空港第2ビル駅は千葉県成田市にある成田空港内の駅ですが、ここは色々特殊です。まず、(1)空港駅なのに“成田”を名乗りません。また、(2)第3ターミナルにも行けるのに駅名に入れてもらえず、極めつけに(3)成田スカイアクセス線の運賃を正しく収受するためにホームを柵でぶった切りました。その結果、(4)経由によっては乗車のために2回も改札を通らなければならないケースも出てきました。かつては(5)JR線の利用でも京成線のコンコースを通る事情もありましたが、今は解消されています。(6)駅前には空港とは思えない殺風景な通路もあります。色々特殊でおもしろい「空港第2ビル駅」を覗いてみましょう。
成田空港には3つの駅があります
成田空港は、千葉県成田市にある国際空港です。
1978年の開港までに用地取得が難航し紆余曲折あった歴史の詳細は割愛しますが、色々あったことだけは覚えておきましょう。
とりあえず今では開港以来世界各国に国際線が就航する巨大空港に成長しました。
成田空港内には3つの駅があります。
- 成田空港駅
- 空港第2ビル駅
- 東成田駅
成田空港駅は、成田空港第1ターミナルに直結する鉄道駅で、JR線と京成線が乗り入れています。日系ではANAに搭乗するときはこちらの駅を利用することになります。
空港第2ビル駅は、成田空港第2ターミナルに直結し、第3ターミナルにも徒歩連絡できる鉄道駅で、JR線と京成線が乗り入れています。日系ではJALに搭乗するときはこちらの駅を利用することになります。【本記事で中心に取り扱う駅です】
東成田駅は、成田空港開業当初の元祖・成田空港駅で、京成線と芝山鉄道線が乗り入れています。空港接続駅としての機能は失われていますが、今でも空港関係者が利用しているほか、成田空港建設の見返りとして運行する必要がある芝山鉄道線との接続駅でもあるため、意地でも営業を続ける事情がある側面が大きいです。
空港第2ビル駅は「成田空港の駅」です
さて、これまでの話の流れを一旦忘れて、唐突に”空港第2ビル”という駅名をいきなり聞いたらどう思うでしょうか?
「いやどこの空港だよ!」
って突っ込みたくなりますよね。
「空港第2ビル駅」は成田空港の第2ターミナルの開業に合わせてオープンした駅なのですが、まず駅名が特殊で、成田空港を名乗っていません。
開業後しばらくすると、空港第2ビル(成田第2ターミナル)と、( )付けながら明記してくれるようになりましたが、かつてはきっぷ券面にも成田の文字は一切ありませんでした。
成田空港へのLCC就航が進んで第3ターミナルが開業すると、当駅が第3ターミナルへの玄関口を担うようにもなりました。
これにより、駅名標も空港第2ビル(成田空港第2・第3ターミナル)となりましたが、それでも正式名称は「空港第2ビル」のまま。第3ターミナルは仲間に入れてもらえませんでした。
あと、“ビル”っていう古めかしさ。そこは”ターミナル”じゃないの?と突っ込みたくなりますが、令和になっても”ビル”を守り続けています。
羽田空港などが進んで駅名を改称しているのに、頑なに元祖の駅名を守り続けている姿勢。私は好きですね。
空港第2ビル駅には拡張の歴史があります
そもそも成田空港には成田新幹線を通す計画がありました。
成田新幹線は、東京駅(現・京葉線ホーム)から印西市の途中駅(現・千葉ニュータウン中央)を経由して成田空港に至る路線として実際に着工されており、空港第2ビル駅もそのルート上の駅として計画されていました。
成田新幹線の発着用に、2面2線で成田空港方面と東京方面に乗り場を分けて設計されていましたが…
空港第2ビル駅が開業する1992年の時点で、成田新幹線の計画は既に破綻。
代わりにJR成田線と京成本線が乗り入れることに。成田新幹線用として計画されていたホームをそのまま2社に転用したため、JR線と京成線が1面1線ずつを使うことになりました。
上下列車を1つのホームで捌く空港第2ビル駅は過密状態ではありますが、何とかやりくりをします。
しかし、その後に成田新幹線用地を活用した高規格の「成田スカイアクセス線」が開業したことがとどめの一発となり、ついに京成線側は列車を捌ききれなくなり、ホームを拡張することになります。
