東京と大阪を結ぶ昼行高速バス「グラン昼特急」に乗車し、分かったことを共有します。所要時間は約9時間で、通常であれば夜行で行くような距離を昼に駆け抜けるグラン昼特急。時間の無駄かと思いきや、昼に行くからこそ楽しめる要素が詰まっています。途中休憩は3回(足柄・新城・甲南)あり、それぞれ異なる顔を見せます。夜行便の間合いとして走るので、座席は寝るのに最適な構造ですが、背もたれを倒すのには気が引けます。事前座席指定が可能ですが、割引運賃だと選べる席に制約があります。時間は全く読めませんので、到着後の計画には余裕を持ちましょう。
グラン昼特急の基本
東京と大阪を結ぶ公共交通機関は数多くあり、その中の一つが「グラン昼特急」です。
グラン昼特急は、東京と大阪の間を約9時間かけて結ぶ昼行の高速バスです。
ありとあらゆる高速道路を経由して西に向かいます。
うわぁ…
「普通は夜行バスで移動するんじゃないの?」
「貴重な時間をバスの中でずっと過ごすの?」
「時間をドブに捨てるような交通手段だな」
そういう感覚が芽生えるのも無理はありません。
まぁそうですよね。
事実、東京ー大阪間のバス移動は夜行便が当たり前。
快適に眠ることができるようにシートを設計した「グランドリーム号」が毎晩運用に就いています。
そんな状況で、わざわざ昼に丸一日かけて東京ー大阪を走るグラン昼特急。
そもそもなんでこんなバケモノ路線が誕生したかというと…
- 夜行バスの車両を昼間に眠らせておくのはもったいない
- 試しに日中にも走らせてみよう
…との考えから東海道を昼に走る高速バス「東海道昼特急」が生まれ、車両の変更を経て「グラン昼特急」になったと言われています。
昼走るのに「Dream」と書かれているのは、夜行便の間合い運用のためなのでしょう。
もはや昼寝ですね。
私も「昼間に9時間もかかるバスなんて誰も乗らないよね」と思いながら乗り場に向かいましたが…
多くのバスが発着する東京駅八重洲南口バスターミナルの中で、唯一となる「満席」表示が誇らしげ。
見事に大盛況のようです。
今では「青春昼特急」(座席は狭いけど安い)と合わせて5~6往復(一部京都発着)も設定されています。
そんなグラン昼特急に全区間乗車してきましたので、これから乗ろうと思っているみなさんに向けて情報共有したいと思います。
グラン昼特急で持ち込んだ方がいいもの
唐突ですが、旅を快適にするために大切なこととして「持って行った方がいいもの」を最初に共有します。
なぜ持って行った方がいいのかは、この後の項目で徐々に理解していただけると思います。
まずは無条件に聞いてください。
- 貴重品・スマホなどの必需品
- USBケーブル
- モバイルバッテリー
- 飲み物(2時間分)
- 小さいごみ袋
- フェイスタオル
- アイマスク(寝るつもりの人)
逆に、車内では絶対に使わないもの(着替えなど)はトランクに預けられるよう、あらかじめ仕分けをしておいてください。
“グラン”の3列シートとはいえ、車内は意外と狭いですよ。
グラン昼特急の車両について
2階建てバスでの運行です
グラン昼特急は、原則として2階建てバスでの運行が基本となります。
スカニア製のダブルデッカー車というそうです。
運転席は1階にあり、2階部分はすべて客席になっています。
2階席の最前列(1A,1B,1C)に座れば、高い位置からの前面展望を楽しめるため、大人気です。
きれいでしょ!これはいいですよね!!
