常磐線特急として活躍する一部のE657系車両に、かつての「フレッシュひたち」をイメージした特別塗装が施されています。茨城デスティネーションキャンペーンに合わせて各色が順次整備される予定です。フレッシュひたちを知らない人に、わかる範囲で解説します。鉄道マニアが沸き立つ中で、ラッピングされたE657系車両が仙台に入線し、胸を熱くする人も。東日本大震災で叶わなかったフレッシュひたちの仙台入線が、違った形で実現しました。
常磐線に「フレッシュひたち」が復活
2022年12月から順次、常磐線の特急「ひたち」などに使われる車両の一部に、かつての「フレッシュひたち」をイメージしたラッピング(リバイバル)が施されています。
対象となっているのは、E657系という車両。
はいはい待って待って、難しい話はしないから。
E657系ってこれ(↓)です。常磐線で見たことありますよね。
E657系は、真っ白な車体にピンクの帯を纏ったスタイリッシュな外観。
観光特急としても、ビジネス特急としても人気な車両に…
昔のラッピングなんて…
なんでそんなもったいないことを…
ん?
あれ??
かっこいい。
人間も車両も、イケメンであれば何を着ても似合うんだと。
お前とは違うんだと?
あ~そうですか。はいはい。
フレッシュひたちとは
そもそもフレッシュひたちとは何なのか?という人に向けて解説します。
今では特急「ひたち」と「ときわ」が走っている常磐線ですが、かつては「スーパーひたち」と「フレッシュひたち」が走っていました。
列車タイプ | 現在 | かつて | 運行区間 |
速達・遠達型 | ひたち | スーパーひたち | (品川)・上野 ⇔ いわき・仙台間 |
近距離停車型 | ときわ | フレッシュひたち | (品川)・上野 ⇔ 土浦・勝田・高萩間 |
現在「ひたち」も「ときわ」もE657系に統一されていますが、かつての「スーパーひたち」は651系という車両が、「フレッシュひたち」はE653系という車両が使用されていました。
まってまって。651系はこの車両(↓)です。
E653系はこの車両(↓)ですよ。
どちらの車両も、最大11両編成で運転可能。11両というのも、11両固定ではなく、
- 7両の基本編成
- 4両の付属編成
上記のユニットを、需要に合わせて組み合わせて運行されていたのです。
また、フレッシュひたちは近距離停車型であるため、長時間乗車よりも通勤需要の方が強く、座席定員をなるべく多く確保できるような設計が求められました。E653系のシートピッチ(座席の間隔)が910mmと、651系よりも60mmほど狭くなっているのはこのためです。
しかし、座席下の空間をすっきりとさせ、座席そのものもスリム化することで、乗客の快適性を最大限確保していて、実際に乗れば快適に過ごせることが分かりますよ。
さらに、フレッシュひたち限定で使用できる回数券も安価で発売し、スーパーひたちとの差別化を図りました。
ちなみに、今回復活したラッピング1号機(緑)と同色の、本物のフレッシュひたちの写真が1枚だけありましたので共有します。
いや、もうこれ、普通の人には見分けつかないですよね。
本当は仙台に行く予定だった
特急運用をいわきで分断
651系とE653系の2強だった常磐線に、車両更新と運用再編の波が訪れたのは2010年秋頃のこと。
当時の計画では、
- 651系→主に高崎線・吾妻線系統に異動
- E653系→主に常磐線いわきー仙台間に異動
上記により、常磐線の上野ーいわき間から順次撤退させ、特急車両をE657系に統一する方針が発表されます。
E657系は10両固定であるため、運用をいわき以南に限定し、いわきー仙台間はE653系で区間運転することが発表されたのです。
「もう、常磐線を直通する特急は走らない」
特急いわき分断のニュースには、鉄道ファンだけでなく、いわき以南から仙台方面へ向かう沿線利用客をも落胆させたのです。
しかし、それどころではない、けた外れに落胆させることが起きてしまいます。
東日本大震災発生で鉄路が崩壊
2011年3月11日、風光明媚だったはずの太平洋から津波が襲い掛かります。
海沿いを走る常磐線は、車両も駅舎も線路も破壊されました。
線路を敷きなおせばいいだけでなく、沿線の原発事故による立ち入り制限も相まって、常磐線はもうダメなのではないか。
「もう、常磐線は走らない」
絶望したのは記憶に新しい、というか、もう思い返したくもない出来事。
いわきで分かれてしまったのは、特急の運用だけではありませんでした。
この日を境に、9年もの長い間、いわきー仙台間を特急列車が走ることはありませんでした。
前言撤回「E657系を仙台に」
2020年3月。東日本大震災を知らない子どもたちが小学校に上がる頃。
ついに、常磐線が全線再開を果たします。
その事実だけでも多くの人が励まされたわけですが、もっと驚いたのは特急のダイヤでした。
全線運転再開にあわせて、特急「ひたち」の仙台~上野・品川間直通運転を開始します。
出典:JR東日本(こちら)
このニュースは夢にも思っていませんでした。
震災前でもいわきー仙台間は4両(長くても7両)で走ることがほとんどで、その程度の需要しかありません。
既に常磐線からはE653系が去っていて、10両固定のE657系しか在籍していませんでした。
再開区間を特急列車が走ること自体が難しく、走らせろというのも贅沢な発想で、そもそも頭の片隅にすらありませんでした。
そこに10両固定のE657系を採算度外視で送り込んでくれる。
おそらくは地元自治体からの強い要請を受けた上で「復興のためには東京から直通させる必要がある」との使命感のもとに「赤字覚悟の決断」だったのではないかと推測します。
時刻表の数字の羅列を見ただけでグッときたのは、全人生でこの1回だけです。
仙台方面も利用することが多い沿線住民として、頭が上がりませんでした。
復活塗装として「フレッシュひたち」も仙台へ
E657系車両が仙台まで行ってくれることになりましたので、E653系が仙台に定期運用として乗り入れることはありませんでした。
ここにきて、E657系にフレッシュひたちラッピングがされていますので、これを「フレッシュひたち」ということにすると…
東日本大震災で立ち消えになった「フレッシュひたち」のいわき以北の走行・仙台駅入線がかなうことになったともいえるのです。
ある日、日立駅で特急を待っていると、偶然にもラッピング車両がやってきました。
この列車は特急「ひたち26号」ですので、この日の朝に「ひたち3号」として仙台駅まで乗り入れて、折り返し列車として仙台駅からやってきたことが分かります。
そして、別の日には他色のラッピング車両も現れ、次々と仙台駅に乗り入れています。
かつての計画とは車両も運用も異なりますが、新たな形で、しかも便利な運用で「フレッシュひたち」が仙台に乗り入れたことになりますね。
いろいろあった過去を知っていると、感慨深いものがあります。
これから順次ラッピングが進み、カラフルな常磐線特急が増えていきます。
日々の利用が楽しみになりますね。
まとめ
常磐線特急E657系のフレッシュひたちラッピングについて、以下の知見を得ました。
- 茨城デスティネーションキャンペーンに向けて順次各色が投入される
- かっこよく仕上がっている
- ラッピング車両も仙台まで乗り入れる
- 側面の写真を見る限りでは、往年の本物との見分けが難しい
常磐線の特急を利用する機会がある際にラッピング車両がきたら嬉しいですね。
常磐線では普通列車のラッピングも行われています。併せて楽しみたいですね。
ではまた。