空港の搭乗ゲートを抜けて「飛行機に乗れると思ったらバスに乗せられた」という経験はありませんか。これは「沖止め」によって起きることで、不便でガッカリだと言われることが多いです。その感情をぬぐい切るのは難しいですが、せっかくであれば楽しんでほしい。この記事では、せめてものメリットとして、(1)航空機を間近で見ることができる、(2)空港内の設備を間近で見ることができる、(3)特殊なバスに乗ることができる、(4)搭乗直前に外の空気を味わえる、(5)バスラウンジは広々している、などを絞り出しています。バス搭乗!ラッキー!!とは思えなくても「まぁいいか」程度に思えてもらえるようになったらこの記事の目標達成です。一般的な疑問として、搭乗時間はどうなるのか?(→出発時間10分前でOK)、事前改札や優先搭乗はできるのか?(→バスまで実施されています)なども解説します。
沖止めとは
ターミナルの搭乗橋には限りがある
みなさんは飛行機に乗ったことはあるでしょうか?
多くの場合は、ターミナルビルの搭乗口を抜けると橋のような通路を通って飛行機の中に入ると思います。

橋のような通路のことを「搭乗橋(ボーディングブリッジ)」と言い、様々な航空機に対応できるよう、可動式になっています。
便利ですよね。
しかし、羽田空港のような便数が極端に多い空港では、搭乗橋では捌ききれなくなることがあります。
ターミナルから離れたところに航空機を置く
搭乗橋が足りなくなる時や、その他のやむを得ない事情により、航空機の「沖止め」が行われることがあります。
「沖止め」とは、オープンスポットと呼ばれる”ターミナルから離れた駐機場”に航空機を駐機させること。
「ポツンと航空機」とも。
ターミナルから離れた駐機場に航空機が置かれているせいで、当該航空機で運航される便に搭乗する場合はターミナルから直接入ることはできません。

滑走路や誘導路を有する空港施設内は、安全上の理由から通行が制限されていますから、たとえ目と鼻の先に「沖止め」されている場合であっても、ターミナルビルから飛行機まではバスで移動することになります。
これを「バス搭乗」とか「バスでのご案内」などというのです。
一部の空港では、徒歩での搭乗も実施されています。
このように、飛行機へのバス搭乗は、空港の手狭さや利便性のために採用される方法であり、利用者側にとっても導線が変わりますから、利点や欠点があることを知っておくことが重要です。
この記事では、バス搭乗に着目して解説を進めていきますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。
「バス搭乗」の搭乗方法
まずは「沖止め」時のバス搭乗の流れを確認しておきましょう。
保安検査通過前に「搭乗口」を確認する
羽田空港の場合、JAL/ANAともに出発時刻の20分前までに保安検査場を通過してください。これはバス搭乗の場合でも同様です。
飛行機に乗るときに必ず行っているのが「搭乗口の確認」ですよね。
一部ではスマホでの確認が前提の撤去が進んでいるようですが、通常は保安検査場前に大きく掲げられています。
羽田空港の場合、バス搭乗の場合は備考欄に「バスでのご案内」などと表示されます。
バス搭乗でも「バス停に行くな!」
外のバス停は違います
慣れている人には笑われてしまいますが…念のために初めての人に気を付けてほしいことがあります。
「バス搭乗」だからと、外のバス停に行かないで。
外のバス停は、空港から離れる外部の路線バスが発着するところであり、飛行機に向かうバスではありません。
例え沖止めであっても、通常と同じように、保安検査場を通過して制限エリア内に入ってからバスに乗ります。
バス停に「搭乗ゲート番号」が振られます
沖止めでバスに乗る場合でも、通過するのは搭乗口であり、固有の番号が振り当てられます。
搭乗ゲートの番号が
JALの場合:30~40、84~91
ANAの場合:500~513
である場合は沖止めになります。
保安検査場を通過した後に上記番号を目指して進むと、必然的に「バスラウンジ」に到着しますので、この番号は必ずしも覚える必要はありません。
ただ、前日にアプリやWebページで搭乗口を確認した際に上記番号が振り当てられていた場合は、バス搭乗であるという覚悟ができますので、頻繁に利用される場合は覚えておくと便利です。
バスラウンジからバスに”搭乗”
羽田空港の場合、JAL/ANAともに出発時刻の10分前までに搭乗口を通過してください。バス搭乗の場合は、バスへの搭乗締切時刻が出発時刻の10分前となります。飛行機への立ち入りは10分前よりも遅れることになりますが、その点は問題ありません。
勘違いしないでほしいのは、バスラウンジというのはバス搭乗の人向けに用意されている待合スペースであるということ。ドリンクやお菓子、噂のカレーをいただける豪華爛漫なラウンジとは異なります。入っても何も出てきませんが、誰でも入れる空間です(というか、入らないと飛行機に乗れません)。

