2021年3月のダイヤ改正では各線で終電の前倒しが行われます。中央線では特に顕著で、寝過ごし名物の中央特快大月行きも前倒しになります。かつて走った山岳夜行421Mを回想しながらダイヤ改正を考えていきます。
かつての夜行列車
むかしむかし、多くの夜行列車が日本中を走り回っていました。
ブルートレインだけではない
多くの世代にとって夜行列車と言われて真っ先に思い浮かぶのはブルートレインかと思います。もう少し若い世代ではカシオペアやトワイライトエクスプレス、さらに若い世代ではサンライズ瀬戸・出雲を思い浮かべるかもしれません。
しかしいずれも寝台が付いている夜行列車ですよね。
寝台列車以外にも多くの夜行列車が走っていたのです。
ムーンライトでもない
少し鉄道に詳しい人であれば、ムーンライトを思い浮かべるかもしれません。
ついこの間の2020年まで、東京ー大垣でムーンライトながらという電車が走っていました。全席指定ではありますが、乗車券と指定席券のみで乗車可能。快速列車なので青春18きっぷを利用できたことから、鉄道ファンを中心におトクな電車として親しまれてきました。
さらに少し前まで、ムーンライトえちごという電車も新宿ー新潟間で走っていて、そのまま羽越本線経由で乗り継ぎ、北海道に渡ることもできました。
でも、もっと前は、「ごく普通の列車が普通の車両で」夜通し走る夜行列車がたくさんあったのです。
…いや、たくさんあったらしいのです。
※私が生まれる前や、かなり小さいときの話なので、見聞きした情報も含みます。スミマセン。
421M列車の活躍
さて、今回終電が繰り上げとなる中央線の話題で登場するのが421Mという列車。
山岳夜行として人気
新宿駅を深夜00時01分に出発し、中央線を夜通し走って、上諏訪駅に到着するのが午前6時前。使用している車両が115系という当時の中央本線を昼間に走っている車両がそのまま使われていたそうです。
当然のように全車自由席で、出発の数時間前から待ち列ができるほどの人気列車だったようです。
列車番号 | 新宿発 | 大月着 | 甲府着 | 上諏訪着 |
---|---|---|---|---|
421M | 0:01 | 1:39 | 3:00 | 5:57 |
明け方のアルプスに行ける列車として、登山家から絶大な人気を博し、いつしか山岳夜行などと呼ばれるようになりました。
通勤列車としても利用
上諏訪へ向かうお客さんを運ぶ列車には、別の仕事もありました。
それが「中央線の最終列車」として通勤客を運ぶ役割。
新宿駅を0時に出る全車自由席の列車ということで、仕事を終えた人々が家路につく際に通勤列車として利用していたようです。
車内は翌日に備えて一杯やりながら眠りにつく乗客と、仕事を終えて一杯やってから家路につくサラリーマンが混在する不思議な光景が広がっていたのでしょう。まぁ、どちらにしても酔っている点は変わりなさそうですが。。
中央特快大月行きが受け継ぐ
そんな夜行列車ブームも徐々に衰退していきます。
前述の421M列車は、区間を甲府に短縮することとなり、夜行列車というよりは甲府行きの最終列車という性格が強くなります。
1993年に421Mは廃止となり、2021年現在では中央本線方面の最終電車は大月行きの中央特快が担うこととなっています。
大月駅に深夜1時10分に到着する同列車は、乗り過ごしたらアウトと言われる魔の最終列車となっていますが、お世辞にも需要が多いとは言えない高尾ー大月間を夜遅くまで走る痕跡として421Mの魂が宿っていたのかもしれません。
あっ、話は少しそれますが…河口湖行きの電車で乗り過ごすともっと大変なことになりますのでご注意ください。
そして2021月改正へ
そして2021年3月の改正を迎えます。
この改正での目玉は、コロナ禍における需要の変化を受けた最終列車の時刻前倒し。中央線のダイヤにもメスが入りました。
東京発 | 新宿発 | 高尾発 | 大月着 | |
---|---|---|---|---|
改正前 | 23:30 | 23:45 | 0:33 | 1:10 |
改正後 | 23:10 | 23:25 | 0:17 | 0:53 |
山岳夜行の遺志を受け継ぐ大月行きの最終列車は約20分早くなり、大月駅着は0:53となります。
おまけ)ムーンライト信州
421M列車を彷彿とさせるような列車が登場。それがムーンライト信州。似たような時刻で夜の中央本線を下るのですが、全席指定席で、かつ特急型の車両が使われている点が異なります。そのため、会社帰りのサラリーマンは使えませんでした。
筆者は421M全盛期を知りませんが、ムーンライト信州なら乗ったことがあります。
松本駅で降りた後、行き場を失って駅前のマクドナルドに行ったのですが、まだ朝マックをやっておらず(=5時前)、朝っぱらからヘビーなハンバーガーを食べた記憶だけが残っています。
夜行列車も風前の灯火となり、どこかの駅に早朝に降り立つことがなくなりました。さみしい気もしますが、これも時代の流れですね。