津軽海峡フェリーに乗って、青森から函館まで行きました。北海道新幹線の開業が追い風となり、(コロナがなければ)活況を呈する実力を持っています。船内の過ごし方にもバリエーションあり。実際に乗船したので写真多めでレポートします。

青函連絡船の歴史
本州の最北端青森と、北海道の陸路の玄関口函館の間には、津軽海峡が立ちはだかります。
かつて、両者を繋ぐ交通手段はフェリーのみでした。北海道を目指す乗客はもちろん、貨物も列車からフェリーに積み替えていました。
フェリー内部まで線路が伸び、車両ごと運ぶことができたようですが、それでも「やっぱり列車で北海道まで渡れたら便利だよね」ということで、青函トンネルの構想が生まれます。一方、お金かかるよ?と建設を躊躇する声もありました。
そのさなか。
1954年9月26日、津軽海峡を台風15号が襲いました。台風が過ぎ去ったと判断した青函連絡船「洞爺丸」は函館を出港。しかし、実際には過ぎ去ってはおらず、海に出るとたちまち強風に煽られ、車両搭載口から海水が侵入、浸水が進み、制御不能に。遠浅の砂浜への座礁を試みるも失敗し、沈没。結果、死者1000名を超える痛ましい事故となってしまいました。
「やっぱりこのままではだめだ」と、青函トンネルの建設が確実のものとなりました。
1988年、青函トンネルが開通。乗客や貨物の主な輸送は鉄道に移りました。
新幹線が開通した今でも青函トンネル内を貨物列車が通過しています。新幹線開業に向けた工事中、旅客列車は完全に運休となりましたが、貨物列車は合間を縫って運行を続けました。これだけ貨物需要が旺盛かつ必需であるということですね。
しかし、青函トンネルではどうしても運べないものってありますよね?例えば「自動車」です。
マイカーやトラックなどが津軽海峡を渡る場合、完全に「フェリー」一択となります。※貨物としてであれば、自動車を青函トンネルで運ぶことは可能です。
鉄道が開通し、新幹線も通れる規格にアップグレードされた今でも、フェリーの存在価値は十分高いのです。

新幹線 vs フェリー
2016年、ついに北海道新幹線が開業。仙台・東京方面から北海道まで、乗換なしでアクセスできるようになりました。
これはついにフェリー大ピンチか!?と思った私のような人はセンスのカケラもありません。
実はこれ、フェリーにとって追い風になったみたいですね。
青函トンネルを通過する旅客列車が新幹線に格上げされたことで、青森ー函館間の鉄路が大幅に値上げとなりました。
- 新幹線開業直前:5490円
- 新幹線開業直後:7690円
しかも新幹線は函館駅には乗り入れず、新函館北斗止まり。乗り換えが必要で、時間短縮も30分前後。青森から函館に向かう人にとって、新幹線開業によるメリットはわずかで、ほぼデメリットしかない。
鉄道旅行者にとっても、特に青春18きっぷや北海道東日本パスといった普通列車専用の格安乗車券を使っている層には大打撃。青函トンネルを通過する際に特例で乗車できた特急列車も廃止になり、道内の並行在来線もJRから分離されたため、前述のパス類が使い物にならなくなってしまいました。正確には追加でオプション券を買えば到達可能なのですが、奥津軽いまべつ駅での接続も悪く、割に合わない出費は避けられません。
その結果、これまで鉄道を使っていた人が新幹線を避けてフェリーを選択する、ということも増えたようです。
…と、ここまで前置きが長くなりましたが、フェリーはこれからも大活躍。
青森ー函館間で津軽海峡フェリーに乗船したのでレポートします。
津軽海峡フェリーに乗ってみた
青森ー函館間を結ぶフェリーは2社あります。
- 津軽海峡フェリー
- 青函フェリー
ざっくりと個人の感想としてお伝えすると、津軽海峡フェリーは高いですが快適性に優れていて旅行者向け、青函フェリーは簡素な作りですが安いので移動手段としての利用者向けです。
このページでは「津軽海峡フェリー」について記載しています。
船の種類
津軽海峡フェリーは4種類の船を持っています。
- ブルールミナス(←今回乗船)
- ブルーハピネス
- ブルードルフィン
- ブルーマーメイド
船内設備はほとんど同じですね。
青森→函館で乗船
青森→函館で乗船。青森駅から青森フェリーターミナルまでの行き方については既にブログに上げていますので、下記をご参照ください。なお、ブログの最後にもリンクを貼るので、先に本ページを読み進めていただいても構いません。
料金と時間
今回は繁忙期のビューシートを使いました。3630円です。最も高い時期のビューシートでしたが、新幹線のトク50(半額のきっぷ)と同程度の金額。函館市内へのアクセスも加味して、フェリーを選びました。
私が選んだ便は、青森を10:00に出航し、函館には13:40着。3時間40分の船旅です。

