良い知らせと悪い知らせが1:9の比でやってくる、毎年の「春のダイヤ改正」。余命宣告を受けるならそろそろだ…と勝手に思っているのが「常磐線勝田以北の普通列車グリーン車の廃止」だ。いつになるかはわからないが、その時はやってきそう。たまに使う程度の立場なので偉そうに請願書を出すことはできませんが、祈りをささげることは自由なはずだ。こちらの記事にてご祈願祭を執り行いますので、ご興味ある方はご参列ください。
【まずはご安心ください】
常磐線勝田以北で普通列車グリーン車が廃止になると決定した事実はございません。
普通列車グリーン車の末端区間は縮小傾向
首都圏を走るJR線の普通列車に連結されている2階建て車両「グリーン車」。
安価な追加料金で着席ができるため、人気となっています。
近年ではJRE POINTのオトクな交換先としても注目され、通勤時だけでなく観光目的の利用も増えているようです。
また、中央線にも導入する動きがあるなど、活況を呈しているように見受けられますが…
その一方で、減っているものもあります。
それが、普通列車グリーン車の末端区間における運行です。
近年では、かつて黒磯まで運行されていた宇都宮線において、宇都宮以北を廃止にした実績があります。
また、ほとんどすべての列車にグリーン車が連結されていた常磐線土浦以北において、日中のグリーン車廃止という実績も残しました。詳しくは後述しますが、ダイヤ改正の度に意地でも縮小を続けているような傾向が見られ、ついに「高萩→上野のグリーン券で水戸ー土浦間のみグリーン車を利用できない」という乗り継ぎまで発生しました。
なぜ普通列車グリーン車の運用区間を減らすのか
普通列車グリーン車の廃止は、表向きは「普通列車グリーン車の廃止を目的にしたもの」ではないことも散見されます。
…って意味分からないですよね。
どちらかというと、車両繰りの事情が強く出ているケースが多いということです。
廃止の背景に「短編成化」
普通列車グリーン車が連結している車両は、グリーン車を含めて10両編成(または11両編成)で運転されています。
長い編成で走らせても、それに見合う乗客数が確保できなければ採算がとれませんから、地方部では短編成化を検討せざるを得なくなります。
「ワンマン化」も強く推進
もう一つ、力強く進めているのが「ワンマン化」です。
列車の運行は運転士のみで行い、運賃の精算は駅に任せるという、いわゆる「都市型ワンマン」という手法が上手くいくことが分かってからというもの、関東近郊において導入が進んでいます。
人員不足が叫ばれる中で、運行に関わる人員を減らすことができるのが最大のメリットですね。
グリーン車が縮小された区間
宇都宮線宇都宮以北
短編成化とワンマン化の波を襲ったのが、宇都宮線の宇都宮以北。
205系をE131系に置き換えましたが。。。
あろうことか、わずかに残っていたグリーン車付きE231(E233)系基本編成による運用までもがE131系に置き換えられてしまいました。
これをもって、宇都宮線宇都宮以北のグリーン車は消えることになりました。
常磐線土浦ー勝田間
近年、大きく話題に上がったのが「土浦ー勝田」における日中の5両編成化でした。
別の記事でも書いていますが、この区間にオールタイムE531系基本編成(10両編成)を走らせるのはもて余しぎみでした。
そんな生ぬるい状態がいつまでも続くわけがなく、2022年にメスが入ることに。
日中の運用は土浦駅で分断され、土浦以北は付属編成(5両編成)での運行となりました。
JR東日本としてはグリーン車を切り捨てたかったわけではなく、単に車両を短くしたかっただけと思われますが、結果としてグリーン車愛用家には厳しい改正となりました。
常磐線勝田以北
土浦駅での運用分断が大きな話題になっているなかで、もともと風前の灯状態であった勝田以北には微風が続いています。
灯火を消すまでの強さではありませんが、数本ずつ削減が続いています。
毎年、少しずつ、しかし着実に減らされていて、いまでは4往復が残るのみとなっています。
この区間ではE531系付属編成(5両編成)によるワンマン運転化が進んでいて、これからも強く推進していくことでしょう。
グリーン車付きの基本編成(10両編成)ではワンマン運転はできませんから、JR東日本としても廃止を進めたいと考えているはずです。
一方、この区間は利用者が多く、鉄道会社の都合で下手に短編成化すると痛い目(=遅延)に遭います。
その狭間に立たされているのがE531系基本編成でしょう。
勝田ー高萩間の基本編成状況
出庫が2本
高萩駅の車庫からその日の朝に出すE531系基本編成の運用は2つあります。
- 高萩06:03発 品川行き
- 高萩07:06発 品川行き
これらは水戸や土浦を通り越して、上野方面へ直通します。
特に高萩07:06発の列車は混雑の激しい日立→勝田・水戸間の大量輸送に貢献しています。
