子どもの習い事などに親同伴で連れて行っていた日々。そんな日常に終止符を打ち、そろそろ一人で行かせてみよう、と判断するタイミングが必ず訪れます。特に「路線バス」の場合は、路線が多岐にわたるうえに遅れることが多いため、難易度が高めです。当ブログでは、実際に我が子を「路線バスに一人で乗せた」ときの経験から、事前準備事項や工夫したポイント、実際に我が子を送り出した様子、本人へのインタビューなどを共有します。最初の一歩を踏み出すとき、親にも子にも勇気が必要ですが、私は躊躇なくみなさんの背中を全力で押しにかかります。世間もお子さまを見守ってくれています。正しく恐れて共に成長しましょう。
はじめに
私は子育ての専門家ではなく、むしろ子育てについてご教授いただく立場の人間なので偉そうには語れませんが、どうやら子育ての世界には”子育て四訓”というものが存在するようです。
子育て四訓
乳児はしっかり肌を離すな
幼児は肌を離せ手を離すな
少年は手を離せ目を離すな ←今ここ
青年は目を離せ心を離すな
大切に育ててきた我が子が”少年”になる頃、学年としては「小学校1年生」に上がるタイミングでしょう。
ここでは、手を放して目を離すなという段階ですが、早くも目を離さなければならない状況に変化していることに気付きます。
共働きやひとり親だと痛感するのが「小1の壁」と呼ばれるもの。これまでは保育園で一日中面倒を見てくれていたのに、小1に上がると、突然「小学校から学童に移動する」というイベントが発生します。
当然、真昼間に親は付き添いきれませんから、子どもだけで行動する時間が生まれます。
「子どもが一人で道路を歩く」
それだけで親としては恐怖ですが…それよりももっと大きな恐怖が訪れます。それが、
「一人で公共交通機関を利用させる」
というとき。
きっと、そう遠くはありませんよ。
この記事では、小学校に上がった我が子を路線バスに乗せたときの状況を共有します。
同じ境遇に進もうと思っている方はぜひお読みください。
特に路線バスの場合は鉄道よりも難易度が高いと言われていますから、注意点を把握して事前準備を進めて挑みましょう。
事前準備
焦っていきなり乗せるのはダメ。まずは必要なものを準備しましょう。
路線バスに乗るときに必要なもの
IC乗車券
もし、乗車予定の路線バスがIC乗車券対応であれば、必ず「小児用のICカード」を準備しましょう。
首都圏であれば、小児用Suicaや小児用PASMOがメインになると思いますが、地域によってはバス会社独自のICカードがありますので、親自身がしっかり確認しましょう。
券売機で30秒で買える大人用のICカードとは異なり、小児用のICカードを購入する場合は本人確認書類を持参しての対面での手続きとなります。
時間に余裕をもって準備を進めましょう。
ICカードだと「お金の勉強にならない」という戯言は他で言ってください。路線バスの乗車には危険が伴いますから、優先順位の低いお金の計算は機械に任せ、目的地に到着することに集中しましょう。
少額の現金
ICカード対応の路線バスだったとしても、何らかの不具合でICカードが使えなくなることがあります。
残高が不足することもあります。
不測の事態が起きた時にも困らないよう、少額の現金(小銭)を持たせましょう。
ICカード乗車券利用の場合は目的地までの運賃×2倍、現金利用が前提の場合は×4倍持っておくと安心です。
バス停名称の暗記・発音練習
子どもに乗車バス停と降車バス停を覚えてもらう必要があります。
特に大切なのは「降りるバス停」です。
必ず言えるように、声に出して発音練習までしてもらいましょう。
何度も何度も、しつこいくらいに「小杉十字路」「小杉十字路」と唱えるのです。
発音することで耳が慣れてきますから、アナウンスを聞き取りやすくなります。
ディスプレイにバス停名称が表示されますが、「漢字」や「英語」がメインで、ひらがなは少なめ。音や景色で認識することに集中したほうがよさそうです。
路線バスに乗る練習
子どもに路線バスの乗り方を習得してもらう必要があります。
地域によって「先払い」や「後払い」などのシステムが異なり、大人でも混乱する難易度の高い作業です。
日頃から公共交通機関で移動する習慣をつけましょう。これにより、バスに乗るという行為に慣れてもらえます。できれば通算100回くらい乗っておくと安心。
