JR東日本の南半分が乗り放題となる「週末パス」が、2025年6月をもって販売終了となりました。このニュースが広まるや否や、SNS上では惜しむ声と非難が渦巻きました。多くの人に愛されたこのパスは、なぜそこまで支持されていたのでしょうか。そして、JR東日本が販売終了という決断に至った背景には、どのような理由があるのでしょうか。今回はその魅力と、終焉を迎えた理由について探っていきます。
「週末パス」とは
「週末パス」は、JR東日本が2025年6月まで販売していた企画乗車券です。
このパスは乗車券タイプのフリーパスで、別途特急券を購入すれば、新幹線や特急列車への乗車も可能でした。
利用できるエリアは、関東から南東北までと非常に広く、信越エリアの松本や上越妙高から、東北地方では酒田、新庄、古川、石巻といった3県にまたがる広域をカバー。さらに、同エリアの多くの私鉄線や第三セクター路線も対象となっていました。
利用期間は土休日の連続2日間で、大人8,880円、子ども2,600円というお得な価格設定。
購入には前日までの手続きが必要という点がネックではありましたが、2021年頃からは「えきねっと」での購入が可能となり、前日までに決済しておけば、当日の受け取りもスムーズに行えるようになっていました。
週末パスの歴史は長い
週末パスのルーツを辿ると、なんと20年以上前に登場した「土・日きっぷ」までさかのぼります。
当時は、新幹線の指定席を含めてまさに“乗りたい放題”。鉄道ファンにとって夢のような切符でした。
中でも2003年春に登場した「土・日きっぷスペシャル(中高生用)」は、なんと2日間乗り放題、指定席も取り放題で、わずか4,000円という驚きの価格。青春18きっぷとはまた違った、自由な旅の醍醐味を味わえる存在でした。
その後、乗車券タイプへと形を変え、周辺の私鉄もフリーエリアに組み込まれ、より広範囲・柔軟に使える「週末パス」へと進化。
そして気づけば、鉄道趣味に本格的に目覚めるきっかけを与えてくれたのも、このきっぷだった…そんな印象を持っている人もいるかもしれません(※個人的に超重要ポイント)。
そんな思い出が詰まった週末パスも、2025年6月で販売終了へ。この発表を受け、SNSではJR東日本への不満や怒りの声が続出。愛されていた証とも言える、惜しまれる声の多さが印象的でした。
「週末パス」が愛された理由
なぜ、週末パスはそこまで愛されたのか。
理由はいくつかあります。
通年買えるフリーパスタイプは少ない
JR東日本管内が乗り放題となるフリーパスタイプのきっぷは多くはありませんでした。
期間限定で設定されるものはありますが、首都圏から使えて、かつ通年で買えるものはほとんどありません。
【通年買えるフリーパス(一例)】
- 都区内パス
- 東京フリーきっぷ
- のんびりホリデーSuicaパス
- 休日おでかけパス
- 週末パス
首都圏で買える主なJR線のフリーパスはこれくらいだと言えるでしょう。
広範囲で使えるフリーパスはさらに少ない
前項目のフリーパスのうち、
都区内パスは東京23区内のみが乗り放題になるフリーパスです。
東京フリーきっぷは都区内パスに地下鉄や都バスなどを含めたもの。
のんびりホリデーSuicaパスは、小田原・大月・神保原・自治医大・土浦・君津までの「房総半島の北半分と北関東の南半分まで」の在来線をフリーエリアとするSuica限定発売のフリーパスです。りんかい線や東京モノレールにも乗れるのが強みです。
休日おでかけパスは、のんびりホリデーSuicaパスのフリーエリアとほぼ同等ですが、新幹線にも乗れる紙タイプのものです。
一見たくさんあるように見えますが、ここまで書いたすべてのきっぷはフリーエリアが関東に収まります。
週末パスのフリーエリアは広い
一方、週末パスはフリーエリアが関東全域に及ぶだけでなく、信越や南東北まで広がっています。
このようなきっぷはあるようでなく、気兼ねなく周遊する手段として重宝されました。
さらに、沿線の一部私鉄もフリーエリアに含まれています。
フリーエリアに含まれる私鉄
- 伊豆急行線
- 富士急行線
- 上田電鉄線
- アルピコ交通線
- しなの鉄道線
- えちごトキめき鉄道線(一部)
- 北越急行線
- 鹿島臨海鉄道線
- ひたちなか海浜鉄道線
- 会津鉄道線(一部)
- 山形鉄道線
- 福島交通線
- 阿武隈急行線
このような特徴的なフリーきっぷですから、特に「鉄道ファン」から強い支持を得ていたと思われます。

値段が安い(特にこどもが格安)
さらに、週末パスは値段が安い点も特徴。
おとな8880円、こども2600円。
東京ー仙台の単純往復でも元を取れます。
こどもに限って言えば、東京ー日立間など、さらに短い区間の往復でもほぼ元を取れます。
子連れの家族においては、「大人は普通乗車券で、こどもは週末パスで」という選択肢もありました。
「週末パス」が廃止となる表向きの理由
人気があったはずの「週末パス」ですが、なぜ廃止となるのか。
この理由はJR東日本が以下のようなことを言っています。
近年においてご利用が低迷していたため
しかしこれは建前であることが一瞬でバレます。
もちろん、2020〜2022年頃は低迷していたはずですが、それはコロナだから。決して使いたいという人が減っていたわけではないでしょう。
そして、利用が低迷していたとしても、注文が入ったときに紙を刷るだけ。発売するのに特別なコストがかかるわけではありませんから、気にせず発売を続けていればいいのです。
