31日までの学割証を利用して学割乗車券を発券することは物理的には可能ですが、少なくとも在籍期間を外れて使用することは問題となります。
たとえ卒業後でも、学割乗車券を利用する際には学生であることを証明する書類が必要です。
学生証を回収された後の使用可否判断は、統一した見解が共有されておらず、残念ながら駅により対応が分かれているようですが、卒業後は使用できない前提で計画をたてた方がいいでしょう。
学割乗車券の使用目的は限られる
学生割引の乗車券は、使用目的が限られています。
(1) 休暇、所用による帰省
引用:(独)日本学生支援機構JP(こちら)
(2) 実験実習並びに通信による教育を行う学校の面接授業及び試験などの正課の教育活動
(3) 学校が認めた特別教育活動又は体育・文化に関する正課外の教育活動
(4) 就職又は進学のための受験等
(5) 学校が修学上適当と認めた見学又は行事への参加
(6) 傷病の治療その他修学上支障となる問題の処理
(7) 保護者の旅行への随行
学会のために遠征するとか、修学上必要と認めた行事への参加などでもOKなんですね。
また、実家に帰省する際にも使えるのは心強いですよね。
ちょっとびっくりしたのは「就職のための受験」であれば正式に使ってもいいんだということ。面接に行くときに使っていい、ということですね。面接の際の交通費を支給いただける場合はどうすればいいのか、あらかじめ会社に確認した方が良いかもしれません。
逆に気を付けてほしいのは「単に遊びに行く」というのはNGだということです。週末にちょっとお出かけしよう…なんて使い方は、本来はダメ。
よく話題になるのは舞浜発着の乗車券。
この人が上記乗車券を使うのは保護者に随行する旅行が目的ということで(7)に該当すると判断できますが、学生同士で行くとなると”本来は”グレーゾーン。シンドバッドに乗って道徳の勉強…とか、なんか理由を付けないとダメですね。
…というのは建前であって、実際にはそこまで厳しく制約を受けることは無いようです。ただし、事実として使用目的は限られているんだということだけは頭の片隅に置いておきましょう。
学生の鉄道系YouTuberの中には堂々と学割の乗車券を見せびらかして旅をしているケースも見られますが、その多くは明らかに許された用途の範囲を外れていますので、やらないのが無難です。使用目的の件が頭の片隅にあるだけでも、一線を越えないようにブレーキを自分でかけられますからね。
そのあたりも、社会人になるうえで重要な学びなのかもしれませんね。
ん?あんたに言われたくないだと。うっせえわだと。
はい、そうですね。
まとめ
学割の乗車券に関して、以下の知見を得ました。
- 学生・生徒旅客運賃割引証が必要
- 運賃が2割引きになる
- 特急券は割引にはならない
- 学割証の有効期限は購入期限であり、使用開始日は関係ない
- 学割には使用目的が限られている
学割乗車券の利用目的は限られていますが、合致するのであれば通常の乗車券と同じルールが適用されます。例えば、一筆書きの要領で乗車券の距離を可能な限り長くしてキロ単価を下げる手法を、学割乗車券に使うこともできます。
ではまた。