そのうえで、子どもに一人で乗ってもらおうと思っている区間を親同伴で2~3回は練習しておくと安心です。
その時に、乗降時でのICカードのタッチや降車ボタンの操作、降りるタイミングなどはすべて子どもに任せること。
前項目で「降りるバス停」の発音練習は済んでいますから、降車ボタンを押すタイミングは親が合図しなくても分かるはずです。
安全面の教育
鉄道と比較して、バスは車内での事故が多発する危険な乗り物です。
走行中は絶対に席を立たないように、席が空いていない場合は手すりにしっかりつかまるように、日頃から強く伝えましょう。
降りるときも焦らずに、バスが完全に止まってから席を立っても間に合うことを伝えましょう。
ご高齢の方が守れておらず問題になることが多い行為ですが、子どもにもしっかり教えましょう。
また、降りてからバスの直前直後を横断する行為も危険ですから、そのようなルート取りをすることのないように計画を立てましょう。
ここまで準備すれば、だいたい大丈夫ですね。たぶん。
工夫したポイント
事前準備をしても、ぬぐい切れない不安。無理はありませんから、その気持ちに寄り添いましょう。
何か悪いことが起きたときはこうしよう、そうならないためにこうしよう、ということを決めておけば少しは安心です。
最初は片道からチャレンジ
行きは本人単独で行ってもらい、帰りは迎えに行くことにしました。
これは、
- とりあえず目的地を一つに絞ること
- 無事に一人でたどり着く体験をしてもらうこと
- 習い事中は帰りの心配をせずに安心して楽しんでもらうこと
などを親なりに考慮した結果です。
乗るバスは[系統番号]で区別
乗るバスが分からなくなったらどうしよう…
鉄道駅とは異なり、バス停には非常に多くの路線が一か所に乗り入れていて、乗るバスを的確に識別しなければ明後日の方向に投げ飛ばされてしまいます。
小学校1年生では、まだ漢字は読めません。簡単な漢字や自分の名前くらいであれば”認識”はできるかもしれませんが、広く”識別”する域には至りません。
そんな子どもでも、数字であれば読めますし、覚えられます。
「43番のバスに乗れば中山駅まで行ける」
「33番のバスに乗れば川崎駅まで行ける」
中山とか川崎が読めなくても、バスに乗ることができます。
この時、必ず親が確認すべきなのは
「同じ番号のバスで違う方向や途中バス停止まりになるダイヤはないか?」
「同じ番号の漢字違いのバス(柿23と青23など)がないか?」
「同じ番号の枝番系統(波01と波01出入など)はないか?」
「同じ番号の特急バスはないか?」
など、数字判断のみで間違える要因はないかという点です。そこはしっかり確認してあげましょう。
初めての一人乗車時は乗り場まで同行
乗り場で「降りるバス停」を連呼
初めて一人でバスに乗るときは、乗り場まで一緒に行ってあげた方が良いでしょう。あくまで子ども主体で乗り込むバスを判断してもらいます。
それでもぬぐい切れない「降りるバス停が分からなくなったらどうしよう…」という不安。
こんなときは、ちょっとわざとらしいかもしれませんが
「どこで降りるの?」→「あざみ野ガーデンズ」
というようなやり取りを2~3回繰り返します。これにより、同じバスに乗る周囲の人へのアピールになります。
「あの子はあざみ野ガーデンズで降りるんだな…」と。
もし万が一、降りるタイミングを逃しそうになっても他の人が教えてくれる可能性に賭けるのです。他力本願ではありますが、「世の中は意外と優しい」というのが、これまでの子育てで得た知見です。
心配であれば運転手さんにお願いする
どうしても心配が尽きない場合、乗車の際に運転手さんに頭を下げてお願いすることは失礼には当たりません。
「うちの子が保木入口で降りますので、もし戸惑っていそうでしたらサポートお願いします。」
これで嫌な顔をするような運転手さんはいないでしょう。
(※ちなみにこちらは実践しませんでした)
乗車時に運転手さんに確認してもらう
乗り場までも同行できないときは、子ども本人から乗車時に「林試の森入口行きますか?」と聞いてもらうようにしましょう。
これにより、
- 万が一間違えたバスであれば飛び降りることができる
- バス停を通過しそうになったら停まってくれる(かもしれない)
と一石二鳥です。
バスは”遅れることがある”と教える
