突如として現れた「北陸応援フリーきっぷ」を使ってみました。新幹線往復+特急までフリー乗車で20,000円という破格なきっぷには裏があり、「往路は指定席OKだけど復路は自由席のみ」という、利用者にとっては致命的な制限がありました。なぜこんな中途半端なことになったのか考えてみました。
北陸応援フリーきっぷ
北陸応援フリーきっぷは、2024年2月16日から3月15日まで設定されたJR東日本の企画きっぷです。
このきっぷは、以下の内容がセットになって20,000円という、価格がバグっているとしか言いようのない内容で、大変驚かされました。
【北陸応援フリーきっぷ】
・東京都区内〜北陸フリーエリアの新幹線指定席
・北陸フリーエリアでの4日間乗り放題(新幹線を含む特急列車の自由席も利用可)
・北陸フリーエリア〜東京都区内の新幹線自由席
【北陸フリーエリア】
このきっぷの最大の強みは、北陸エリアの特急列車が乗り放題であるということ。富山⇔金沢の移動が一瞬になるほか、福井や敦賀まで足を伸ばすことも容易に。乗り放題なので、途中の沿線に気ままに立ち寄ることができます。むしろ、それこそがこのきっぷの狙っている「北陸応援」なわけですね。また、エリアには北陸新幹線開業により特急が廃止となる区間が含まれていて、特に鉄道ファンからは強い支持を集めることになりました。
一方、このきっぷの最大の弱点は、復路の新幹線が自由席限定であること。往路は指定席を取れるのに、復路は指定席を取れません。もし取る場合は、新幹線特急券が別に必要(=運賃のみ有効)です。きっぷの券面には「はくたか号自由席」と書かれていますから、長野まですし詰めの通路で耐えた上で「あさま」に逃げるのもご遠慮頂きたい状況かと察します。
「復路は自由席限定」に対する果てしない恐怖心
「復路は指定が取れない君たち、どんなきもち〜?」って聞かれたらぶっ飛ばしかねませんw
かくいう私も、旅の道中で常に「帰りの新幹線の座席のこと」を心配しながら動くのはメンタル的にもよろしくありませんでした。
金沢に乗り入れる北陸新幹線のうち、「かがやき」は全車指定席なので問答無用で使えません。
往路は「かがやき」と「はくたか」が両方使えるわけで、これらを満席にするほど大勢の北陸応援フリーキッパーたちが、復路は「はくたか」の1〜4号車という極めて限られた空間に詰め込まれることになるのです。
その恐怖たるや、このきっぷに手出しする前からわかっていたはずです。
覚悟の上での申し込みが必要なきっぷでした。
往路:かがやきとはくたかの普通席全車両を存分に使って北陸へどうぞ
復路:はくたかの1~4号車だけ使って帰れ←いまここ
ネット上で改善提案が噴出
当然のようにネット上では「復路が自由席限定であることに対する厳しい批判」が見られました。
もちろん、みなさんも人の心を持っているので、お値段据え置きでわがままを言うのは贅沢なことはわかっているようです。
だからこそ、妥協案を示しつつ、
「多少高くなってでも復路も指定OKにしてほしい」とか
「指定取れるのを往路か復路か選ばせてほしい」とか
「いっそのことどちらも自由席限定にしてほしい」とか
いろんな意見が出ています。
ただ、度重なるJR東日本の強行的な態度に対してすっかり疑心暗鬼になっている私はこう思うわけです。
「違う」と。
「上記の意見はすべて成り立たない」と。
「往路のみ指定席OKというやり方が、JR東にとって最もメリットがあるからだ」と。
「往路のみ指定席OKが最も合理的だった」と見る理由
本当は往復とも自由席限定にしたかった
おそらくですが、JRは往復とも自由席限定にしたかったと思われます。
もちろん顧客ファーストの考え方はありますが、それはある程度の収益が見込まれる場合に限ります。
JR東日本もJR西日本も上場企業ですから、北陸のことは応援しつつも、利益を上げなければなりません。
格安の北陸応援フリーきっぷを利用せずとも通常料金で乗ってくれる乗客を優先したほうが利益が上がるのは当然のことですから、往復ともに自由席限定にして「高額商品である指定席座席をブロックすることなく既存の列車の自由席で適当に行ってほしい」というのが本音でしょう。
でも、じゃあなぜそれができなかったのか、考えていきます。
往路自由席限定にすると東京駅がパンクする
もし、往路を自由席限定にした場合、みなさんだったらどうするでしょうか?
