常磐線赤塚駅と水戸駅の間に臨時で設置される偕楽園駅。2023年からこの駅に「キロ程」が設定されています。これにより、これまでは公式に発売することができなかった「偕楽園発着」の乗車券類を発券できるようになりました。これは一般利用者も決して無視できない変化で、これまでと比較して良くなった点と悪くなった点を解説しますが、総じて良くなっています。梅まつり期間中は、安心して水戸まで鉄道でお越しください。紙の乗車券の購入にはコツが要りますが、ICカードが使えるので過度な心配は不要です。
偕楽園駅は「偕楽園への最寄り駅」
偕楽園駅は、茨城県水戸市にある常磐線の臨時駅です。
偕楽園周辺で開催される「水戸の梅まつり」に合わせて、2月中旬から3月下旬の土休日のみ開設されます。
数年前に改修工事がなされ、きれいに生まれ変わった偕楽園臨時駅。
しかし所詮は臨時駅。
普段は列車が一切止まりません。
偕楽園に行く場合には、偕楽園駅を通過して水戸駅に到着後、北口から発着する路線バスで”戻って”くる必要があります。
年に数日だけ開設される偕楽園臨時駅。
さて、偕楽園までのきっぷを買うとしますか…となったときに、
「…あれ?偕楽園駅が見当たらない!」
となっていたのがこれまでのお決まりストーリーです(後で詳しく書きます)。
偕楽園駅に起きる変化
偕楽園駅に営業キロ設定へ
2022年下期に入ってきたビックニュースがこちら。
JR常磐線偕楽園駅に営業キロを設定します。
はぁ!?
営業キロって何だよ!
知らねぇよ!
勝手にしろよ!
そんな声が聞こえてきますが…
実はこれ。一般利用者にも大きな影響があるのです。
これまでは偕楽園発着のきっぷを買えなかった
実は、偕楽園駅ってちょっと厄介な存在。
偕楽園駅には営業キロが設定されておらず、運賃を計算することができなかったのです。
つまり、偕楽園駅は「運賃計算上は駅ではなかった」のです。
そのために券売機で「あれ?偕楽園駅がない!」という事態になってしまったのです。
もし東京から常磐線で北上して偕楽園駅で下車する場合でも、水戸駅までの乗車券を購入する必要がありました。
まさに、乗車券ですら偕楽園を通過する事態。
それでも…
偕楽園駅で下車するときに、水戸駅までの乗車券は回収されてしまいます…
IC乗車券の場合は、水戸駅までの運賃が差し引かれてしまいます…
ただ、そのままではあまりにひどいですよね。
このような事態に対応するため、偕楽園駅での下車に関しては特例措置が敷かれていました。
具体的には、水戸駅までの運賃を支払い済みであることを証明する「精算済証明書」をいただけまして、当日に偕楽園から水戸まで後続の常磐線に追加運賃なしで再乗車できたのです。
JRの都合で水戸までの運賃を収受しておきながら、乗客に損をさせるわけにはいきません。
まさに苦し紛れの手法でした。
これからは偕楽園発着のきっぷを買えます
偕楽園駅にキロ程が設定されると、偕楽園駅は「運賃計算上も駅として認定」されるのです。
これにより、これまでは買えなかった「偕楽園までの乗車券」が発券できるようになります。
もう、偕楽園駅で降りるときに水戸駅までの乗車券を買う必要はありません。
もう、偕楽園駅で降りるときに勝手に水戸駅までの運賃を差し引かれることもありません。
偕楽園駅は、偕楽園駅として完全に自立したのです。
誠におめでとうございます。
偕楽園発着の乗車券購入方法
偕楽園発着の乗車券は少々特殊で、指定席券売機の乗車券購入機能は利用できません。
その代わりに、以下の方法を活用することができます。
偕楽園発着の乗車券購入方法
・近距離きっぷを購入する
・みどりの窓口で購入する
・えきねっとで予約して指定席券売機で受け取る
・指定席券売機の「乗換案内」から検索して購入する
いつもの癖で、指定席券売機の「乗車券購入」ボタンを押すと、偕楽園駅が検索でヒットしません。
