2021年2月13日の地震で被害を受けた東北新幹線。2020年に復活した常磐線経由の特急「ひたち」が代役を担い、首都圏と仙台圏を鉄路で繋ぎました。このときの教訓が、その後の東北新幹線運行障害時に活かされています。
東北新幹線が機能停止に
東日本大震災からまもなく10年というタイミング。
2021年2月13日夜に発生した震度6強の地震。コロナばかりに気を取られている我々を警告するかのような、不気味な揺れにハッとさせられました。
特に広範囲で被害を受けたのが東北新幹線。那須塩原から盛岡の間(のちに一ノ関ー盛岡間が再開)が長期間にわたって運行できない状態が続きました。
首都圏と仙台圏は新幹線のシェアが大きく、多くの人が移動できなくなる事態。
季節は入試シーズン。予定していたルートで試験会場に向かえなくなる受験生も多かったと思われます。
常磐線特急「ひたち」
かつてのスーパーひたち
時はさかのぼって2010年頃。
かつて常磐線(上野~仙台間)を駆けていた特急「スーパーひたち」は、7両の基本編成と4両の付属編成を連結して11両で運転するのが基本形でした。しかし、いわきで基本編成を切り離し、いわき以北は4両のみで運転されることが多かったと記憶しています。
JR東日本は、常磐線に新型特急を導入するのを契機に、運行系統をいわきで切り離すことを発表。上野~いわき間専用の特急型車両(E657系)を10両固定で導入すると同時に、いわき以北は短編成の別車両を用意することとなりました。
そして、いわき以北の新特急名称を募集している最中、東日本大震災で常磐線が寸断され、運行不能に。
それから9年もの間、鉄路がつながることはありませんでした。
夢にも思わなかった2020.3.14改正
ついに常磐線が再開する日が来ましたが、常磐線沿線住民を驚かせたのは新しい特急ダイヤ。
上野から仙台まで、まっすぐ伸びる、3本のスジ。
目を疑いました。
採算度外視で10両固定のE657系を仙台に送り込んでくれるそのダイヤに、震災に対するJRの本気度を見せつけられました。
運転再開初日、子どもと共に乗った「ひたち3号」。
絶対に乗ってみせると、意地で手に入れた特急券です。ちゃっかりトクだ値50(笑)。
東北新幹線不通時の在来線
東北本線でのバイパスは難しい
東北新幹線と並行する在来線として東北本線が運転されていますが、特急型車両で直通することが出来ないため、代役を担うのは難しい状況です。
実際、東北新幹線の代替として185系という特急型車両が臨時で運転されたことがありますが、電源の関係で那須塩原までの運転になったとのこと。
首都圏と仙台圏を在来線で直通するのは簡単なことではないのです。
特急「ひたち」がバイパスの役割を果たす
そんな中、2021年の地震で被害を受けた東北新幹線を救ったのは特急「ひたち」でした。
ピンチを救う、首都圏と仙台圏を結ぶ大動脈として特急ひたちが機能することが出来たのは、いくつもの偶然が重なったためです。
- 常磐線が震災から復活している
- 常磐線は今回の地震で被害に遭っていない
- E657系が日常的に常磐線経由で仙台に乗り入れている
これらの条件が整っているからこそ、代役を担うことが出来たのです。
いわき発着の一部特急「ひたち」がいわき~仙台間を臨時快速として運転することで本数も確保。
運用はどうするのか?
いわき発着の特急「ひたち」のうち、延長されやすい時刻は決まっています。
特に多いと思われるのが特急「ひたち9号」と特急「ひたち22号」です。
実は、定期の特急「ひたち3号」が仙台駅に到着するのは12:30頃なのに対し、折り返しの特急「ひたち26号」が仙台を出発するのは16:10頃。かなり時間が空いています。
特急「ひたち3号」として仙台に到着した列車を、本来設定されている休憩をさせずに特急「ひたち22号」として仙台を14時頃に出発させれば、効率的な車両運用ができます。
このままだと、本来の特急「ひたち26号」の車両が足りなくなりますよね。
でも大丈夫。
この間に特急「ひたち9号」を仙台まで延長すると、同列車が仙台に着くのは15時頃で、特急「ひたち26号」として定刻に折り返すことができます。
下手にいわき駅で南北を分断させずに直通運転してくれているおかげで車両が統一されているため、柔軟にダイヤの組み換えが出来るんですね。素晴らしいです。
とにかく本当に常磐線が復活していてよかったですね。
夜通し走った特急ひたち
いわゆる「ムーンライトひたち」
2月15日の夕方、特急ひたち22号(仙台からいわきまで快速)は、「上野到着が明日の朝になる」と宣言したうえで仙台駅を出発。海沿いの常磐線で強風を受けては緊急停車を繰り返すという半ば強行突破な運行で、徹夜で首都圏を目指しました。
上野に到着したのは午前3時前。
通常であれば運行停止するところですが、東北新幹線の不通に受験シーズンが重なった諸事情も考慮して、最大限運転したものと思われます。
一部報道では「受験生無し」
twitterでは「受験生のため、ひたちが夜通し走っている」というツイートが溢れ、お涙頂戴的な流れになっていましたが、実際には受験生であるとの申し出はなかったそうです。
正直ほっとしました。徹夜明けの試験はつらいですからね。
バスと飛行機の活躍
頑張っているのは常磐線だけではなく、会社の垣根を越えて、それぞれが輸送の使命を果たしています。
高速バスは可能な限りの増発をしていますし、航空会社も羽田ー仙台便を飛ばすなど、健闘しています。
このような支援があるからこそ、多くの受験生が先に東京入りできたという事実も忘れてはいけませんね。
そのうえで、最後の砦として運転された特急ひたち22号。再びJRの意地を見せてくれました。
鉄道やバス、飛行機などの交通機関が動いているって、本当に心強いですよね。
バイパス路線として定着
2022年1月13日、東北新幹線の郡山駅でポイント故障が発生し、東北新幹線は半日以上運転を見合わせることとなりました。
このとき、特急ひたち9号と22号がいわきー仙台間を延長運転しました。
2021年地震の際の対応が再び復活したことになります。
東北新幹線不通時のバイパス路線として定着しています。
ダイヤの組み替えも大変ではありますが、いわき以北を快速運転とすることで柔軟に対応しています。
トラブルはない方がいいですが、いざというときには今後も活躍してくれることでしょう。
ではまた。
臨時快速に化ける「ひたち」
余談です。
16日の同時刻に水戸駅にいたため、いわきから臨時快速に化ける特急ひたち25号を見に行こうとしましたが、
まず目に飛び込んできたのは7番線から発車する上りのひたち26号の遅れですね。この列車は仙台から上ってきますので、強風の煽りを受けたのでしょう。今日もお疲れ様です。
そして、下りのひたち25号について、駅の行き先表示は普通に「いわき」でした。
ちなみにこの列車が仙台につくのは23時39分。
お疲れ様です。私は先に寝ます。