手っ取り早い東京観光に山手線を一周したいという人は多いです。乗車駅から隣駅までの往復乗車券(300円)で一周できます。往復乗車券はどうやって買うのか。また、なぜ隣駅までのきっぷで一周できるのか、その理由を「大都市近郊区間内のみをご利用の場合の特例」に着目して優しく解説します。
山手線1周の”正規運賃”は500円
東京のど真ん中をぐるぐる周回する山手線。
東京都心の主要駅を経由しながらぐるっと回る、緑の電車ですよね。
地方から来た旅行者がとりあえず一周したくなる気持ち、よくわかります。
「運賃は乗車した分だけお支払いください」というのは小学生でも理解できる常識ですが、その観点で行くと、山手線1周はいくらになるのだろう…
その答えは、JRの規則で定められている、「山手線内の普通運賃表」を見ると分かります。なお、この運賃表は時刻表などでは20kmまでしか書かれていないことが多いですが、一応35kmまで続きがあります。
営業キロ | 運賃(円) |
1-3 | 150 |
4-6 | 170 |
7-10 | 180 |
11-15 | 210 |
16-20 | 280 |
21-25 | 360 |
26-30 | 430 |
31-35 | 500 |
山手線一周は34.5kmなので、運賃表に当てはめると500円になります。
※電車特定区間の運賃表(=34.5kmで580円)を見てしまうケースが散見されます。
…と、たしかに運賃表にそのまま当てはめれば500円。
なのですが…
実際に払うべき運賃は異なります。
実際には、そんなに払う必要はありません。
山手線1周は300円で可能
山手線は、300円で一周できるんです。
具体的には、乗車駅から隣駅までの往復分のきっぷを買って乗車すればOKで、その金額が300円なのです。
営業キロ | 運賃(円) |
1-3 | 150 |
4-6 | 170 |
7-10 | 180 |
11-15 | 210 |
16-20 | 280 |
21-25 | 360 |
26-30 | 430 |
31-35 | 500 |
例えば東京から東京まで一周して帰ってくる場合は、
- 東京→神田の乗車券(150円)
- 神田→東京の乗車券(150円)
上記2枚(往復乗車券でも可)を用意しておけば、一周して帰ってくることができます。
なぜ!?!?これキセルなんじゃないの!?って思いますよね。
大丈夫です。これは正規に認められた乗り方です。
往復乗車券で一周できる理論
大回り乗車という概念
JRの乗車券のルールは複雑で、必ずしも「経路通りに乗らなければならない」ということではないのです。
原則は「経路通り」なのですが、特定の定められた区間内の移動であれば、同じ駅を2回通らない限り、どういうルートどりをしてもいいんです。
この規則は「大都市近郊区間内のみをご利用になる場合の特例」で定められています。
山手線1周300円の理論を理解するのに大切な規則になります。
上記の図に定められた区間内の移動であれば、発駅から着駅まで経路が重ならない限りどうやって行ってもよく、経路にかかわらず運賃は最短ルートで計算されるというものです。
例えば、東京→新宿を乗車するとき、
- 山手線外回りで行っても
- 山手線内回りで行っても
- 中央線で行っても
OKなんですね。
一方で、
- 山手線を一周した後にそのまま新宿に行く
- 東京→錦糸町→秋葉原→東京→新宿と行く
などは、経路が重なるのでNG。
理解できましたか?
