秋葉原ーつくば間を結ぶ2005年に開通したつくばエクスプレスですが、この期に及んで茨城県内で延伸する計画が持ち上がっています。1)筑波山方面 2)土浦方面 3)茨城空港方面 4)水戸方面で試算をはじめ、2)土浦方面 5)茨城空港経由水戸の2択で検討した挙句、2)土浦方面に決まりました。このページでは、各候補先が示された背景を現在のバス路線に着目して解説するとともに、沿線のご紹介をします。
つくばエクスプレス(TX)とは
つくばエクスプレスは東京・秋葉原と茨城・つくばを結ぶ全長58.3kmの路線です。
最大の特徴は最高速度130kmに及ぶ高速運転。
踏切が一切ない高規格の路線で、秋葉原ーつくば間を最速45分で結びます。
2005年の開業以来、順調に客足を伸ばし、2009年には黒字化。
今でも沿線の宅地化が進み、混雑の激しい通勤路線となっています。
つくばアクセスにおけるライバルはJR常磐線と高速バス「つくば号」。
JR常磐線は既存顧客の流出を何とか阻止しようと土浦発着の特別快速を新設。取手ー土浦間の各駅に停車し利便性を確保しつつ、取手以南では停車駅を絞って速達化。新設当時は巨大ターミナル駅「北千住」ですら通過としたダイヤにびっくりさせられたものです。
高速バス「つくば号」は東京駅ーつくばセンター(現在のつくば駅)間を結ぶ高速バスで、かつては10分おきに出るほど利用客の多かった路線です。同路線は特に上り方面において渋滞が激しく、つくばエクスプレスに多くの利用客が流れたと思われますが、つくば駅から離れた場所を行き来する場合には高速バスに軍配が上がります。
つくばエクスプレス(TX)の延伸計画
つくばエクスプレスの利用客も増え続け、このままいけば安泰…なんて思っていたら、ここにきて「延伸計画」が持ち上がってきました。
おいおい…
…しまった。茨城県民がこんな発言をしてはいけない…全面的に応援しなければならない立場のはずだ…
最終的に土浦方面に決まりました。
決まるまでの間、複数の延伸先が計画に上がっていました。それは、つくばから先
- 筑波山方面
- 土浦方面
- 茨城空港方面
- 水戸方面
となっていました。
これらの行先が選ばれた背景を説明していきます。
どれも延伸先としては魅力的な候補地でした。
筑波山方面に延伸したら
まずは1つ目。つくば駅から筑波山方面に延伸したらどうなっていたのでしょうか?
つくば駅から北に向かうには、現状は一般路線バスのほかにつくば市のコミュニティバス「つくバス」があります。
で、コミュニティバスと聞くと「あぁ田舎だから市が助けてあげているのね…」なんて思われがちですが、ここは全然違います。
「つくバス」の中でも「北部シャトル」と呼ばれる【つくば~筑波山口】路線は、(コロナ前は)路線単体で黒字化を達成しています。
コミュニティバスとしては異例の黒字路線は、通勤時間帯を中心に非常に混み合っています。
かつてはつくば駅を出ると花畑(防災科学技研)までノンストップ。
その後、大穂窓口センター、つくばウェルネスセンター、筑波交流センターなど、ほぼ市施設のみを経由するルートで筑波山口までを結んでいました。
すっかり多くなった利用者からの要望もあり、今では途中停車停留所数が増えています。
筑波山に延伸することに対して「誰も筑波山なんて行かねぇよ」というのはちょっと違う。
筑波山にはいかないかもしれないけど、それ以上に沿線需要が大きいルートなのですね。
仮につくば駅から筑波山口までを延伸させるとなれば、
- 筑波大学
- 防災科学技研
- 花畑・大穂地区
- 高エネ研周辺
- 筑波北部工業団地
- 125号線沿線
- 筑波山口
- 水戸線沿線からつくば方面
などへの移動が便利になるとかならないとか言われていました。
なお、水戸線とのアクセスですが、現状は筑波山口から下館駅や岩瀬駅へのコミュニティバスがあります。
延伸が実現すれば、コミュニティバスの本数なども考えられたことでしょう。
土浦方面に延伸したら
次に2つ目。つくば駅から土浦駅方面に延伸したらどうなるでしょうか。
現在、つくば駅ー土浦駅間は関鉄バスが3-4本/時で運行しています。
つくば駅を出発した関鉄バスは、竹園地区を巡回したのち、一気に東へ向かいます。市境を過ぎてしばらく走ると土浦駅へのアクセスに便利な高架道があるのですが、それを無視して土浦市内で細かく利用者を拾います。
同路線は、つくば市内・土浦市内での短距離需要と、つくば駅ー土浦駅間の長距離需要を一手に引き受けているため、混雑することが多いのです。