利用が低迷しているというのは、あくまで「週末パスを消すための建前」に過ぎないと考えざるを得ません。
挙句の果てに
これからは新幹線eチケットをご利用ください
というコメントをつけて、5月に50%引きとなる「詫びトクだ値」まで用意する始末。
いったいどう頑張れば伊豆急下田まで新幹線eチケットで行けるのか、逆に聞きたいくらいです。
「週末パス」を廃止する本音と狙い
ではなぜ建前を立ててまで廃止したかったのか。
紙の切符を削減したい
新幹線eチケットや在来線チケットレス特急券に代表されるように、JR東日本では紙のきっぷを削減しようと必死に努力しています。
環境負荷の低減というのが表向きですが、実際にはきっぷの発券から廃棄に係る費用の削減が考えられます。磁気券を発券するのもコストが掛かりますし、廃棄するのも産業廃棄物となります。
また、メンテナンスの手間がかかる磁気券対応の自動改札機を減らす目的もあるでしょう。
週末パスを使う場合、まずきっぷ本体は紙のきっぷですし、併せて使う特急券も(新幹線の場合は)紙のきっぷになりますから、廃止にしたいと思うのは一理あります。
鉄道は点と点の移動手段だと勘違い
JR東日本は「鉄道は点から点への移動手段」と考える傾向があります。
新幹線eチケットはその代表格。
新幹線利用区間で乗車券がぶつ切りになるため、本来はキロあたりの運賃が安くなるはずの長距離利用者にとってはコスト面でデメリットが大きくなりますが、そのことはひたむきに隠して突っ走っています。
JR東日本の人たちは、周遊性の高い週末パスはそもそも不要だと勘違いしていることすら考えられます。
トクだ値で顧客を騙せると勘違い
トクだ値(50%引き)で往復ともに発券した場合、東京ー仙台間のトータルコストは週末パス利用と比べて安価になります。
あたりまえです。
ただし、トクだ値(50%引き)は無制限に発売されているわけではなく、席数に限りがあります。
評判が悪いのはその席数。
あくまで噂ですが「10席もない」と言われることもあります。
筆者も新幹線eチケットのトクだ値(50%引き)を取れたのは2020年(コロナ禍)が最後です。
トクだ値はJR東日本の手のひらの上で席数をコントロールできますから、都合の良い商品なのです。
周辺の私鉄にカネを払いたくない
週末パスのフリーエリアには周辺の一部私鉄も含まれています。
そのため、発売数に応じて分配しなければなりませんが、これを渋ったとも考えられます。
土休日の移動を分散させたい
土休日の一部新幹線は混雑しています。
2025年2月には、上越新幹線の乗客が乗り切れず、指定席のデッキを開放する事態も起きました。一連の混雑の影響で遅延も出ています。
平日はビジネス客が多く、土休日はその分空いてしまうなどというのは過去の話。
テレワークがある程度進んだ今ではむしろ平日のほうが空いている状況ですから、土休日限定で使えるきっぷはもはや不要とも言えるのです。
JR東日本の株主のうち3割は海外勢
JR東日本という会社は誰のものかと言うと、社長のものでも社員のものでもなく、株主のものになります。
株式会社である以上、株主が納得する選択肢を取り続ける必要があります。
JR東日本の株主のうち、3割は海外勢になるようですから、海外勢に利がある選択肢を取る可能性があります。
海外勢から見れば、日本の物価は安すぎます。
金払いの悪い日本人旅行者、なかでも特に乗り回して座席を埋める私のような鉄道ファンを減らして、空いた席には金払いの良い外国人観光客に高いお金を払わせて乗ってもらう、という選択肢を取りうるということです。
将来のファンを獲得する、などという視点はないでしょう。
日本人としては残念ですが、利益を追求するとそうなるのだろうと思います。
まとめ
以下に本記事の内容をまとめます。
- 週末パスの概要: JR東日本が2025年6月まで発売する乗車券タイプのフリーパス。特急券を組み合わせれば新幹線や特急列車にも乗車可能。フリーエリアは関東から南東北まで広範囲に及ぶ。
- 週末パスの歴史: 20年以上前の「土・日きっぷ」から始まり、乗車券タイプに変化。鉄道ファンに愛されたきっぷだったが、2025年6月で廃止が決定。
- 愛された理由:
- 通年購入可能なフリーパスは少なく、週末パスは貴重な存在。
- フリーエリアが関東全域から信越・南東北まで広く、私鉄線も多く含まれる。
- 価格が安く、特に子ども料金が格安だったため、家族旅行にも便利。
- 廃止の理由(表向き): 利用者の低迷。しかし、これはコロナの影響も大きく、実際の需要は一定数あったと考えられる。
- 廃止の本当の狙い:
- 紙の切符削減: JR東日本はチケットレス化を推進しており、紙のきっぷ発券・廃棄コスト削減を図る。
- 点と点の移動を重視: 鉄道を「移動手段」と捉え、周遊型の利用を減らしたい意図がある。
- トクだ値を活用: 限られた割引席を設け、利益をコントロール。
- 私鉄への支払い削減: フリーエリアに含まれる私鉄との収益分配を避けたい可能性。
- 土休日の移動分散: 混雑する週末の移動をコントロール。
- 株主重視の経営: 外国人観光客の高額運賃を優遇し、利益向上を狙う。
このように、週末パスは鉄道ファンや旅行者に愛されたきっぷでしたが、経営上の判断から廃止されることになったようですね。
いままでありがとうございました。


