地上と486段の階段で結ばれたトンネル内の下りホームや、三角屋根が特徴の地上駅で有名な土合駅。駅自体が観光名所となっていますが、それだけではもったいない。せっかくですから土合駅から歩いて散策しましょう。水上方面から下り列車で到着後、上り列車で戻るケース(約100分)を想定し、(1)土合踏切、(2)土合砂防堰堤、(3)土合駅の展望、(4)谷川岳慰霊碑、(5)谷川岳インフォメーションセンター、(6)谷川岳ロープウェイなどの見どころをご紹介します。登り坂が続きますので、体力に自身がない方は土合駅→谷川岳ロープウェイまで路線バスを利用し、下りながら歩いて帰ってきましょう。
土合駅について
このページにお越しいただいている時点で土合駅のことはすでにご存知でしょう。
釈迦に説法かもしれませんが、記事の構成上、一応説明しておきますのでお付き合いください。
土合駅はJR上越線の途中駅として営業している山間の駅です。上越国境を越える単線の清水トンネルの群馬県側にあります。上越線を複線化する際に、下り線用として新清水トンネルが建設されたのですが、土木技術の発展により上越国境前後のループ線(緩い勾配で高度を稼ぐための環状線路)を省略することに成功しました。
その代わりに、土合駅付近では下り線がトンネルの真ん中となってしまい、結果生まれたのが地上と486段の階段で強引に結ばれた土合駅の下りホーム。
かつては谷川岳への登山客の登竜門として鎮座した土合駅の大階段ですが、今では下りホームを目当てに土合駅を訪れる観光客が増えていて、登山客だけでなく、カップルや家族連れにも好評です。あっ、もちろん鉄オタにも(笑)。
JR上越線は非常に本数が少ないことでも有名。
週末や多客時にはフレキシブルに季節列車が設定されますが、通常はわずか1日5本しか走りませんから、入念に計画を立て列車を狙い撃ちして向かうことが多いです。
それでも、一旦土合駅で降りてしまった場合、下り列車から上り列車に乗り継いだり、後続列車で先に向かう際に長時間の待ち時間が生じます。
【最もよくある乗り継ぎ例】
水上(13:32)→土合(13:40)
土合(15:34)→水上(15:48)
私も上越国境が大好きで、人生に疲れてしまったときはよく行きますが、カフェも開業して施設が充実した駅に留まることも多かったのが事実。
しかし、それではもったいない。
親に似たのか、小学校に上がったばかりの娘も上越国境の虜になっているようで、ある週末に電車で土合駅を訪れることになったのですが…
「この道歩いてみようよ」
娘の一言で、土合駅から徒歩で行けるだけ行ってみよう、と一歩を踏み出したのです。
国道291号線
自動車で上越国境を越える場合は、国道17号線「三国峠経由」となり、関越トンネルを通れない危険物積載車などが頻繁に通る大幹線となっています。
一方、土合駅の目の前を通る国道291号線は、国境を越えることができなかった道。
かつて群馬県と新潟県を清水峠経由で越えようとしましたが、あまりに険しい道のりのために未完成のまま、今でも山の前後で分断されています。
交通量は少ないものの、水上の街中から土合駅、ロープウェイ乗り場、一ノ倉沢方面へアクセスできる唯一の道路として残されています。
この道を「山」に向かって歩いていきましょう。
どんな景色が待っているのか、写真とともにお伝えしますね。
先に言っておくと「現地で味わう感動」には敵いませんから、ぜひ当記事の情報を参考に、ご自身の足で訪れてみてくださいね。
土合駅から歩いて行ける見どころ6選
この記事では6つ、土合駅から近い順に紹介していきます。
土合踏切
まずは土合踏切。
JR上越線の上り線として、今でも現役の踏切です。
この踏切から山側を見ると、国境をまたぐ「清水トンネル」が口を開けています。
多くの撮り鉄が集まるスポットになっていて、”撮り鉄の掟”を知らない我々はお邪魔をしないよう端の方から撮影。
それでもこんな写真が撮れますよ。
トンネルに入った列車の前照灯が遠くから見えてきますが、列車はなかなかやってこない。途中、今まで見えたはずの前照灯が見えなくなる区間もあります。清水トンネルの大きさとともに、上越国境の偉大さを乗車時以上に思い知らされます。
土合砂防堰堤
さらに上がっていくと、流れ落ちる滝のような音と共にミストが飛んできます。
ここは土合砂防堰堤(どあいさぼうえんてい)という、湯檜曽川に設置された施設です。
湯檜曽川の下流域における洪水を防止するための重要な施設です。