でもね、あんまり期待しないでください。
もし日頃の行いが悪く、雨が降ると…
…まぁ残念ですよ。笑
ワイパーはついておりませんので、雨が止むのを待ちましょう。
一方、2階席中央付近のシート(7C,8C)を取ると、隣列が階段となります。左右どちらの景色も楽しめる、隠れたおすすめ座席です。こちらであれば、窓が側面ですから小雨であれば関係ありませんね。
臨時便など、1階建ての車両で運行される便もあります。
座席は「クレイドルシート」です
座席を倒すとゆりかご状になって熟睡できる「クレイドルシート」が採用されています。
充電は「USB限定」です
座席には充電設備がついていますが、USB専用になっています。
プラグ一体型の充電器は使えないので気を付けてください。
また、出力が弱いことがありますので、モバイルバッテリーを持ち込んでおくと安心です。
テーブルなし、ドリンクホルダーあり
座席にはテーブルがありません。
「長時間の乗車だから仕事でもしようかな」
と思っていると失敗するので気を付けましょう。
ドリンクホルダーはありますので、出発地や休憩場所で飲み物を購入して持ち込むのはOKでしょう。
最前列でも足は伸ばせます
前の座席下の空間がない最前列席は足元が狭くなることが多いですが、グラン昼特急の車両の場合は、最前列に座っても足元の空間が確保できます。
よほど長い脚の持ち主でない限りは窮屈に感じることはないでしょう。
ただし、持ち込んでいる荷物が多いと足元がふさがれますので、この限りではありません。できるだけ荷物はコンパクトにまとめましょう。
座席は事前指定ができます
2階建てバスは、2階部分と1階部分で座席の構造が違います。
2階部分が3列シート。1階部分が4列シートで、それぞれ値段が異なるようです。
同じ便・シートでも「普通運賃」と「得割運賃」が設定されていて、得割運賃の場合は指定できる座席に限りがあるようです。例えば、前面展望が楽しめる最前列座席や、後ろを気にせず座席を倒せる後方座席などは、普通運賃でなければ座席指定ができないことが多いようです。
なお、各座席にカーテンが設置されており、昼便でも使用することができるようです。実際にカーテンを使ってプライベートな空間を確保している人が多い印象でした。
言い切らずに「~ようです」を連発しているのは、状況によって変わる可能性があるからであり、その点まで加味したお約束はできないからです。ご予約時に分かるようになっていますので、ご確認の上でお申し込みください。
グラン昼特急の運行について
途中の停留所があります
東京駅と大阪駅を結ぶグラン昼特急には、途中の停留所があります。
下り方面の場合、
東京駅の他、バスタ新宿、東名向ヶ丘、東名江田、東名大和、東名綾瀬、東名御殿場、もっくる新城で乗車ができます。
また、大阪駅の他、京都深草、もっくる新城で降車ができます。
上り便では、池尻大橋にも停車します。
東名向ヶ丘~東名綾瀬間と京都深草は、高速道路上の路肩に置かれたバス停です。
休憩は3回あります
起点から終点まで約9時間かかるグラン特急には、途中で3回の休憩があります。
具体的には、足柄SA、もっくる新城、甲南PAの3箇所です。
後ほど詳しくレポートしますので、この段階では3回の休憩があるということだけインプットをお願いします。
運転士は1名(途中交代で計2名)
グラン昼特急に乗務する運転士は1名でワンマン運行となります。
ただし、途中の「もっくる新城」で運転士交代となり、全線では計2名が担当することになります。
東京駅ーもっくる新城間はJRバス関東の乗務員さんが、もっくる新城ー大阪駅間は西日本JRバスの乗務員さんが担当します。
ちなみに、かつての交代場所は三ケ日だったそうですが、現在は少し北側のもっくる新城に移転。
…って言われても自分には関係ないと思うかもしれませんが、この変化によってグラン昼特急が新東名高速道路を走行できるようになったのです。乗客にとってもメリットの大きい変化だったんですね。
グラン昼特急の休憩場所をご紹介
休憩は全部で3回あり、概ね2時間に1回のペースです。いずれも約20分間となっております。
グラン昼特急はツアーバスではありません。乗合路線バスです。
休憩後出発時の人数確認は行われませんので、お約束の時間に遅れたら置いて行かれます。
休憩に出る前に必ず出発時刻を確認してください。
足柄SA
最も東京寄りにある休憩場所が、東名高速道路「足柄SA」です。
このサービスエリアにはファミリーマートが入店していますので昼食の調達をしておきましょう。セルフレジもありますので、抵抗がない方はキャッシュレス決済でスムーズに買い物しましょう。
フードコートもありますが、休憩時間が短いのでやめておいた方が無難でしょう。