長距離需要のみに応える【トンネル・高架道経由】の便も1本/日運行。近年になり土浦方面のみ3本/日に増便されたようです。もともとつくばセンター~筑波テクノパーク大穂線という路線の入出庫を兼ねたダイヤだったのですが、両駅間の高速移動需要にも応えることになっています。
そのようなバス路線を鉄道によって置き換えることになるでしょう。
日中のJR常磐線普通列車は土浦駅での乗り換えが必要となりました。
「どうせ乗り換えるのなら土浦まで(から)はTXでよくね!?」と考える層(私とか)も出てきそうです。
仮にそのような需要がないにしても、土浦以南の常磐線に運行障害が発生した際の代替ルートとしても機能するので心強い存在になりそうです。
つくば駅から土浦駅方面に延伸させるとなれば
- 竹園地区
- 吉瀬など市境地区
- イオンモール土浦
- つくば~土浦間の移動
- JR常磐線土浦以北民
などが便利になるとかならないとか。
茨城空港方面に延伸したら
3つ目。つくば駅から茨城空港方面に延伸したらどうなるでしょうか。
つくば駅から茨城空港へは、2往復/日の高速バスが設定されています(今はコロナ禍で運休中)。
その程度の需要であればいらないのでは!?と思うのはちょっと甘い。
茨城空港へは、東京からの需要もあり、航空機利用者向けに500円で直行バスが運行されています(コロナ禍を経て縮小されています)。航空機に合わせて運行されており、便によっては満席になることも。原則として予約制が敷かれていました。
東京と直通の鉄路で結ばれれば、茨城空港には追い風になっていたことでしょう。安価な着陸料を活かして新路線の開拓もできそうでした。
現在、茨城空港と石岡駅との間には、旧かしてつの線路跡を活用したBRTが運行されています。つくば駅から茨城空港に延伸する場合は、途中で常磐線と交差します。おそらく石岡で交差することになったと思いますが、そうなれば石岡ー茨城空港間のうち一部は再び鉄路復活ということになりましたね。
茨城空港方面に延伸させるとなれば
- さくら運動公園
- 千代田地区(かすみがうら市)
- 石岡駅
- 旧小川駅付近
- 茨城空港
などが便利になるとかならないとか。
水戸方面に延伸したら
最後。つくば駅から茨城空港を経由して、さらに水戸方面に延伸するとどうなっていたでしょうか。
つくばー水戸間は「TMライナー」という高速バスが走っています。この路線は平日のみ2往復運行という風前の灯火状態から、県主体の取り組みによって大増便。今では通勤通学需要も兼ねた両都市間の太いパイプとして活躍しています。
石岡ー水戸間にはJR常磐線が走っていますので、競合(重複)となる感じは否めません。しかし、実は常磐線は友部を経由する関係で遠回りしています。最短経路となるルート上では関鉄バスが運行されていますが、土休日3往復まで減便となります。お世辞にも需要があるとは言い難いのですが…
石岡から茨城空港方面に向かい、水戸方面に進路を変える場合、水戸から茨城空港への新たなアクセスルートが確保されることになり、非常に有用です。水戸だけでなく、日立市などの県北地域からの茨城空港利用が格段に便利になっていたでしょう。
茨城空港の経由有無にかかわらず、おそらく経路上に茨城県庁が入ることになります。バイパス沿いの街として発展を遂げている茨城県庁ー水戸間には大きい需要がありますので、その区間だけを見れば勝算はあったかもしれません。
水戸方面に延伸させるとなれば
- 石岡駅(?)
- 国道6号線沿線(?)
- 奥ノ谷地区(茨城町)
- 茨城県庁
- 千波地区(水戸市)
などが便利になるとかならないとか言われていました。
「車を運転できない人が行くのに、車がないと行けない」と悪名高い茨城県の運転免許センターですが、延伸により新たなアクセスルートができていたことでしょう。ちなみに現在は水戸駅からバスが出ていて、車がないといけないと言い切るのはやや過剰ですが、まぁ不便です。
まとめ
つくばエクスプレスは延伸を計画しています。最終的には土浦に決まりましたが、それ以外の候補地も魅力的でした。
- 筑波山方面に延伸すると研究機関へのアクセスが便利に
- 土浦方面に延伸すると常磐線-つくばのアクセスが便利に
- 茨城空港方面に延伸すると空港活性化を見込める結果に
- 水戸方面に延伸すると茨城県庁が便利に
延伸が楽しみですね。
ではまた。