SuicaやPASMOなどの交通系ICカードがバスでも当たり前のように利用できるようなりました。同一のICカードで複数人の支払いを行うこともできますが、必ずタッチの前に乗務員への申し出が必要です。連続タッチによる精算はできません。なぜこのようなシステムになっているのか。背景には過去に発生した二重精算トラブルがあります。バスの精算の仕組みを説明しますので、混乱を未然に防ぎましょう。
バスとIC乗車券
バスでのIC乗車券利用が浸透
バスに乗車するとき、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードを利用できる路線が多いですよね。
今では当たり前のように利用している人が多いでしょう。
IC乗車券は、かつては使用できず、代わりにバスカードが利用できるケースが多かったです。
例えば、かつての首都圏では「バス共通カード」というものが使われていました。
「懐かしい~!」と叫んだ人は、たぶん筆者と同世代。
元祖は神奈川中央交通が発行したバスカードで、会社の垣根を越えて使えるようにしたのがバス共通カード。金額に応じてプレミアが上乗せされていました。上乗せ額は「バス特」というプログラムを通じて、SuicaやPASMOにも移行されていましたが、いまではバス特も廃止に。
代わりに、ICカードの仕組みを利用したIC一日乗車券や金額式IC定期券などを活用し、利用を促しています。
タッチで運賃精算が完了
運賃先払い方式の場合は乗車するときにタッチするだけ。
ICカードに整理券番号を記録するシステムも搭載されていて、運賃後払い方式(整理券方式)の場合は、乗る時と降りるときにタッチをすれば正しい運賃を引いてくれます。
都市部だけでなく、地方でも使えるエリアが広がっていて、利用者としては大変便利ですよね。
バスのICカード対応化によって、ピピッとタッチするだけで精算が完了。
今では当たり前ですが、当時では革命的だったんですよ、これ。
複数人利用は注意が必要
支払い前に申し出が必要です
1人で使う分には、タッチするだけで支払い完了なのですが、複数人で使う場合は注意点があります。
「同じカードを何回もタッチすることはできません」
大切なのでもう一度。
「同じカードを何回もタッチすることはできません」
複数人で使う場合は、必ず先に人数を伝えなければなりません。
連続タッチはできません
「なんで使えないんだよ!」
…と怒りを運賃箱にぶつけそうになっている人もいますが、使えないものは使えません(※理由は後述)。
一度運賃箱にタッチしてしまうと、そのカード番号が運賃箱に記録され、再度のタッチはできないようになっています。
仮にでもタッチしようとすると
「精算済みのカードです」
と表示されて、先に進めなくなります。
複数人精算は「事前申告」で可能
しかし、複数人精算したい人も心配はご無用。
「2回タッチができない」だけであって「2人分の精算はできる」のです。
簡単なことで、
「2人分お願いします」と先に言えばOK。
たったそれだけのことですので、頭に入れておきましょう。
整理券式の後払い路線であれば、1人がタッチし、他の人は紙の整理券を取っておきましょう。システム上、ICカードをタッチしておけば紙の整理券は不要なのですが、「本当に同じバス停から全員乗った」ことの証明になりますから、取って降りるときに手渡しするのが正解です。
連続タッチできない理由
バスの精算機で連続タッチができない理由として、誤精算の防止が挙げられます。
かつて「大規模誤精算」が発生
遡ること2008年。私も被害に遭った「大規模誤精算」が発生しました。
発生確率は数千回に一回だったようですが、総額で約1,100万円もの過大徴収。
誰が悪かったわけではありません。利用者さんも、運転手さんも、システム開発者さんも悪くはありません。
しかし、結果としては「運転手さんの操作ミス」が原因でした。
誤精算の内容は、同じカードで複数回の精算をしてしまった「二重精算」です。
誰も気づかなかった二重精算
ICカードをタッチした時に「ピーッ」と音が出たら、誰だって「精算できていない」と思いますよね?
…ね?
…そうですよね?
…でも…
…精算できていた。。
しかし、精算が完了していることに、乗客も運転士も気づかずに、もう一度タッチして(させて)しまった…
上記に加え、ある操作が加わると誤精算となったのです。
その「操作」をするかしないかが分かれ道でした。
正しい対処をしていたケースはセーフだった
ICカードをタッチしたときに「ピーッ」と音が出ることは日常茶飯事。
この段階では「実際は精算完了しているかもしれないけど、よくわからない」という状態です。
このとき、次に打つべき正しい行動は、
- 運転手さんは「静観」
- お客さんは「再度タッチ」
でした。
この「基本動作」が守られている限り二重精算は起こりませんでした。
再度タッチした時には、機器が「つい先ほど精算したカードだから差し引かない」という判断ができたのです。
運転士さんが誤った操作をすると「アウト」だった
しかし、「ピーッ」という音に運転手さんが反応してしまうと…良からぬことが起きます。
エラー画面を消そうとし、精算機に何らかのリセット操作をしてしまうケースがあったのです。
この操作をされてしまうと悲劇が起きます。
実際には1回目のタッチで精算が完了していたにもかかわらず、精算済の情報がリセットされています。
その結果、2回目のタッチで再度運賃が引かれてしまうのです。
う~ん。なるほど、これは引っ掛かりますよね。
2回精算できない仕組みを導入
大規模な失敗をやらかしてしまった場合、再発防止をしなければならないのが世の常です。
そこで導入されたのが「同じカードを2回以上受け付けない」という機構。
精算済なのにエラーが出てしまった際、運転手さんが”(通常考えられる)余計な操作”をしてしまった場合でも「精算済カードです」と突っ返し、二重精算を防止することにしたのです。
運賃箱にタッチされたICカード情報(カード番号)は、その運行が完了するまでの間は記録されていて、その番号を持つICカードは受け付けません。
その結果、
「複数人精算したいのに再度タッチできない」
「複数人精算の場合は必ず先に申し出なければならない」
という今の形になったと考えられています。
まとめ
バスでの複数人精算に関し、以下の知見を得ました。
- 今では多くのバス路線でICカードが使える
- タッチするだけの簡単精算
- 複数人まとめて支払う場合はタッチ前の申し出が必要
- 連続タッチはできない仕組み
- 過去に大規模な二重精算が発生した経緯あり
ではまた。