バスラウンジは、ターミナルのロビーから1つ下の階に行った、平面エリアに広がっています。

搭乗口からバスに乗って飛行機へ
バスラウンジでは係員の指示に従い、搭乗口を通ってバスに乗ります。
この時に航空券の確認があります。
バスは当該便専用として運行されますので、降りる場所を間違えたら飛行機を間違えた!などということはありえません。

飛行機には階段で上がる
バスは飛行機に横付けされます。
バスを降りて飛行機に乗るとき、タラップを上がります。ここは階段です。
頑張って登り切れば、あとは通常の場合と同じ流れで出発です。
なお、お体が不自由な方や車いすを利用されている方には、搭乗口から機内まで平面移動できる設備が用意されています。他のお客さんとは別の導線で準備が必要ですので、事前に申し出たうえで、無理のない範囲で時間に余裕をもって搭乗口に向かいましょう。

「バス搭乗」のメリット5選
バス搭乗、面倒くさいなぁ。と思っている方、正解です。
でもそんなにガッカリしないで。
沖止めのメリットとして私が感じたことに、ChatGPTがはじき出した答えも加えて、以下で列挙していきます。
航空機を間近で見ることができる
沖止めの場合は、飛行機のすぐ横までバスで行き、最後は徒歩で乗り込むことになります。
そのため、航空機を間近で見れるというメリットがあります。
特にマニアの間で人気なのが翼の長さやエンジンの迫力を感じることができるという点でしょう。
また、巨大な機体を支えるタイヤも見逃せません。
しかも、外での撮影が制限されているわけでもありませんから、短時間であれば記念に写真を撮ることも可能です。
ターミナルでは味わうことのできないひと時を、ぜひ楽しんでみてください。
空港内の設備を間近で見ることができる
バス搭乗の際、バスラウンジを離れてから飛行機までの間は空港の敷地内を走ることになります。
ターミナルからは見ることの出来ない、空港内の設備を垣間見ることができますから、バスの中から外を眺めてみるといいでしょう。
広~い空港内ですが、車両が走ることが許されている区画は限られています。一見何もなさそうなところで一時停止することもあります。
合理化が進んでいる昨今、無駄なものはないはずです。
あの車は何をしているんだろう、何でここで停まっているんだろう…
答えが分からなくても、想像を膨らませながら乗ると楽しめますよ。

特殊なバスに乗ることができる
沖止めで案内されるバスは、空港内専用であることをご存じでしょうか。
可能な限り多くの人を一気に運ぶことができるように、大きな車両が用意されています。
公道を走るわけではありませんから、”空港内独自の規格”で設計することが可能。
よく見ると「一般的なナンバープレート」が設置されていないことも分かると思います。

搭乗直前に外の空気を味わえる
ボーディングブリッジを通って搭乗するといつのまにか機内に入ってしまいますが、沖止めの場合は外に出ることになります。
これから長い時間、機内に閉じこもることになりますので、外の空気を味わえる貴重な時間です。
滅多に入ることの出来ない空港の制限エリア内において、開放的な気分になれるのも沖止めならではでしょう。