乗車するバスがなかなか来ない場合、子どもは泣きそうになるほどの孤独感を覚えます。
大人であれば「バスの位置情報」ですぐに状況が分かるかもしれませんが、子どもには難しいので、ひたすら待つしかありません。
「バスはなかなか来ないことがある」ことを教えておきましょう。
日頃バスを待っているときに、遅れていることを黙認せず「まぁ12番のバスは遅れるよね」と会話するのも効果的かもしれません。
バスの遅れには傾向があります。遅れやすいバスダイヤと遅れにくいバスダイヤがあります。バスは時刻表の時間前に発車することは禁止されている一方で、路上での時間調整が難しい事情があり、あらかじめ通過予定時刻を(遅れ承知で)早めているケースがあります。このことを上手に見極めて、遅れにくいバスを選んでおくと安心です。(※これは親が”上級者”の場合です)
安心できるバス会社を選ぶ
もし、バス会社の方が読んでいて不愉快な気持ちになったらすみません。でも、利用者側の立場として恐れずに言うと、「安心できるバス会社」と「ちょっと心配なバス会社」があるのも事実です。
降車ボタンを押しているのに停留所を通過し続ける…
時刻表の時間前なのに発車して行ってしまった…
赤信号で発進…
精算時に会釈すら返ってこない…
両替等での乗客の些細なミスに怒鳴り返す…
すべて私自身が同じバス会社さんで目の当たりにしたことです。
そのような言動はごく一部の運転手さんに限られることは百も承知ですが、それでもやはり「慣れない子どもを一人で乗せるのは危険」と言わざるを得ません。
初めての一人乗車で、子ども自身も想像以上に緊張しています。その壁を越え、気持ちよくバスを使う経験を経て、本人の自信につなげることが最も大切な目標です。その達成には、運転手さんのサポートが必要不可欠です。
もし選択肢があるのであれば「安心できるバス会社」に頼りましょう。
不測の事態に向けた注意点
ICカードの残高確認はこまめに実施
バスにはICカードで乗車できますが、そのカードに十分な残高が入っている場合に限ります。
もし、残高不足となると精算が必要になります。
子どもは「運賃」を識別するのは難しいので、親がしっかり管理し、必要であれば早めにチャージの対応をしましょう。
SuicaやPASMOであれば、スマホで残高チェックできるアプリがあります。Suicaの発行元であるJR東日本アプリでも同様の機能が搭載されていますので、大いに活用しましょう。
不具合が起きたときの対応を決めておく
何らかの不具合でICカードが利用できなかった場合は、現金精算を前提とし、お金を運転手さんに渡すようにしましょう。
釣銭対応だったり、両替が必要だったり…さすがに子どもには難しいです。
協力を仰ぐように言い伝えましょう。
万が一の時の窓口を確認
万が一、乗り越してしまったり、迷ってしまった時には、運転手さんに申し出るように伝えましょう。
目的地に到達できていない状況が判明した時は、すぐにバス会社に連絡できるように、営業所の連絡先を把握しておくと安心です。
子ども一人で路線バスに乗せてみた
さぁ、決行の日。
幸か不幸か鉄オタの私に連れられて、路線バスには1歳の頃から何度も乗っています。細かい乗車も含めれば、年間100回は乗っているはず。
だからバスには抵抗なく乗れますが、一人で乗るのはこの日が初めて。
特別な一日の始まりです。
茨城交通バスに乗車
詳細は割愛しますが、乗車したのは茨城県内のある区間。
同区間では、複数のバス会社が走っています。
どちらも信頼できる会社ですが…厄介なのは、会社ごとに使えるICカードが違うこと。さすがに2枚持たせて使い分けさせるのは大人にも難しいので避けました。また、”系統番号”が振られていない会社もありました。そのような事情を考えたうえで…
安全運転で、お客さんに優しい運転手さんが多い、安心できる茨城交通バスにお世話になることに。
茨交さん、あなたに託します…
乗車バス停までは同行
事前準備を済ませ、工夫したポイントに列記した内容を忠実にこなしていきます。
そして、目的のバスが来るのを待ちますが…もう見るからに顔がこわばっている我が子。
さすがに心配になりますが、それでも「一人で行ける」と言い張るので、心強く送り出すことに。
いざ、バスがやってきます。
「タッチ」を忘れて雲行き怪しく
颯爽と乗り込む我が子。着席して準備完了!