ここから先は、上記の規則を拡大解釈をしていきます。
東京→神田/神田→東京の意味
東京から東京まで、山手線で一周するケースに戻って考えましょう。
まず、東京駅から乗車するときに1枚目のきっぷ「東京→神田」を利用して山手線に乗車すると、すぐに神田駅に到着します。ここで1枚目のきっぷは役割が終了します。
ここからは2枚目のきっぷ「神田→東京」が有効となるのですが…山手線は、神田→秋葉原→御徒町→上野→…→有楽町→東京と周っていきます。
ここで思い出してほしいのが「大都市近郊区間内である」ということ。区間内なので、神田→東京のきっぷで山手線を反対周りに乗車してもOKなのですね。
結果として、東京から東京まで150円×2枚=300円で乗車できる、ということになります。
往復乗車券の買い方と使い方
買い方
理論が分かったところで、次にきっぷの買い方なのですが…
これは指定席券売機で買うのがおすすめです。
指定席券売機の右下に「乗車券」というボタンがあるので、そこから先に進んでいただき、
- 乗車駅
- 下車駅(隣の駅)
- 乗車日
- きっぷの種類→往復
- 人数
などを選んで300円を払えば、往復乗車券(ゆき+かえりの計2枚)が出てきます。
使い方
乗車駅(例では東京駅)から乗車する際に、自動改札機に1枚目のきっぷを投入して入場します。
一周して帰ってきたら、到着駅(例では東京駅)で下車する際は有人改札に向かい、「一周して帰ってきた」旨を伝えたうえで、往復乗車券をお渡しすればOKです。
山手線一周を往復乗車券で乗車するケースは前例が多くあるため、トラブルに巻き込まれることはまずありませんが、もし「?」という状況になったら、上記理論で説明してください。
2周以上する場合の運賃
お気づきだとは思いますが、300円で乗れるのは1周までです。2周以上すると「経路が重なる」のでアウトです。
ちなみに内回り方面に2周する場合は、
- 東京→有楽町
- 有楽町→新橋
- 新橋→東京
の3枚のきっぷを使えば大丈夫。
往復乗車券2セット必要というネット上の記載もありますが、理論上は上記3枚で行けます。
ただし、2023年9月以降、指定席券売機による「他駅発の近距離きっぷ」を発券するのが難しくなっています(できないことはありません)ので、当たり前にできると思っていると失敗します。
「都区内パス」というオススメなきっぷあります
往復乗車券を買えば一周できることはわかりました。
ただし、それでは途中下車もできないし、乗っているだけではさすがにつまらない。
ということで山手線沿線を旅する人にオススメできる「都区内パス」をご紹介します。
このきっぷを使えば、760円で都区内のJR線1)が1日乗り放題になります。フリーエリアに山手線も含まれていますので、極端な例では始発から終電まで乗り続けても760円です。
個人的には300円で一周するくらいなら、760円でこのきっぷを買ってもらい、1周しつつ好きな駅で降りながら旅行を楽しんでいただくことをおススメします。
また、山手線を少しはみ出してみるのもいいかもしれません。
1) 以前は含まれていた東海道新幹線が都区内パスのフリーエリアから外されています。区間外の乗車券と合わせて使おうと思っている方はきっぷの買い方にご注意ください。
黙って山手線を何周してもバレないのでは!?
バレなくても「不正乗車」であることに変わりはない
さて、こういう話をしていると、
「黙って山手線をぐるぐる周ってもバレないのでは?」
と言われてしまうことがあります。
確かに、隣駅までの乗車券を買って、山手線を何周もしたあとに出場しても、バレないことはあるでしょう。
しかし、これは旅客営業規則に違反した不正な乗車となりますから、絶対にやってはいけません。
やってしまった後にこの記事を読んでいたら、下車の際に係員に事実を申し出て精算をしてもらいましょう。自ら申し出れば、不正乗車としての扱い(=3倍のお支払い)は適用されないと思います。
なお、基本的には原券との合計で300円となる精算をすることになりますが、状況によっては異なる精算額を示されることがあるようです(※筆者未経験)ので、指示に従いましょう。
また、入場券で入場して電車に乗ってしまった場合は、入場料金は運賃として充当されず、無効として回収されます。新たに普通運賃が必要となります。
バレちゃうこともある
なお、磁気乗車券やICカード乗車券には、自動改札を入場した際の記録が残されています。
その記録には、乗車駅の情報の他に、入場した時刻も刻まれています。
入場~出場までの経過時間が判定の要素になっていて、あまりに長い場合は自動改札が閉まる仕組みになっています。
もちろん、正当な乗車をしていても長時間かかることはありますから、これだけでアウトになることはありませんが…
いくつかの質問を受けることになりますから、日頃から胸を張れる正しい行動を心がけましょう。
って、このブログの読者は大丈夫ですね。
まとめ
山手線一周の乗車券について、以下の知見を得ました。
- 山手線一周は300円でできます
- 乗車駅から隣駅までの往復乗車券を買ってください
- 個人的には「都区内パス」で途中下車しながらの乗車がおすすめです
ではまた。