JAL国内線の航空機には「非常口座席」という特殊な座席があり、ここに座る場合は事前に確認すべきことがあります。この席を選ぶメリットとして(1)足元が広い、点が挙げられますが、(2)荷物を置けない、(3)離着陸時の行動制限が厳しい、(4)非常時に避難を手伝う必要がある、(5)ディスプレイを使える時間が短い、(6)気まずい…など、注意点が目立ちます。また、着席時の快適性も機種によって大きく異なるため、オススメ座席でもあり、要注意座席でもあります。私が座ったことのある座席について、可能な限りの情報をお伝えいたします。
非常口座席とは
航空機内に生じる非常口近傍の座席
飛行機の非常口は、万が一の緊急事態に備えて設けられた重要な機能であり、欠かすことはできません。
非常時には、煙や火災、圧力の変化などで通常の出口が使用できなくなる可能性があります。また、一刻を争う状況の場合は、一つの出口ですべての乗客を捌くことはできません。
そのような場合には、非常口からの脱出が必要になります。非常口には、より広い開口部や脱出用のスライドが設置されており、緊急時には多くの人々が迅速かつ安全に脱出できるようになっています。
非常口機内中央付近に配置されていることが多いです。
飛行機に絶対必要な非常口ですが、「まず使われない」ことも事実。
少しでも多くの人を運べるように、非常口の近傍にも座席が配置されていて、この座席のことを「非常口座席」といいます。
非常口座席の利用には条件があります
「非常口座席」には誰でも座れるわけではありません。万が一の際には、他の乗客が脱出する際の援助をする必要があるためです。非常口座席に座る際には、予約時、チェックイン時に警告がなされ、着席時に客室乗務員から最終的な説明を受けることになり、その内容に同意できなければ着席することはできません。
非常口座席の利用をお断りするケース
・満15歳未満の旅客
・身体上・健康上またはその他の理由により、脱出時の援助に支障がある旅客
・身体上・健康上またはその他の理由により、旅客自身の健康に支障をきたす旅客
・航空会社の示す脱出手順または係員の指示を理解できない旅客
・脱出援助を実施することに同意しない旅客
さらに、詳しくは後述しますが、非常口座席においては行動も大きく制限されます。
ここまで聞けば”座り損”と思われるかもしれません。
しかし、非常口座席には一定の人気があります。
なぜ非常口座席に座りたがる人がいるのか、そして、座るときの注意点は!?
様々な機体の非常口座席に座り続けてきた筆者が、可能な限りご説明いたします。

非常口座席のメリット
まずは非常口座席が人気な理由を示します。
といっても、ほぼ唯一。最大のメリットは「足元が広い」という点に尽きます。あとはどうでもいいです。
足元が広い
非常口座席は、他の座席と比べて前の座席との間隔(シートピッチ)が広くなっています。
通常、普通席では足を伸ばすのは難しいですが、非常口座席であれば足を伸ばす余裕があります。
実際にどれくらい広いかというのは機種や場所によって異なりますが、他の普通席と同程度ということはありません。

上の写真ではB767の28A席に座ったときのようす。極端に広いことがお分かりいただけると思います。

上記はB767の29A席に座ったときのようす。29Aも非常口座席ですが28Aよりは狭い。でも、他の席よりは広いことがお分かりいただけると思います。
このように、非常口座席と一言で言っても状況は様々ではありますが、少なくとも普通の席よりも狭いということはないでしょう。
前の座席が倒れてこない
非常口に隣接している座席はリクライニングがロックされています。
そのため、自身もリクライニング出来ません(一部の座席はできます)が、前の背もたれも倒れてきません。
テーブルも使いやすいと感じるでしょう。
なお、前の座席が離れすぎている場合はテーブルがひじ掛けに収納されています。

非常口座席の注意点
非常口座席のメリットは前項でお話しした通りです。でも、メリットと言ってもそれくらい。
あとは注意点が並びます。
必ず目を通していただき、ご納得いただいたうえで利用しましょう。
足元に荷物を置けない
通常の席であれば、前の席の下に荷物を置くことができます。
しかし、非常口座席では厳しく制限されていて、足元に荷物を置くことが一切できません。
搭乗後、全ての荷物を上の棚に入れる必要があります。
シートベルト着用サイン点灯中は上の棚から荷物を取り出すことができないのは非常口座席でも同じ。
この時点で「ちょっと不便だな」って思いますよね。でも次からもっと大きいのが来ます。
手持ちの荷物も制限の対象
離着陸時は手元における身の回り品にも制限がかかります。
通常席と同じように、文庫本や手のひらサイズのスマホ、ペットボトルであれば手元に置くことはできますが、せいぜいそれが限界のようです。
ノートPCはもちろん、タブレットの使用も注意されます。
また、私が驚いたのは「バインダー(紙を挟んで筆記する軽量の文房具)」ですらNGとされ、全て上の棚にしまわされました(※バインダーは客室乗務員により判断が分かれます)。
ディスプレイがない
最近では、A350など、国内線でもディスプレイを楽しめる機材が増えてきました。
出発地で着席してから、到着地で離席するまでの間、多くの人はディスプレイのタッチパネルを操作して機内エンターテイメントを楽しんでいます。
では、非常口座席の人はどうなるのかというと…

