2022年3月の地震に伴い、常磐線の徐行運転が発生。特急列車の一部区間を運休し、代わりに臨時快速として運転する処置が取られました。新幹線不通に伴う救済として1本が延長運転しましたが、ダイヤ繰りをよく見ると、徐行運転の中での常磐線特急の従来本数確保という側面も見えてきました。茨城県内→仙台の移動が必要となり乗車した記録も残します。
2022.03.16 地震に伴う鉄路の被害
2022年3月16日23時過ぎ、最大震度6強の地震が東日本沿岸を襲いました。
仙台に向かっていた東北新幹線「やまびこ223号」は脱線。大事故には至りませんでしたが、東北新幹線の不通は半月以上たった今でも続いていて、揺れという観点では3.11と同程度の破壊力だったのかもしれません。
那須塩原ー盛岡間で不通となった東北新幹線も、南は郡山・福島まで、北は一ノ関まで。徐々にではありますが、運転再開区間が広がり、2022年4月14日に全線での運転再開に至りました。
常磐線も被害を受けた
この地震では、在来線も被害を受けました。
今回ご紹介する常磐線の例では、いわき~仙台間において被害が発生。全線再開を果たしたものの、一部区間は応急処置での再開。徐行区間が数多く残されました。
特に原ノ町~新地間では最後まで徐行区間が残ってしまい、通常よりも大幅に時間がかかる状況が続いていました。これに伴い、
- 普通列車は徐行を加味した時刻に変更
- 特急列車は原ノ町~仙台間を運休
- 原ノ町止まりの特急列車を臨時快速として仙台まで直通運転
という処置が取られました。
目立つのは「特急の臨時快速化」ですが、特に徐行区間の多い原ノ町以北を特急列車として営業するのに無理があると考えたのでしょう。
常磐線の臨時ダイヤを見る
品川~仙台間 臨時ダイヤ概要
特急列車の時刻を下記します。
これらのうち、ひたち3号・13号・19号・14号・26号・30号は品川~仙台間を走る特急列車で原ノ町以北を快速化したもの。
ひたち6号・9号は品川~いわき間を走る特急列車ですが、不通が続く新幹線の状況を鑑みて仙台まで延長運転するものです。
列車名 | 品川 | いわき | 原ノ町 | 仙台 |
ひたち3号 (原ノ町から快速) | 07:43発 | → | 11:32着 11:44発 | 13:17着 |
ひたち9号 (いわきから快速) | 10:45発 | 13:15着 13:19発 | → | 16:19着 |
ひたち13号 (原ノ町から快速) | 12:45発 | → | 16:20着 16:32発 | 18:14着 |
ひたち19号 (原ノ町から快速) | 15:45発 | → | 19:23着 19:36発 | 21:14着 |
列車名 | 仙台 | 原ノ町 | いわき | 品川 |
ひたち6号 (いわきまで快速) | 05:23発 | → | 08:08着 08:18発 | 10:51着 |
ひたち14号 (原ノ町まで快速) | 09:41発 | 11:05着 11:08発 | → | 14:51着 |
ひたち26号 (原ノ町まで快速) | 15:35発 | 17:06着 17:09発 | → | 20:52着 |
ひたち30号 (原ノ町まで快速) | 17:34発 | 19:01着 19:06発 | → | 22:53着 |
東北新幹線の不通に伴い追加で運転される、いわゆる【救済臨】にあたるのはひたち6号・9号のみだったという見方が正しいでしょう。他はスピードダウンに伴う一部区間の種別変更にすぎません。しかし、首都圏や常磐線沿線から東北をめざす利用者にとって、徐行運転ながらも仙台直通で走ってくれるこれらの列車はすべて救済に値するとてもありがたい存在なので、臨時快速も含めて【救済臨】と表現します。
なぜ4往復体制なのか!?
