運賃と料金が4割引きになるJR東日本の株主優待割引券は「片道」にしか使えません。しかし「片道」でさえあればよく、乗車券の区間と経路は自由に選べる強みを活かせば行って帰ってくることが可能です。ポイントは片道乗車券で一筆書きをすること。きっぷの基本を踏まえた上で、上手にオトクな旅行を楽しみましょう。なお、一緒に届く株主サービス券にも注目。株主優待割引券の陰に隠れてしまっていますが、地味にオトクなサービス優待券が冊子になって届きますから、こちらも見逃さないようチェックしましょう。
JR東日本の株主になるには
JR東日本は東証一部に上場していますので、誰でも株主になることができます。
ざっくりとした流れは、(1)証券会社に株式口座を開設し、(2)資金を振り込んで余力に反映させ、(3)買い注文を出して約定させるだけ。たったこれだけのステップで株主になれます。
株主になったうえで、JR東日本の株主優待を得るには、基準日に株を保有し、株主名簿に記載される必要があります。具体的には、3月末、9月末の権利確定日(※月末とは若干異なります)に100株以上保有していれば、その条件をクリアすることが出来ます。
上場企業の銘柄には4桁の銘柄コードが付与されていて、JR東日本の銘柄コードは【9020】です。Googleなどの検索エンジンで「9020」とだけ入力して検索すれば、今の株価をご覧いただけます。
株主になるには100株以上の保有が必要ですから、株価の100倍のお金が必要です。
どうでしょう。買えそうでしょうか?
JR東日本の株主になるには、かつては100万円以上の資金が必要でした。コロナ禍の影響が鉄道業界を直撃した際は、「今後も明るい見通しが立たない」という見方が一般的で、一時6000円を下回る水準まで下落しました。一方、明るい見通しが立たないことを織り込んでの低株価という考え方もあって、予想に反して利用が戻れば再び上昇すると見込むこともできます。
このように、株価は様々な思惑が入り混じって動いています。分散型のETFを買ってバランスよく資金を投入するなら「投資」と言えますが、個別銘柄を買う行為は一種の賭けに相当します。もし株を買い付けるなら「余裕中の余裕資金を使って自己責任で」お願いします。
そのうえで、株主優待券をゲットした人への賢い使い方のアドバイスへ話を進めてまいります。
株主優待割引券の概要
株主優待のメインの品はこちら。多くの方は、これを目当てにしています。
株主優待割引券は乗車券と特急券が4割引になるというもの。
乗車券の区間や経路はJR東日本管内であれば自由に選択できます。どんなに長い距離でも(短い距離でも)4割引きで購入することができます。
特急券も1列車に限り4割引きとなります。乗車券の区間内であることのほか、普通車またはグリーン車のみの割引(グランクラスやプレミアムグリーン車は対象外)になるなどの制約があるほか、乗継割引との併用はできませんが、それでも4割引きは大きいですよね。
株主優待割引券の適用範囲
(1)JR東日本管内の片道乗車券(1枚)
(2)片道乗車券区間内の特急券(1列車)
一筆書ききっぷなどの長距離の乗車券に、新幹線のグリーン特急券を組み込むなど、大胆な使い方をすればかなりの割引額になります(のちに重要)。

コロナ禍で鉄道の利用が低迷しているときには「えきねっとトクだ値スペシャル」と言われる最大50%引きの割引きっぷが発売されていました。そのため、株主優待割引券をわざわざ使わなくてもオトクに旅行ができたのですが、今は旅行需要が戻ってきていますので、再び株主優待割引券が威力を発揮するときが来たのでしょう。
賢く使っていきましょう。

株主優待割引券を賢く使う
乗車券「一筆書き」で”ほぼ往復”
まずは乗車券。
対象となるのは片道乗車券ですので、往復するなら株主優待割引券が2枚必要になります。
しかし、乗車券を発券する際に経路を工夫をすれば1枚で行って帰ってくる“ほぼ往復旅行”ができます。
例えば東京から秋田まで行って帰ってくる経路を考えてみましょう。
通常であれば、東京ー秋田間を秋田新幹線で往復すると思いますが、そうではなく、
「東京→盛岡→秋田→新潟→大宮(→東京)」
という経路で”片道乗車券”を発行すれば、株主優待割引券は1枚で足ります。
また、片道乗車券は距離が長くなるほどキロ単価が安くなるため、まさに一石二鳥です。
もちろん、途中で降りること(=途中下車)も可能です。
※途中下車のルールを知りたい方は下記の記事をご参考ください。

