常磐線のグリーン車が稀に無料開放される理由

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鉄道
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常磐線(水戸ーいわき間)でグリーン車が無料開放されることがあります。乗車券のみで利用できることから乗りトクとされていますが、必ずしもお勧めできるわけではありません。無料開放される背景と共に解説します。また、2023年3月以降は激減することが予想されています。その理由も含めてお伝えします。

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常磐線グリーン車の無料開放

首都圏の普通列車に連結されているグリーン車(2階建て車両)は、通勤列車での移動を快適できる手段として広く知られています。

この車両を利用するには、乗車券のほかにグリーン券が必要となるため、プラスでの出費は不可避。

しかし、常磐線の水戸以北*の区間では、稀にグリーン車が無料開放されることがあります。追加料金不要であることがアナウンスされないこともあり、かつては知らない人が慌てて普通車に向かって急ぐ姿も見られましたが、今ではかなり認知されていて、この機会を逃すまいと学生も含めてグリーン車に乗り込んでいます。

※一部列車は水戸以南の土浦まで運転されることがあります

無料開放されると「いわき行き」のグリーン車が登場することになります。これはレアですね。

ではなぜ、グリーン車を無料開放することがあるのでしょうか?

無料開放する理由

無料グリーン車は、JRから乗客へのサービスではありません。

あくまで車両繰りの関係でそうせざるを得なくなったため、というのがその理由です。

E501系(10両)の代走

常磐線の水戸ーいわき間では、E531系5両、E531系10両(付属編成5両×2)、E501系5両、E501系10両の4種類が走っています。

これらのうち、E501系については4編成ずつ配備されているのですが、2023年3月のダイヤ改正までの間車両に余裕がありませんでした

そのため、E501系5両が検査となる場合はE531系5両が代走していたのです。

日立駅に停車中のE501系(日立さくらロードレース当日に撮影)

一方、大変なのがE501系10両の代走です。E501系5両やE531系5両で代走させると、車両編成数が変わることから各駅で混乱が生じます。そのため、代走車も10両にする必要があるのですが、前述のようにE501系には余裕がありませんでした。

この場合、E531系5両を2本つないで、E531系10両(付属編成5両×2)として代走させるのが基本となりましたが…

急遽の代走では車両が準備できない

しかし、急遽代走せざるを得なくなった場合は、とっさにE531系を2本も準備することが出来ません。

それでも列車を運休させるわけにはいきませんので、勝田車両センターからE531系10両(基本編成、グリーン車付き)を引っ張り出して代走させていたのです。

こうなると、グリーン車をどうするか、という問題が生じますが、この場合はグリーン車として営業することが出来ないため、無料開放せざるを得なくなっていました。

グリーン車として営業できない理由

なぜグリーン車として営業できないのか。

これには大きく2つの理由があります。

グリーン料金が設定されていない

常磐線のグリーン車連結区間は高萩までに設定されています。高萩以北では普通列車グリーン券は発売されておりません。そのため、高萩以北の運用にも入るE501系の代走車としてグリーン車を営業することは不可能となります。

かつてグリーン車付きの車両で大津港行きの最終列車が運行されていた時期がありましたが、時刻表には「高萩ー大津港間はグリーン車無し」と明記されていました。実際にはグリーン車は連結されたまま大津港まで向かっていましたが、高萩以北は無設定のため、無料開放としたためです。

ダイヤ上、グリーン車が設定されていない

もともとのダイヤではグリーン車を連結していない時刻となりますので、アテンダントが乗務しておりません。こうなると検札も出来ません。

グリーン券を買っている人と買っていない人の間で不公平が生じ、トラブルの原因にもなります。

また、途中駅から乗車する場合に、入ってきた列車を見て数秒でグリーン券を買える達人はなかなかいませんよね。

とにかく、グリーン車として営業することに無理がありすぎるのです。

いつ運転されるの?