昨年に新幹線が不通となったときは5往復(特急3往復+臨時快速2往復)が確保されましたが、今回は4往復にとどまっていました。当時の本数を確保してほしいという声も聞かれますが、なかなか難しいのです。
前年と本年で大きく異なることがあります。それが前述した「徐行運転」です。
徐行運転によりいわき~仙台間の所要時間が大幅に伸びてしまったことが原因でしょう。
通常であれば、
- ひたち3号→ひたち26号
- ひたち13号→ひたち30号
- ひたち19号→(翌日)ひたち14号
という車両繰りで回しています。5往復体制の臨時運転となったときは
- ひたち3号→ひたち22号
- ひたち9号→ひたち26号
- ひたち13号→ひたち30号
- ひたち19号→(翌日)ひたち6号
- ひたち25号→(翌日)ひたち14号
というサイクルになりました。ただ、これができたのは徐行運転がなかったから。今回は徐行運転の区間が相当数あるので、上のようなタイトなサイクルで回すことができません。
所要時間の増加に伴い折り返しに余裕を持たせなければならない、という事情があるので仕方がないのでしょう。
- ひたち3号→ひたち26号
- ひたち9号→ひたち30号
- ひたち13号→(翌日)ひたち6号
- ひたち19号→(翌日)ひたち14号
…と、こう見ていくと、新幹線代替として増発している1本は、所定ダイヤに近い特急ひたち号の運行を確保するための間合いとしても機能していたように見えてきますね。
例)ひたち13号(所定17:26着)→ひたち30号(所定18:02発)は、徐行運転制限下では間に合いません。
快速による延長運転をしないとしても、同程度の本数を同時刻で確保しようとすると、1本余計に編成が必要になることに変わりはないのです。
一石二鳥…なんて言い方はふさわしくありませんが、
- 所定ダイヤに近い特急列車運行の確保
- 新幹線不通に伴う需要増に対応
両者を満足できるよく考えられたダイヤでした。
特急ひたち13号原ノ町行きに乗車
救済臨に鉄道ファンが殺到して問題になるという話題を見て何だかなぁ…と思い乗車を控えていたのですが、想像以上に長引く東北新幹線の不通期間に、ついに我々の所用が重なってしまいました。
救済臨に乗車します。救済されます。本当にありがとうございますと、最初にお伝えします。
乗車したのは品川→原ノ町を走る「特急ひたち13号原ノ町行き」と、原ノ町から先の「臨時快速仙台行き」です。
特急券は「原ノ町」まででOK
原ノ町以北は快速列車ですから、特急券は原ノ町まででOKです。原ノ町から先は乗車券だけで利用できます。
オトク…というのも変なのですが、これにより、例えば水戸~日立付近から仙台に向かう場合、特急の営業キロが200kmを下回りますので、「JRE POINT利用のチケットレス特急券」が1280ポイントで発券できるようになります。
こういう状況ではありますが、おトクな手段は最大限に活用させてもらいましょう。
駅や車内では「原ノ町行き」
駅や車内では「特急原ノ町行き」として案内されています。自動音声も「原ノ町行きです」と表現。徹底しています。
茨城県内某駅での案内。かつては毎日運転されていた原ノ町行きも、震災後は初めてです。
某駅と言っても時刻でバレますね。水戸駅です水戸駅。はい。
新型車両のE657系(←現常磐線特急)として原ノ町行きが運転されるのも初めてです。
特急と快速の狭間を走るころ、
各地に生々しく残る仮設置の【制限35】表示。これらを(たぶん)一つも見逃すことなく減速し、しかし着実に北を目指します。
私が乗車した4月上旬某日の段階では、原ノ町~仙台間は臨時ダイヤ所定通りで運行されていましたが、所定ダイヤで計画していたいわき~原ノ町間では約8分程度の遅れが発生。特に上りの特急ひたち14号・26号・30号はいわき以南でも連日遅れが生じていました。なお、4月4日以降は、いわき~原ノ町間での徐行は解除され、4月14日からは全線で通常ダイヤでの運転となりました。
原ノ町駅に到着すると、終点到着時のお決まり「全席赤ランプ」となります。
次に、【指定席】から【自由席】に表示が変わり、ランプが消灯。
したかと思えば、またすべて赤色の点灯になりました。
なお、この先は自動音声なしで、車掌さんの肉声で案内されます。4点チャイムは使用されるみたいです。
グリーン車は使えません
私のようなケチくさいずる賢い人が行き着くのが「グリーン車使えるのかな!?」という発想ですが、残念ながら使えませんでした。
グリーン車は、臨時快速運転区間では「通路扱い」となり、新たに乗車される人はもちろん、特急区間から引き続きでのご利用もできないとの案内がありました。
混雑状況によって扱いが変わるかもしれませんが、少なくとも私が乗車した時は「通路扱い」でした。
普通車が快適すぎるので別に不要ですけどね、グリーン車。
直通運転してくれるだけで十分です。
まとめ
特急ひたち(原ノ町行き)(原ノ町から快速仙台行き)に乗車し、以下の知見を得ました。
- いわき以北は徐行区間が多かったです
- 徐行を見越したダイヤになっていました
- いわき~仙台間延長の1本は新幹線救済と間合い運用の側面がありました
- 特急区間での案内は「原ノ町行き」
- 乗換は不要で仙台まで直通でした
今回は私も救済臨を使わせていただきました。その立場で言うのも変ですが、趣味目的での乗車の場合、混雑時は臨機応変な対応をした方がいいと思います。お互いに協力し合いましょう。
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JRE POINTを活用したチケットレス特急券について
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鉄道会社の皆様へ。
地震で被害を受けた中でも都市間を移動できる手段を提供してくださり、ありがとうございました。
救済されました。
ではまた。