現地の案内板によると、1941年に作られた群馬県初のアーチ式堰堤で、全国的にも極めて早い時期のものだそうです。
そのようなことを気にせずとも、高さ11mを一気に下る迫力ある水流に圧倒されることでしょう。
土合駅を見下ろせるスポット
堰堤から先に進むと、シェルターが見えてきます。
歩行者でも中を進むことができますが、カーブで車から視認されにくいかもしれませんから、カーブ外側を歩いた方がいいでしょう。
で、ここから見える景色が最高です。
土合駅の上りホームを見下ろすことができる絶景スポットです。
ぜひ立ち止まって景色を楽しんでみましょう。
土合霊園地(慰霊碑)
多くの登山者を魅了する谷川岳。
中には、上級者ルートや断崖絶壁を登るルートなどもあり、多くの死者が出てしまっているのも事実です。
土合霊園地には、谷川岳で命を落とした方々の慰霊碑が建てられています。
土合駅から谷川岳に向かう登山者が必ず通る場所に設置されていますから、ここで一度気持ちを落ち着かせ、安全第一での登山に向かうのがいいでしょう。
ちなみに、ロープウェイから向かう通常の登山道は初心者でも挑戦できるルートのようです。もちろん油断は禁物ですから、できる準備をしっかりしてから向かいましょう。
なお、上越国境を跨ぐ鉄道トンネルの建設においても、多くの殉職者を出しています。これらの慰霊碑は各トンネルの出入り口付近に建てられていて、この場所とは異なります。しかし、今日の上越国境への交通が数々の犠牲の上に成り立っていることを忘れてはいけません。
慰霊碑を訪れることは自らを振り返る機会にもなります。この記事の題名を「観光スポット」とせずに「見どころ」としたのは、このような場所にも訪れてほしいと考えたからです。
谷川岳インフォメーションセンター
霊園地から少し進むと、小屋っぽい建物が見えてきます。
ここは「谷川岳インフォメーションセンター」という施設で、誰でも無料で入ることができます。
中は「谷川岳の博物館」といったところ。
外から見ると山小屋のような感じがしますが、中に入るととてもきれいに整備された新しい建物であることが分かります。
VRの技術を活用した疑似登山を体験できる映像設備のほか、レベル別の登山道のご紹介や、「登らない人」向けに一ノ倉を下から鑑賞するハイキングルートの説明もありました。
谷川岳に転がる石の説明があり、実際に触ってみると蛇紋石が特別に滑りやすいことがよくわかります。谷川岳の魅力を伝えながら、さりげなく注意喚起している点が印象的でした。
綺麗なトイレもお借りできますので、立ち寄りましょう。
谷川岳ロープウェイ乗り場
さらに進むと、谷川岳ロープウェイ乗り場に着きます。
ここからロープウェイに乗れば、天神平まで一気に上がることができます。
往復:3,500円(ロープウェイ+リフトを利用の場合)がかかりますが、天気が良く時間があればぜひ行ってみましょう。
なお、国道291号線はこの先も続き、一ノ倉沢の絶景を楽しめるスポットまで舗装された道を進むことができます。
自家用車やバスは乗り入れ禁止となっております。運行が許されている”電気バス”の設定もありますが、本数や定員が限られますので、原則として歩いて行くことになります。
折り返し列車や後続列車で土合駅を離れるのであれば、ここで引き返すのが無難ですが、時間に余裕があればぜひ行ってみましょう。
体力に自信のない方は「片道路線バス」へ
上記でご紹介した道は、ず~っと上り坂です。
体力に自信がない方にはオススメできません。
もし、体力の消耗を最小限に抑えて行きたい場合は、土合駅→ロープウェイ乗り場まで路線バスを使っていきましょう。
本数は限られるものの、運賃はわずか210円。
帰りはずっと下り坂ですから、歩きながら見どころを訪れても苦ではないでしょう。
我々はロープウェイ乗り場から土合駅まで15分かからずに到着してしまいました。
まとめ
土合駅から歩いて行ける見どころをご紹介しました。
- 土合踏切は清水トンネルを見ることができる
- 土合砂防堰堤は迫力のある滝を楽しめる
- 国道から土合駅を見下ろすことができる
- 慰霊碑で心を静めることができる
- 谷川岳インフォメーションセンターで勉強できる
- 谷川岳ロープウェイ駅まで行ける
土合駅にフォーカスを当てた記事は下記
上越線で東京→新潟を移動するのも楽しいですよ
関越交通(バス)
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ではまた。