公式発表されることはない

運転されるタイミングを狙えればいいのですが、残念ながらそれは難しいです。

通常はこのような状況にならないように綿密なスケジュール管理がされるはずですので、E501系10両の代走はE531系10両(付属編成×2)となります。やむを得ずグリーン車付きで代走されたとしても、車両の準備が出来次第入れ替えられますので、日をまたいで狙うのも難しくなっています。

なお、無料グリーン車が爆誕した際はTwitterでちょっとした騒ぎになりますので、チェックしてみてください。これが一番早い情報源です。

今後は激減する見込み

ただし、2023年3月以降は無料開放は激減すると予想されています。

これは、2023年3月18日のダイヤ改正において、水戸ーいわき間のワンマン運転が開始され、5両編成での運転はE531系充当が激増。E501系付属編成はわずか1往復に激減したためです。

さらに、E501系基本編成も1編成余剰となっているようです。

そのため、E501系基本編成が急遽運用を外れたとしても、これまでとは異なり、E501系に余裕があります。

やろうと思えば(やるかどうかは別として)、E501系付属編成を併結することもできる状況です。

そのため、今後は機会が減ると予想されています。

無料グリーン車がオトクではない理由

物珍しさもありますので、無料グリーン車が付いていれば利用することはあります。

そして、進行方向を向いて着席できるのであれば、これほどおトクなことはありませんが…

そうとも言い切れないため、積極的に無料グリーン車をオススメすることは出来ません。主な理由は次の通りです。

車内整備されない

この無料グリーン車はあくまで普通車扱い。そのため、起終点において車内整備されることはありません。

通常、グリーン車の座席は進行方向を向いています。しかし、無料グリーン車は座席の向きも整備されないため、完全にめちゃくちゃです。

上の写真から、ヘッドカバーもめくれ上がったままですし、座席の向きもめちゃくちゃであることがよくわかると思います。

自分が座るときに座席を回そうと思っても、前後の人がリクライニングを倒していると座席が引っかかって回すことが出来ません(やろうと思えば分かります)。

そのため、途中駅から乗車した多くの人は逆走しながら過ごすことも多いです。

座れない

上記のように乗車時の座席の向きがめちゃくちゃで、初めのうちは自分のところだけを回転させて座る人が多く、大部分がボックス型になることがあります。こうなると、多くの場合は4席分を1人で座ることになるので、ある程度の乗車率を迎えると座れなくなります。

おまけに、グリーン車連結という物珍しさから人も集まりがち。

このようなことを考えると、私は敢えて普通車を利用することをお勧めします。

勝田乗換が生じることがある

かなりレアケースですが、時刻表上は高萩行きやいわき行きであったとしても、勝田駅止まりとなることがあります

これは、グリーン車なしの編成が準備できて交換するためです。

いわきまでグリーン車両で移動できることもあって、鉄道ファンを中心に運用を調べて駅に向かうことがあるようですが、無料グリーン車だけが目当ての場合は無駄足になることがあるのでご注意を。

もっとも、勝田での車両交換は無料グリーン車以上に珍しい事案なので、鉄道ファンならなおさら楽しんでしまいますよね。

写真の日は水戸1654発のいわき行きの電車が勝田止まりとなり、入れ換えが実施されたものです。車両交換にともない6分の遅れが生じました。同運用はその日のうちには勝田に戻らないため、遅延が生じてでも交換を決行したのでしょう。

夕方に乗る、上りのグリーン車

ただで乗っておきながら酷評してきましたが、座れてしまえば快適です。

通常、勝田以北では朝の上りと夜間の下りしかグリーン車が連結されていません。夕刻の上り列車の2階席に乗るというのは、この無料グリーン車が運行される日限定の楽しみとなります。

水戸駅に進入する無料グリーン車の車内から。この区間は夕方も通常のグリーン車連結列車が運行されていますが、夕日に向かって3番線に進入する列車はないため、レアとなります。

みなさまへ大切なお願い

こういった記事を公開する以上は責任があるので、最後にみなさまにお願いしなければなりません。

2021年10月、山手線渋谷駅工事にともない、新宿ー品川間で臨時列車が運転され、事実上無料のグリーン車が連結されたことから、流れ弾で本ページへのアクセスが急増したことがあります。

本工事に伴う臨時列車のグリーン車両は通路扱いで、基本的には着席利用できないというスタンスだったようです。

一方、本記事で紹介している常磐線に稀に現れる無料開放のグリーン車は10両編成の車両の代走であり、普通車の客室として営業しているものです。

通路扱いではありませんので、山手線工事の臨時列車とは性質が異なります。

今後、運用上の都合で各地をグリーン車付きの車両が代走等で走ることがあるかもしれませんが、いかなる場合でも現場の乗務員の指示に従うようお願いします。

ではまた。

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