ターミナルから乗船
フェリーターミナルの3階から乗船するのですが、ほとんどフェリーに乗ったことがない私、3階から乗船というのにビックリしました。
陸続きの桟橋から乗るんだと思っていましたが、違うんですね。

なんだか飛行機のマネをしているように見えますが、歴史的には飛行機が船のマネをしているんですよ。
船内の様子
船内に入ると、まずはメインデッキに出ます。ここには小さめの売店と飲食類の自動販売機などがありますが、まずは係員に指さされた先のホームポジションへ向かいます。
ここを抜けて、指定されたエリアに向かいます。
- スタンダード(雑魚寝)
- ビューシート(指定席)(←今回利用)
- 個室(ベッド付き)
みたいな感じで分かれています。上から下に行く順に高くなります。
基本的にはスタンダードを選ぶことになります。いわゆる雑魚寝ですね。ここから外の様子を見ることができませんが、ここをベースキャンプにしてフリースペースに行くのがいいんじゃないかなと思います。

私が選んだのはビューシート。船の前方に設置されていて、窓から前面展望を楽しむことができますよ。明確に自分の居場所が得られることになりますので、フリースペースのような場所で過ごすのが苦手な人にもおすすめです。
ちなみにこの椅子はほぼフルフラットになりますので、仮眠もできます。

それ以外にも、階段の上には個室もあるようです。長距離フェリーではないのでゆっくりすることはできませんが、ソーシャルディスタンスを十分に確保したい人や、旅の途中に少しでも休みたいという人は個室を選ぶのかもしれませんね。

船内にはフリースペースが所々に配されていて、グループでの旅行でも楽しく過ごせそうです。

食事をとりたい人はこちらでご自由にどうぞ、という感じみたいですね。

一応キッズスペースもありますが、これであればスタンダードと変わらないかな…というのが正直のところ。子ども連れ優先のスタンダードもありますからね。ハイハイ真っ盛りの赤ちゃんにはこちらがいいかも。

シャワールームもあります。私が乗ったときは誰も使っていませんでしたが、深夜便で宿代わりに乗るのであれば重宝しますね。

バリアフリーですので、体が不自由な方でも安心してご利用いただけます。

出港してから着岸まで
船は出港します。

見てください(↑)。手を振ってくれていますよ。呑気に振り返していたのは私だけでしたが、たぶん見えていたのでしょう、途中から気持ち強めに振り返してくれました。
さて、私が出ているのは船の甲板というわけですが、乗客が立ち入ることができるのは船の後方になります。こんなベンチもあって、天気があればゆっくりできますね。いや、ずっとここにいてもいいくらいですわ。

青森の港が離れていきます。岩木山がきれいですね。このあと、しばらくは陸奥湾の中を進行します。

穏やかな時間が流れます。いまや新幹線であっという間に越えることができる津軽海峡ですが、こうやって海を渡るのもいいものです。

陸奥湾を抜け、津軽海峡の真ん中に来ると船の揺れも大きくなります。でも、よほどのことがない限り酔うようなことはないかと思います。

やがて見えてくるのが函館山。

函館山はもともと火山の噴火によってできたもので、あとから北海道の本土と陸続きになったんですよね。だから函館市は特徴的な形をしているのですが、船から函館山を見ると、なるほど、これは隆起してできた山だな…というのが何となく伝わってきます。
街並みが見えてくると、ほどなくして函館港に到着。着岸後ただちに下船するよう、何度も放送されますので、ここまでの撮影が限界でした。

函館港にはこんなオブジェもあります。
乗船お疲れさまでした。

まとめ
津軽海峡フェリーに乗船し、以下の知見を得ました。
- 北海道新幹線の開業が追い風
- 北海道新幹線の半額以下で移動可能
- フリースペースが充実
- 展望席を指定すれば居場所をゲット
- 甲板が気持ちいい
青森駅から青森ターミナルまでの行き方を解説した記事は下記です。
函館ターミナルから函館駅までの行き方を解説した記事は下記です。