…じゃねぇよ。
何か忘れてないか??気づかないなぁ…
外から「タッチ!」と叫びながらジェスチャーする私。
何かを思い出したかのように、ICカードをリーダーにタッチ(←整理券を取る行為に相当します)して一安心。
手を振って送り出しました。
もう、目を離しましたから、あとのことはわかりません。
…大丈夫だったのだろうか。
無事に帰ってきてから、インタビューをしてみました。
本人インタビュー「初めて一人で乗った感想」
緊張して「タッチ」忘れた
とにかく緊張していた様子。
半ばパニックになっていて、乗車時のタッチを忘れてしまったようです。
そして、あろうことか降車時のタッチも忘れてしまったようです。
それじゃあ不正乗車じゃねぇか!
…と思ったら。
運転手さんが声をかけてくれて「いばっピ、タッチして!」と笑いながら手助けしてくれたようです。
さらに、タッチした後に呆然と立ち尽くしてしまったらしく、「もう降りて大丈夫だよ」とまで指示していただいたようです。
我が子よ、不合格だ。笑
他の乗客からの優しいお声がけ
乗車時にソワソワしていたのは他のお客さんも気づいていたようです。
バスが発車するとすぐに、後ろのお客さんから「何歳なの?えらいねぇ」などと声をかけてくれたようです。
その方は途中で降りるときに「がんばってね」と励ましてくれたよう。
子どもを見守ってくれる地域社会に感謝します。
ちなみに「x歳」と答えたようですが、実際にはx+1歳。鯖を読んでどうする!?20年早いわ。
途中で居眠り
私が衝撃を受けたのがこちら。
なんと、乗車中に眠くなってしまい「居眠りをした」とのこと。
寝るとかオヤジか!?40年早いわ。
ウトウトしていたら、途中で夢を見て、夢の中で「着くよ!」と声が聞こえて、目が覚めたら目的地手前だったとのこと。
…おいおい
…想像以上に危ないなぁ。
…ん?
…その声の主は誰だろう。
もしかして、誰か助けてくれたのかな。。
真相は闇の中ですが、子どもを見守ってくれる地域社会に繰り返し感謝します。
バスを降りてからも声掛けは続く
目的地の周辺は住宅街で、地域のお年寄りの方がよく散歩をしています。
散歩中のおじいちゃんが「どこの小学校?」と声をかけてくれたようです。
一方「連れて行ってあげようか?」との提案は毅然と「大丈夫」と断ったよう。
いいぞいいぞ。その調子だ。
※経験上、本件での”おじいちゃん”は不審者ではないと判断できますが、降車地周辺の治安状況を必ず確認するようにしてください。明るい時間帯と暗い時間帯に訪れることをお勧めします。
一人で乗れたことが自慢
残念ながら合格を出せる状態ではない我が子。
それでも、一人でバスに乗って目的地までたどり着けたことは自信に繋がったようす。
次の日に友達に「一人で乗ったよ!」と誇らしげに自慢していました。
よかったよかった。
しばらく様子見は必要ですが、大きな一歩を踏み出すことができました。
まとめ
子どもを初めて一人で路線バスに乗せました。
- 路線バスに乗るときに必要なもの(ICカードなど)を用意する
- バス停の名称を暗記する
- 日頃から路線バスに乗る練習をする
- 安全面の教育をする
- 最初は片道からチャレンジする
- 乗るバスは[系統番号]で区別する
- 初めての時は乗り場まで同行した方が良い
- バスは遅れることがあることを分かってもらう
- 安心できるバス会社を選ぶ
以上を確認したうえで、みなさまの地域ごとの特性を考慮して対策しましょう。
最後になりましたが、もし本人が一人で乗るのを嫌がっているのであればやめた方が吉。
焦らずでOKです。
ではまた。
バスマニアの方へ
この記事の説明項目で登場するバス停名や系統番号は実在する(廃止も含む)ものですので、是非どのあたりのバスなのかを当ててみてください。