東京駅まで行き、自由席の列に並ぶ。
そうですよね?
それも、何十分も前から、ずっと待ちますよね??
おそらくですが、その行動を東京駅が受け入れられないのではないかと察します。
このような破格なきっぷがどれだけ売れて、どれだけの利用者が殺到してしまうのか、JRも想像がつかない状況だったと思われます。
もし飛ぶように売れて、土曜日や3連休初日の午前に東京駅に「はくたか自由席」を求める大量の人が殺到したら大変なことになります。
手狭な東京駅には、北陸新幹線の他に北海道新幹線・東北新幹線・秋田新幹線・山形新幹線・上越新幹線…と、多くの新幹線が発着する過密なホームになっているにもかかわらず、これは厳しいですよね。
特定の列車の着席を狙う人間が何十分も前から列を作り出したら、さばききれませんよね。
「イベントを企画した結果大失敗してしまった」
そういうことを一番恐れる会社であるというのは、既になんとなく伝わっています。
ですから、泣く泣く往路は指定席を使えるようにし、列車やホーム上の混雑を分散させたものと考えています。
金沢は大丈夫なのか?
一方、復路を自由席限定にすることで金沢駅は大変なことになるのではないか?とも思っていました。
しかし、予想に反して、とりあえず何とかなっているようです。
金沢駅の規模は東京駅と変わりがないにも関わらず、やってくる新幹線は「かがやき」「はくたか」「つるぎ」のみですから線路にもホームにも余裕があります。
発車まで余裕を持って入線させることができますし、待ち列が車内に収まってから乗ってくる人もいるわけですから、さばけると判断したのでしょう。
さらに「行く時間」よりも「帰る時間」は分散しやすい傾向も加味したのかもしれません。
「多少高くなっても指定席OKにすること」はあなたが自力でできる
多少高くなってもいいから復路も指定席OKにしてほしい、という意見に対しては、ご提案がございます。
「復路の新幹線特急券を買ってください」
これです。とってもオススメです。
復路は自由席限定となっている北陸応援フリーきっぷですが、別に新幹線特急券を買えば指定席を利用できます。
しかも、運賃部分はそのまま有効で「北陸応援フリーきっぷ」を使えますから、乗車券を用意する必要はありません。
たったの約7,000円を追加で支払うだけで、復路も指定席を利用できます。
どうぞご検討くださいませ。
えっ!?530円じゃないのって?それは青春18きっぷ+特急券で新幹線乗れるよねって言っているのと同じくらいのセンスのなさを感じます。企画きっぷとはそういうものですから、却下でございます。
「指定取れる方向を選ばせたら」往路の安全を担保できない
指定取れる方向を選ばせてほしいという意見は、当初私も感じていました。
でも、東京駅のことを考えたら言えなくなりました。
往路か復路か選べと言われたら、
「往路は東京駅まで行けばいいよね」
「復路は富山や黒部宇奈月温泉からも座って帰りたいよね」
などの考えから、指定の権利を復路に取っておきたいと思う気持ちが強くなります。
それだと東京駅の問題を根本的に解決することはできないですよね。
三連休最終日の上り「はくたか」はパンクした
まさに苦し紛れの設定とはこのことか、と感じた「北陸応援フリーきっぷ」を使って、三連休の北陸を旅しました。
過酷な旅になることは覚悟していたので、家族を連れず、私一人でいってきました。
とても充実した北陸旅行になりましたが、案の定「帰りの新幹線は過酷」でした。
私が乗車したのは金沢を12:58に発車するはくたか号で、最混雑時間帯を外したつもりでしたが、
金沢でB席以外満席になる
富山でデッキが満員になる
黒部宇奈月温泉で通路に溢れ出す
飯山で所定時間内に乗り切れない事態に陥る
長野で指定席のデッキ開放が行われる
という散々たるものでした。
しかし、ちゃんと運び切れたわけですから、鉄道会社としてはミッションクリアなわけです。
北陸応援フリーきっぷ、大変でしたが楽しかったです。
ありがとうございました。
ではまた。