バスラウンジは広々している
バスの待合室であるバスラウンジ。
ここには広々とした空間が備えられていて、座席も比較的自由に選ぶことができるでしょう。
バスラウンジ内には、小型ではあるものの売店もあります。
スマホの充電ができるスペースも順次進められています。
早く行き過ぎると暇になってしまいますが、搭乗前の10分程度を過ごすには十分に快適でしょう。

「バス搭乗」の注意点
保安検査場通過・搭乗口へは通常通りでOK
沖止めの場合、バスで移動した後に航空機に乗ることから、「通常よりも時間がかかるんじゃないか」「早く行かなければならないのでは?」と心配になりますよね。
でも、あくまで「バスに搭乗する時間=搭乗時間」と考えてもらって問題ありません。
利用者側が「早く行かないと飛行機に乗れない」などと過度に心配する必要はありませんが、バスでの案内なので「搭乗口へお早めにお進みください」という案内は行われています。

事前改札・優先搭乗はバスまで
お手伝いが必要な方(事前改札)や、ステイタスをお持ちの方(優先搭乗)に対して早めに飛行機に乗ることができるシステムが用意されています。
このシステムは、沖止めの場合でも適用され、事前改札や優先搭乗は通常通り行われます。ただし、これはバスへの搭乗をもって終了となります。
バス内へは事前改札や優先搭乗をした人が最初に立ち入ることになりますので、バス車内で着席することはできるかもしれません。しかし、バスは立ち客が出るほど混雑した状況になるまで人を乗せますので、降りる順番は逆転し、最初にバスに乗り込んだ人が最後に飛行機に搭乗することもあります。
必ずしも「飛行機に一番乗り」できるわけではないことを肝に銘じておきましょう。
バス車内で待たされることがある
バスの車内で長時間待たされることがあります。
これは、なるべくバスの乗車人数を増やすことで、運行回数を削減する目的があります。真っ先にバスに乗り込んだとしても、結局バスで待たされては手持無沙汰に。
また、搭乗締め切りギリギリにバスに乗り込んだ場合、まだ搭乗口に来ていない乗客を待つこともあります。これに巻き込まれると、飛行機に乗り込んでから出発までの間にほとんど時間がなく、準備が慌ただしくなりますので注意しましょう。少なくとも飛行機の前で写真…というのは遠慮しなければならない雰囲気になります。
雨でも容赦がない
「今日は雨だから沖止めは避けてあげよう」
…なんて思うわけがありません。雨でも容赦なく、バス搭乗しなければなりません。
この場合、バスを降りてから飛行機に乗るまでの間、わずかな時間ではありますが、雨に晒されます。
「ボーディングブリッジ付きの沖止め」がある
最近では、「雨でも濡れない沖止め」の整備も進んでいます。
バスで移動した先に2階建ての小屋があり、ここから飛行機に搭乗するというスタイルです。
ターミナルから離れた場所に不自然に存在するため、この設備のことを「ポツンと搭乗口」と呼んだ記事も存在します。
ここであれば、一切雨に濡れることなく飛行機に乗ることができます。しかも、小屋の中にはエスカレーターやエレベーターが設置されていて、空調管理もなされているという優れもの。
一方、あくまで待合室ではなく”通路”であるため、テーブルやいす、トイレなどの設備は省略されています。
一見ラッキーなように感じますが、この設備を利用する場合、せっかくの沖止めなのに飛行機を間近で楽しむことができないため、ちょっと残念かもしれません。
まとめ
「沖止め」された飛行機にバス搭乗し、以下の知見を得ました。
- ターミナルから離れたオープンスポットに飛行機を駐機することを「沖止め」という
- 不足する搭乗ゲートを補うために「沖止め」された飛行機にバスで搭乗することがある
- 「沖止め」された飛行機に乗るとき、機体や空港設備を間近で楽しめる
- 「沖止め」された飛行機に乗る場合でも、締め切り時刻は案内通りでOK
- 最近では「雨に濡れない沖止め」も増えている
ではまた。