3回の休憩の中で、唯一スターバックスが入店している施設です。混み合いますので、ドリップコーヒーにしておくか、モバイルオーダーを活用した時間短縮に努めましょう。
足柄SAでの休憩は時間が足りなくなりがちです。ちょっと生き急ぐくらいがちょうどいいです。
道の駅もっくる新城
もっくる新城は、新東名高速道路「新城IC」に隣接した道の駅です。
ETC2.0を利用している自動車であれば、新城ICで一旦降りても、通行料金は通しで計算される「乗り直し」対象ICです。
この休憩所の最大の特徴は「足湯がある」という点。
むくんでますよね?そうですよね?ならば入りましょう。
この時に必要になるのが「タオル」なんです。
ぜひ持ち込みましょう。
ちなみに、もっくる新城では屋台スペースがあって、軽食を取りやすくなっています。
小腹を満たして快適なバス旅を続けてまいりましょう。
甲南PA
最も大阪寄りの休憩場所が、新名神高速道路の「甲南PA」です。
忍者のまちとして有名な滋賀県甲賀市にあります。
このパーキングエリアにはフードコートがあります。空いているようですので、食べるのが早い人であれば休憩時間中に楽しめるかもしれません。
ただ…他はあまりありませんので、最も時間を持て余す休憩場所となるかもしれません。
グラン昼特急の利用方法
予約方法
グラン昼特急は、高速バスネットから予約が可能です。
運賃は特に定められておらず、日によって変動しますので、高速バスネットから検索して確認するのが基本となります。
あくまで目安ですが、グランドリーム(夜行便)と比較して2割ほど安い水準で設定されているようです。
「普通運賃」では、すべての空席から座席を選ぶことができます。
「得割運賃」では、指定できる座席に限りがあります。
この点だけ注意して進めましょう。
利用方法
予約・購入が完了したら、あとは乗り場に行くだけです。
乗り場では、オンライン乗車券のQRコードを乗務員さんに見せれば手続き完了です。
もし通信障害などが心配であれば、紙の乗車券を印刷することも可能です。
私は印刷して持参しました。
グラン昼特急の注意点
一部重複となりますが、注意点をまとめておきましょう。
座席は広くはありません
3列シートで「クレイドルシート」なんて名称を聞けば「広い」と思われる方も多いと思いますが…
実はそんなに広くありません。
2階建てのデメリットでもありますが、天井が低く網棚もほぼ機能しません。
持ち込んだ荷物は足元に置くことになります。
その分だけ空間が制限されることになりますから、不要な荷物はトランクに預けられるよう、あらかじめ荷物の整理をしておくことをオススメします。
車内は暗くなりません
グラン昼特急は夜行便ではありませんので、車内は常に明るいです。
窓側の各カーテンも開け放たれています。
もし”昼寝”をしながら移動したいのであれば、アイマスクなどのご用意を。
電源まわりの準備を
ほぼ1日かけて移動するわけですから、座席で時間を持て余さないよう準備をしましょう。
特にスマホの充電に関しては気を付けてください。
一般的なコンセントではなく、USBコンセントとなりますので、これに対応したケーブルが必要です。
出力が限られることがありますので、モバイルバッテリーも持っておくと安心です。
Wi-Fiはあてにしない
高速バスにW-Fiが設置されておりますので、活用しましょう。
ただし、通信速度が遅かったり、満足に接続できないこともよくあります。
モバイル通信量を消費する覚悟で乗り込みましょう。
なお、一部山間部ではモバイル通信が途切れることがあります。
周りの環境は選べない
これは何に対しても言える「ガチャ」ってやつです。
隣人は選べない…
ということで、どんな環境であっても自分は自分。どんな人に囲まれたとしても、快適に過ごせるような工夫を自分なりに考えておきましょう。
また、あなた自身が他の乗客のご迷惑とならないよう、見つめ直すことも必要です。
…あなたって?私のことです。
まとめ
グラン昼特急に乗車し、以下のメリットを見出しました。
- 東京ー大阪間を昼に9時間もかけて乗車できる
- 昼行きの高速バスなので、景色を楽しめる
- 昼行きの高速バスなので、休憩場所の店舗も営業中
- 終始カーテンを開け放つことができる
- 最前列なら前面展望を楽しめる
- 夜行バスよりも少し安い
旅行好きには1回は乗ってもらいたいグラン昼特急。
その魅力を少しでもお伝えできていたら幸いです。
高速バスネット(予約・運賃検索)
>> こちら
多くのお客さんが利用されている中で、シートの写真を撮るのは遠慮しました。当サイトでご紹介しきれずにご不便をおかけしました。クレイドルシートの詳細はJR東海バスの公式サイトが一番わかりやすいので、最後にご紹介します。
>> こちら
ではまた。