これは事実としてあるでしょう。
5両ワンマン化を強行するとパンクする可能性もありますから、どうしてもグリーン車を廃止にしたいのであれば、空気輸送こと「E501系10両編成」の出番です。
1編成余っているので、当分の間は引っ張り出して使うことになるかもしれません。
入庫が2本
前述の翌朝出庫に備えた入庫の運用が2つあります。
- 品川16:35発 高萩行き
- 上野17:47発 高萩行き
これらはかねてから存在する上野方面から高萩へ直通する数少ない運用の生き残りです。
水戸・勝田→日立方面のラッシュに対応する役割がありますが、朝ほどの混雑ではなく、5両ワンマンでも運べてしま..ぅ…
あっ…
いやいやいや、運べないょ。
ご祈願の場でふさわしくない発言でしたので撤回しますが、剛腕なJR東日本さんは「やりかねない」かもしれません。
水戸20:15発の列車は前後と間隔が空くため、10両を確保してほしいところですが、車両繰りさえつけばE531系5両編成のワンマンに変更してしまうかもしれません。
残念ながら、それが地元利用者としての現場からの感触でもあります。
朝の往復が2本
高萩駅に留置線があるからグリーン車付き10両編成を送っているのだとばかり思っていましたが、実際には4本のうち2本は朝の往復運用であり、高萩で夜を明かしているわけではありません。
- 土浦05:48発 高萩行き
高萩07:42発 上野行き - 我孫子06:26発 高萩行き
高萩09:02発 水戸行き
1本は土浦→高萩の始発列車として運用されています。この列車はかつてE501系10両編成が運用に就いたり、E531系5両編成を2本繋いで運用に就いたりと、ダイヤ改正の度にコロコロ変わっています。グリーン車を削ることくらい、JR東日本の手にかかれば容易いご用でしょう。
あとの1本は我孫子→高萩として運用されたあと、高萩→水戸として戻る運用です。こちらはかつて、高萩到着後は上野まで上京していたのですが、土浦ー勝田間の5両編成化を意地でも強行したいJR東日本が水戸でぶったぎった運用です。これにより、高萩→上野のグリーン券を買っても、水戸ー土浦だけグリーン車を使えない、おもしろ乗り継ぎが生まれました。
最後の砦は「我孫子ー高萩運用」か
JR東日本さんも頭がいいですから、どうにかして勝田以北のグリーン車付き10両編成の運用を減らそうとしているでしょう。
必死にがんばった…
がんばったけど、減らし切れなかった。
その痕跡が残っているのが「我孫子→高萩→水戸」運用と言えるのではないでしょうか。
上りを水戸止まりにするなんて中途半端なことをするくらいなら、いっそのこと、全部消してしまえばよかったのに…と思うかもしれませんが、それができるなら、とっくにそうしています。
まず、(1)我孫子始発がためにグリーン車付きで運行しなければなりません。そう簡単に代車を用意できるものではないでしょう。
また、(2)水戸を跨いだ利用も活況であり、水戸や勝田での長時間停車中も多くの乗客が車内にとどまっています。
さらに、(3)こいつを勝田止まりにすると、あとからやってくる水戸線からの(現行)勝田行きの車両を高萩まで送ることになるでしょうが、日によっては通勤通学の利用が続く同運用で5両編成化に踏み切ると勝田でパンクする可能性があります。
一方、車両によってはまだ余裕があるようにも見受けられ、詰め込むのも不可能ではない…
※パンクとは、乗り切れないことで遅延が生じるレベルを言います。
おそらく、最後に紹介した1運用が最後の砦となりますが、こいつを崩されるのも時間の問題かと。
これもまた、地元利用者としての感想です。
おわりに
常磐線勝田以北の普通列車グリーン車。予後は不良かもしれません。
- 2023年現在、4往復のみ残存
- ダイヤ改正の度に減らされている
- 一部の運用は混雑緩和に貢献も、それはグリーン車による効果ではない
- 我孫子ー高萩ー水戸運用をいかにいじるかがJR東日本の腕の見せ所か
考えれば考えるほど厳しい。
この写真を見てください。今にもはがれ落とされそうなグリーン車のマーク。
…って、さすがにそれは違う問題ですけど。。
これからも日立の海を2階建て車両から楽しめますように…
かしこみかしこみ申し上げまして、ご祈願祭とさせていただきます。
ご参集ありがとうございました。
我孫子発高萩行きの特殊な運用については以下の記事で触れております。こいつが勝田以北普通列車グリーン車存続における最後の砦と見ています。
空気輸送と言われがちなE501系10両編成は日立のラッシュで大活躍します。実際に、E531系5両をあてがって「パンク状態」となった水戸07:03発の列車をE501系10両編成に変更した実績もあります。
土浦駅におけるグリーン車切り離しに関する記事はこちらです。地元利用者のことは最大限配慮した運用に見えますが、はたして。