使えるディスプレイがないため、周りの人のディスプレイを目を細めて眺めながら、やっぱり見えずに前の壁を見つめるしかなくなります。
もちろん、非常口座席にもディスプレイは準備されています。水平飛行に入ればディスプレイを取り出して操作することは可能ですが、国内線においては水平飛行の時間よりも離着陸+タキシング(空港内をうろつくこと)の時間の方が長いんじゃないか感じることもよくありますから、ほぼ使えないと考えたほうがよさそうです。
飛行機のドアが閉まってから空港の中を走り回り、離陸して水平飛行に入るまでの長い時間、妄想以外やることがないという状況になりえます。そんな時間も大切ですが、やりたいことがある人はしっかり準備をしておきましょう。
ちょっと寒い
いざ空の上に上がったとき。
安定飛行中に壁を触るとわかるのですが、非常扉の部分は明らかに冷たくなる機種があります。
寒いのが苦手な人は注意です。
逆に機内が暑くて我慢している、という人は、壁に張り付けば涼をとることができそうですが。
ちなみにB767の際はとてつもなく冷たくなりましたが、B737では冷たさを感じることはありませんでした。
非常の際に援助をする
何事もなく目的地に到着すれば、非常口座席の人も一人の乗客となりますが…
問題は異常事態に陥ったとき。
万が一緊急脱出が必要な事態になった場合、非常口座席を利用している人は、係員の指示に従って他のお客さんの脱出を援助しなければなりません。
前述のように、その旨に同意しなければ非常口座席を指定することはできませんので、搭乗後の再度の確認として、客室乗務員さんからお声がけがあります。一般的な言語(国内線の場合は日本語など)で意思疎通が取れるかという最終確認の意味もありますので、しっかり受け答えをしましょう。
なお、非常の際に手伝うことができない方(子どもを同伴している方など)は、非常口座席を指定することはできません。
自身が恐怖を感じたとしても、避難の援助をしなければなりません。または、その覚悟が必要です。

客室乗務員と向かい合わせになることがある
機種により異なりますが、非常口座席の目の前に客室乗務員の方が着席されることがあります。
しかも絶妙な距離感…
ちょっと「きつい」と思う人もいるかもしれません。
私は、客室乗務員さんと目を合わせないように、必死に外を見続けていて、首を痛めた経験があります。
ご注意ください。
非常口座席を指定するには?
少しでも楽に過ごしたいとの需要から非常口座席は人気があり、指定に際して別料金を徴収している航空会社もあります。
JAL国内線では非常口座席の指定は無料となっていますが、搭乗日の直前まで指定可能とならないことがあるほか、ステイタスを所持している会員にのみ開放することもあるようです。
もし非常口座席を狙うのであれば、
- 予約直後
- 出発48時間前
- 出発3時間前以降
- チェックイン(保安検査場通過)の直前
に根気よくチェックしてみるといいでしょう。
また、どうしても座ってみたいのであれば、空港のチェックイン機で確認したり、有人カウンターで問い合わせてみてもいいかもしれません。
非常口座席をオススメできる/できない機材
つらつらと書いてきましたが、何事もなければ広く過ごせることは間違いないと思います。
私自身、子どもを連れていないときは非常口座席を好んで指定しているのですが、その中でも特に快適だった座席をご紹介します。
B767の28A席はオススメ!
以下に記載するのはB767という機体の28A席です。
この座席は、前方に窓2つ分のスペースを確保できる場所となっていて、非常口座席の中でも特におすすめできます。

ちょうど機体の中央部、客室乗務員用のスペースの横に配しています。
この付近には28ACの他に、28HK、29AC、29HKも非常口座席となっていますが、選択できるのであれば28ACを取るようにしましょう。
29ACと29HKは若干シートピッチが狭くなっています。写真を見ていただくと分かりますが、28HK側にはトイレがあり、少々圧迫感があります。※十分足は伸ばせます。

外を見ると羽根の上。景色を見たい人には物足りないかもしれませんが、高所恐怖症の人にはメリットですね。

B737の22AK席/23AK席もオススメ
3列-3列のシートが並ぶB737は、羽田~国内地方都市を結ぶ路線に広く使われていて、搭乗する機会も多いでしょう。
この機材の場合は、中央左右に非常口座席が2列並んでいます。
これらの非常口座席は、どちらの列に座っても若干足元が広いほか、目の前にシートポケット付きの背もたれが手に届く範囲にあるため、離着陸時も含めて快適に過ごせます。
足元の広さ以外は他の座席と大差ない点が高評価。
きっと”変な特別感を抱くことなく”リラックスして過ごすことができるでしょう。

A350の45AK席はクセがあります
一方、A350(主に羽田と大都市を結ぶ幹線に就航)の非常口座席は一癖あります。
まず、この記事で紹介した「非常口座席の注意点」はすべて当てはまります。
そして、足を伸ばそうとすると、非常口の扉の一部が支障します。

外を見れる窓も真横にあり、首を90度曲げるような格好に。
「必死に外を見続けていて、首を痛めた経験が」というのは、まさにこの席で起きたことでした。
とはいえ、特殊な席であることは間違いないので、何度も乗っていて「普通の席に飽きてきた」際には、座ってみることをオススメします。一度限りの旅行であれば、他の席の方が良いでしょう。
まとめ
JALが運航するさまざまな航空機の非常口座席を利用し、以下の知見を得ました。
- 非常口座席は足元が広い
- 身の回り品にまつわる注意点が多い
- 機内エンターテイメントを十分に楽しめない
- 予約時はブロックされている可能性がある
やっぱり上位の座席に座りたい!という場合は、下記の記事を参考に「当日アップグレード」にチャレンジしてみましょう。
紙の搭乗券を入手したいという人は下記の記事をご参考ください。
ではまた。