大型連休やイベント実施時などには新幹線や特急列車が増発されます。しかし、増発された臨時列車は遅いことが多いです。その理由について、常磐線特急「ときわ」を例に解説します。
常磐線の臨時特急
時は2020年の夏休み。東京ディズニーランドで遊んで一泊した後に茨城への帰路につく際、柏→水戸間の移動に臨時特急を選択しました。
臨時特急は空く傾向があるのが理由ですが、ただでさえコロナ禍で乗客が少ないのに臨時特急を設定したのは驚きでした。
案の定、車内はガラガラで、柏から水戸まで私の家族以外、同じ車両に乗客はいませんでした。
臨時特急が空く理由
臨時特急が空く理由はいくつか存在しますが、代表的なのは下記です。
パターンダイヤから外れている
例えば常磐線を走る定期特急の場合、下記のようにパターン化されていることが多いです。
列車名 | 上野発時刻 |
---|---|
特急「ひたち」 | 毎時00分 |
特急「ときわ」 | 毎時30分 |
また、多くの定期列車は品川ー上野間の上野東京ラインに直通しています。
しかし、臨時特急は時刻もバラバラで、上野発着となるため、上記パターンから外れて利用者から選ばれにくい傾向があるようです。
時刻表に載っていない
臨時特急は運転日が限られるため、駅の時刻表に掲載されていないことが多いです。
また、経路検索アプリなどを用いた場合、乗車日を正しく入力しないと臨時特急が表示されないこともあります。
そのため、利用者に十分周知されていないことが多いです。
定期列車に比べて遅い
後述しますが、臨時列車は定期列車に比べて所要時間が長くなることが多いです。
臨時特急のダイヤ
私が利用したのは8/14(金)の午前中です。
特急列車 | 区分 | 柏発 | 水戸着 |
---|---|---|---|
ときわ49号 | 臨時列車 | 1037 | 1144 |
ときわ57号 | 定期列車 | 1050 | 1147 |
ここで気づくと思うのですが、柏の時点で後続とは13分の差があったはずなのに、水戸到着時点では3分まで追いつかれてしまっています。いったい、何が起きているのでしょうか?
普通列車のダイヤを邪魔しないように
実はこれ、相当練られたダイヤになっています。
通常は、特急を1本増やすと普通列車のダイヤに影響を及ぼします。普通列車を退避させなければならないからです。
しかし、普通列車の利用者の便宜を図るため、そのダイヤをなるべく崩したくない。
柏駅発車後~土浦駅
ときわ49号(臨時列車)は、柏駅発車後土浦駅まではあえてゆっくり走って進みます。
そして、土浦駅で切り離し作業をしている水戸行きの電車の後ろにぴったりとくっつきます。
この間に、ときわ57号(定期列車)は時刻通りのスピードでぐんぐんと追い上げてきます。
もうこの時点で、2列車の差は数分までに縮んでいます。
高浜駅のトリック
特急列車の前を走る水戸行きの普通列車は(土浦から2駅目の)高浜駅で特急ときわ57号(定期列車)に抜かされるダイヤとなっています。
しかし、普通列車とときわ57号とは比較的離れて走っているため、高浜駅での普通列車の停車時間は長め(9分)に確保されています。
ときわ49号(臨時列車)は、このダイヤの隙間に目をつけているのです。
ときわ49号をわざとゆっくり走らせて、ときわ57号のすぐ前に位置させておき、3-4分間隔で特急2本を並べて走らせることで、普通列車が高浜に停車している9分間で特急2本にまとめて抜いてもらうのです。
こうすることで、普通列車のダイヤを崩すことなく、特急の本数を増やせるのです。
高浜駅~水戸駅
その後はときわ49号もトップスピードで走り抜けますが、ときわ57号との差は変わらずに水戸駅到着となります。
くっついて走っているので、そのほかの普通列車のダイヤにも影響を与えず、臨時列車としての役目を終えることが出来ます。
増発は大変です
ダイヤとダイヤの間に新たに設定する臨時列車は、所要時間が長くなりがちです。
しかしその裏では、ダイヤ編成上の工夫を凝らし、混乱を最小限に抑えています。
この夏は残念ながら空振りに終わりましたが、事態が収まれば需要も伸びてくるでしょう。
ダイヤ設定の腕の見せ所は、まだまだ続きそうです。
コメント