これは、営業日が限られる臨時駅であることが影響していると考えられます。
この点を気を付けて購入しましょう。
なお、SuicaなどのIC乗車券が使えますから、通常は過度な心配は不要です。
さぁ、では利用者にとってどんな変化が起きているのか。
次にみなさまにとってのメリットとデメリットを解説しますね。
利用者のメリット
偕楽園駅にキロ程が設定されると、一般的にはメリットが大きくなります。
東京ー偕楽園間が値下げになります
これまで、東京から偕楽園に行く場合は、水戸までの乗車券が必要でした。
水戸までの乗車券は2310円ですが、偕楽園までであれば1980円で済みます。
なんと、330円も差が出るのです。
これは、運賃が跳ね上がる「120kmポイント」が偕楽園ー水戸間にあるためです。
もちろん、偕楽園から再乗車するときは水戸までの乗車券が別途必要ですが、偕楽園ー水戸間の乗車券は150円です。
再乗車したとしても、これまでよりもはるかに安いことがお分かりいただけると思います。
100キロを超える乗車券を山手線内から使用する場合、乗車する駅にかかわらず、運賃計算は東京が起点となります。
偕楽園からの移動がフレキシブルになります
これまでは水戸まで再乗車できる精算済証明書を手渡されていたため、
「偕楽園から水戸までも電車で行かないとね…」
という感情が働きやすかったのです。
しかし、これからは精算済証明書の文化がなくなりますから、偕楽園観光後に水戸方面に出る際、バスを利用するという選択肢も生まれるのです。
バスにはオトクな乗車券も用意されていますので、水戸市内の回遊性も上がるでしょう。
市民としてもうれしい結果です。
東京ー水戸間も安くなります
偕楽園には立ち寄らない人にも朗報です。
東京ー水戸間を安く移動する方法として、
「赤塚で区切る」
という手法が地元では有名です。
東京ー水戸間を通しで買うと2310円する乗車券ですが、
東京ー赤塚:1980円+赤塚ー水戸:190円と分けることで、合計2170円で済むという方法です。
偕楽園駅が開設される日であれば、区切る駅を偕楽園にすることができますので、合計2130円になります。
便乗してちょっとトクしちゃいましょう。
利用者のデメリット
唯一のデメリットがあります。
それが「途中下車できなくなる」という点。
今までの制度であれば、偕楽園駅で「途中下車」しても精算済証明書を使えば水戸駅まで利用できたのですが、これからは運賃が打ち切りになります。
東京からの利用であれば、むしろ打ち切りになったほうが安いのですが…
極端な例として、赤塚→水戸の移動中に偕楽園駅に寄ろうとした場合、
これまでであれば初乗り1回分で済んだ運賃が、初乗りを2回支払わなければならなくなります。
う~ん。
まぁ、特殊な例かもしれませんけどね。
厳密には、これまで偕楽園駅で実施していた精算済証明書による再乗車制度は「途中下車」には該当しませんが、分かりやすく表記するために上記のように記載しました。
偕楽園駅に関わる注意
偕楽園駅には下り方面の列車しか停車しません。
これは、上り方面の線路にはホームがなく、周辺の環境上、設置も難しいためです。
偕楽園駅から直接東京方面に行くことはできず、一回水戸駅まで下る必要があります。
なお、この場合でも偕楽園→東京山手線内の乗車券で利用可能で、偕楽園ー水戸間の往復乗車券は不要です。
頭の片隅に入れておきましょう。
まとめ
偕楽園駅にキロ程が設定されるにあたり、以下の知見を得ました。
- 偕楽園駅にキロ程が設定され、東京駅から119.3kmとなります
- 偕楽園発着の乗車券類を発券できるようになります
- 東京山手線からお越しの場合の運賃が(従来比)値下げになります
- 紙の乗車券を券売機で購入する際には少しコツがいる
偕楽園の情報をお探しの方は、以下の記事もご参考ください。
梅まつり期間中以外では、9時までに行くといいことがあります
ではまた。