空港第2ビル駅には運賃計算の壁があります
工事の末、1面2線に拡張された京成線の空港第2ビル駅に、成田スカイアクセス線も発着するようになりました。
ところが、めでたしめでたし…では終わりませんでした。
上野ー空港第2ビル間の経路が「京成本線経由」なのか「成田スカイアクセス線経由」なのかによって、運賃が大きく変わります。
空港第2ビルから | 京成本線経由 | 成田スカイアクセス線経由 |
京成上野 | 1,042 | 1,257 |
日暮里 | 1,042 | 1,257 |
押上 | 989 | 1,184 |
これらの経路を正しく把握するためには、列車の経由によってホームを分けなければなりませんでしたが、空港第2ビル駅にはそんなに多くのホームを作る幅はありませんでした。
そこで、救われたのは京成線の編成長が短いことでした。
幅がなければ縦に伸ばしてしまえ。
並行するJR線が15両編成なのに対し、京成線は最大でも8両編成。倍半分の違いがありますので、京成線側のホームを前後に伸ばし、代わりにホーム中央で半分にぶった切るという強硬手段に出ることができたのです。
写真のように、線路は一直線につながっていますが、
ホーム上の動線を区切っていることがお分かりいただけると思います。
降りるホームを間違えたからといって、この柵を勝手に乗り越えることは許されていません。
上り線のホームも同じような造りですが、こちらは京成本線用のホームが6両分しかないため、8両編成の列車が発着するときは成田スカイアクセス線用のホームにはみ出して停車します。乗り間違えないように繰り返し案内されますが、それでも間違えて乗ってしまうと、(安価な)京成本線を乗車しているにもかかわらず、(高価な)成田スカイアクセス線経由の運賃が必要になってしまいます。
コンコースで2回改札を通ることがあります
空港第2ビル駅は、限られた敷地に設置されています。各方面ごとに改札を設置するのが難しいため、空港第2ビル駅から京成本線に乗る場合に限り、改札機を2回通ることになります。
これは、京成本線と成田スカイアクセス線のターミナル側の入場改札が1か所に集約されているためです。このままでは問答無用で「成田スカイアクセス線経由」の運賃が引かれてしまいますので、京成本線に乗る人のための中間改札を設置し、ここを通った場合は入場記録を「京成本線経由」に書き換えているのです。
繰り返しになりますが、今では京成本線に乗車する場合に限り、改札を2回通ります。
しかし、かつては、JR線から下車する際に、JR線の改札を出るとそこは京成線のコンコースで、さらに京成線から出場するという動作がありました。
なぜこんなことをしていたかというと、成田空港に立ち入る際に検問があったからです。
かつてはこの場所で「パスポート出せ」と言われたのです。見学で訪れたときは「運転免許証」などの身分証を提示していました。
これには、開港にあたっての”紆余曲折”が影響しています。
検問場所は京成線の出口側に設置されていたのですが、JR線からの乗客も検問に誘導しなければならないため、動線が京成線を横切ることになったのです。
いまでは、成田空港の検問が廃止になりましたので、JR線も独自の出場改札を設置することができるようになったのですね。
東成田への「時空を超えた通路」があります
空港第2ビル駅では、さらに歴史をさかのぼることができます。
かつて成田空港駅として機能していた東成田駅への通路があるのです。
東成田駅には「昭和の世界」が広がっています。
日本一短い鉄道「芝山鉄道線」の案内に従っていくと到着しますので、時間があればぜひ行ってみてください。
ただし、片道500mありますので、それなりに時間と体力を消耗します。
フライト時間に気を付けてくださいね。
まとめ
空港第2ビル駅について、以下の知見を得ました。
- どこの空港か名乗っていませんが、これは成田空港の駅です
- 第3ターミナルも当駅が最寄りです
- 京成本線と成田スカイアクセス線は柵で仕切っています
- 京成本線に乗るためには中間改札を通ります
- 東成田駅まで500mの通路があります
ではまた。