大阪市街地と関西空港を結ぶ2つの会社、JR西日本と南海電車はバチバチのライバルですが、りんくうタウンー関西空港間は仲良く同じ線路を通ります。なぜそうなったのか、なぜそんなことができるのか。カギとなるキーワードは「上下分離方式」です。その背景を分かりやすく解説します。
関西空港アクセスについて
関西空港は大阪市街地から50kmほど離れた国際空港で、西日本では最大の規模を有します。
JR西日本が運行する関空快速は、大阪環状線をぐるりと周ってから関西空港へ直行します。京橋や大阪駅の他、USJへの玄関口である西九条も経由し、きめこまかな輸送を担っています。2023年には大阪駅の地下ホームが開業し、特急はるかの利便性も向上しています。
一方、南海電車も市街から関西空港までのアクセスを担っています。大阪側の玄関口が「なんば」に限られますが、地下鉄とタイアップした企画乗車券を発売して弱みをカバーしつつ、南海ラピートという快適すぎる特急型車両を運行し、快適な空港アクセスを実現しています。
一言でいえば、この2社はバチバチのライバルなわけです。
関西空港駅でも別々の改札口を並べ、ウリの看板を並べて「こっちがいいよ~」って呼び込んでいます。
単なる私の感想ですが、どっちも好きです。
どっちにしようか悩みすぎて、頭を冷やすために再度ターミナルに戻ってしまったこともあります。笑
関空連絡橋では線路を共用
そんな感じでライバルですよ。とお伝えしてきたわけですが、りんくうタウンから関西空港までの1駅だけは、ちょっと事情が違います。
それがこちら。
これね、ただの線路のポイントだと思ったら大間違い。実はこれ、
え~!!ライバルなんじゃないの??
何も知らない人はびっくりするかもしれませんが、りんくうタウンから関西空港までの区間は、南海線とJR線が合流し、同じ線路を仲良く走行するんですね。
同じ線路をJR線の特急「はるか」と南海線の特急「ラピート」が通ります。
両社が同じ線路を通る理由
なぜ同じ線路を通るのか。
これには、関西空港の地理的な事情があります。
やさしく解説
関西空港は大阪湾の海上に設けられた埋め立ての空港です。
そのため、陸地からアクセスするには長い橋を渡らなければなりません。
この橋は関空連絡橋といいますが、この部分に各社の線路をそれぞれ設けたら、間違いなく割に合わないことは素人目で見ても分かりますよね。
そのため、各社の共用区間とし、橋梁部分のみは線路を同一にしたのです。JR線と南海線がどちらも狭軌の規格であることも幸いしました。
詳しく解説
実は、この橋梁区間は線路はJRのものでも、南海のものでもありません。
同区間は「新関西国際空港」という会社が管理しているもので、この線路の上をJRと南海が電車を走らせています。
このような方式を「上下分離方式」といい、上(列車の運行など)を実施する会社を「第二種鉄道事業者」、下(線路など)を管理する会社を「第三種鉄道事業者」と呼んでいます。
鉄道事業者 | 解説 |
第1種 | 鉄道会社が施設を保有し、列車の運行も行う方式 |
第2種 | 自らが施設を保有せず、列車の運行のみ行う方式 |
第3種 | 施設の保有のみを行い、鉄道会社に使用させる方式 |
通常は上下ともに当該の鉄道会社が管理する方式を取りますよね。これを「第一種鉄道事業者」というのですが、関西空港に渡る橋の部分は上下分離となっているため、「第二種」と「第三種」に分かれます。
第二種鉄道事業者が運営をし、第三種鉄道事業者に線路利用料(≒通行料金)を支払います。
上下分離方式を取る事情は様々なのですが、一般的には下の部分は巨額な赤字になりやすいから、という理由が最も多いようです。
天下のJR西日本や南海であっても、あの橋を自力で架けて線路を敷いたらさすがに経営は厳しくなりますよね。
一方で、ターミナルまで鉄道が来てくれないと利便性の面で空港も困る。
こういう場合に上下分離方式は理にかなった運営方法なんですよね。
ちなみに、同区間には「特別加算運賃」が設定されています。関西空港まで乗り通すと運賃が突然跳ね上がるのはこのためです。
関西空港駅は別々です
仲良く走行するのは橋の部分のみ。関西空港敷地内に入ったら、再び線路が分かれて別々のホームに到着となります。
下記は南海線のホームから出発方面を見たもの。向かって左がJR線、右が南海線で、複雑に交わるポイントを渡ってそれぞれの電車が運行されています。
ホームこそ分かれてしまいますが、停止位置は隣同士なので、南海ラピートの車内から関空快速を拝めることも出来ます。
う~ん、やっぱりどちらも魅力的で、関西空港を利用するときはいつも悩んじゃいますね。
まとめ
りんくうタウンー関西空港間の特殊な事情として下記が挙げられます。
- JR線と南海線が同じ線路を通る
- 上下分離方式を取っている
- 特別加算運賃を設定している
- 関西空港駅は別々のホーム
鉄道経由で関西空港を利用する際は「橋を渡るときのポイント」を少しだけ気にしてみてくださいね。
大阪駅うめきた地下ホームは利用したことありますか?梅田貨物線を地下に潜らせ、大阪駅に直結する地下ホームをわざわざ作りました。これにより、特急はるかや特急くろしおの利便性が大きく向上しました。
南海ラピートに乗りますか?それであれば最も安い乗り方を覚えておきましょう。最も有利な割引きっぷはレギュラーシートとスーパーシートで異なります。個人的なオススメは「普通運賃」+「チケットレス」でスーパーシートに乗車すること。以下の記事で詳しく解説しております。
JRの普通列車が乗り放題となる期間限定の格安きっぷ「青春18きっぷ」はご存じでしょうか?このきっぷ、実は空港連絡にも利用価値が高いのです。全国各地のJR線が乗り入れる空港線には特別加算運賃が設定されていることが多く、割高になりがち。しかし、そんな特別加算運賃も青春18きっぷであればお構いなし。例えば関東から関西に向かうとき、成田空港までの現地移動と、関西空港からの現地移動に青春18きっぷ1回分で処理できるのでオトクですよ。ぜひこの視点でも旅の計画をしてみてください。
ではまた。