(補足)
乗車券が大宮止まりになっているのは、東京ー大宮間が重複となるためです。
簡単に比較してみましょう。
【単純往復】東京ー秋田間
普通運賃:10,010円(ゆき)
株主割引:6,000円(かえり)
合計:10,010+6,000=16,010円
【一筆書き】東京ー秋田間
東京→盛岡→秋田→新潟→大宮
普通運賃:14,740円(参考)
株主割引:8,840円
大宮→東京
普通運賃:580円
合計:8,840+580=9,420円
なんと!6,590円の差が出てきます。
これはすごいですよね。
特急券「長距離1列車」を割引に適用
普通車・グリーン車が対象
続いて特急券。
特急券は乗車券区間内の1列車に限り有効ですので、なるべく高価な列車に対して使うのがいいでしょう。
そして、グリーン車でも対象になりますから、この機会に乗ってみたいと思うのであればチャンスです。ぜひお試しください。とはいえ、グリーン車は設備のわりに高額です(普通車が快適とも言います)から、釣られて無理に利用するのは必ずしも賢い選択とは言えません。柔軟に判断しましょう。

…といいながら、私はグリーン車を利用していますが。
なお、他の割引(乗継割引など)との併用はできませんから、秋田→新潟(→東京)などで利用するのは得策とは言えません。
東京ー秋田の一筆書きルート上で使うのであれば、「東京→秋田間のこまち号」で使うのが賢いでしょう。
乗車変更も可能(指定席券売機利用可)
株主優待割引で発券した特急券は乗車変更もできます。
しかも、この操作は指定席券売機でも対応可能。

発券済みの特急券は1回しか乗車変更できませんから慎重になるべきですが、乗車直前で「確実に早い列車に乗れる」とか「確実に予約済みの列車に間に合わない」などが明らかになったら変更しましょう。
わざわざ窓口に並ばなくても、券売機で簡単に変更できるのは助かりますよね。
株主優待割引券の注意点
乗車券と特急券は同時に買わなければならない
乗車券と特急券に対して割引を適用することができますが、これは同時購入に限ります。
割引の乗車券のみを購入し、あとから特急券を割引価格で購入することはできません。
入念に旅行計画を立てたうえで発券しましょう。
払い戻しても権利は復活しない
航空会社の株主優待券であれば払い戻しにより株主優待券が復活しますが、これに慣れていると失敗しがちなこと。
JR東日本の株主優待割引券は、旅客都合で払戻しをすると、優待券の権利は復活しません。
慎重に発券しましょう。
旅行中も携帯する必要がある
しかし、もし列車の運行不能に伴う払戻しを受けることになった場合は、株主優待割引券を再度使えるように処理してもらえます。
何事もなければ「株主優待割引券の提示」を求められることはありませんが、不測の事態に見舞われた際に手元に株主優待割引券がないと救済の手続きができなくなりますので、必ず携行するようにしましょう。
なお、旅行開始後に羽越本線が不通となり、払い戻しを求めた際には、株主優待割引券の有効化対応を断られた経験があります。
株主優待割引券を復活できるのは「出発駅に戻る」などの全額払い戻しに該当する場合に限ると思われます。ケースバイケースとなりますので、係員に相談しましょう。
JR東日本区間を外れると別料金
JR東日本の株主優待ですから、JR東日本の区間内でのみ有効です。
他社線にはみ出すと、同区間の無割引運賃・料金がかかりますので、かえって割高になることもあります。
特に北陸新幹線を利用して富山・金沢方面に行く場合は注意が必要です。JR東日本の株主優待券が有効となるのは上越妙高までとなります。通しで乗車できるようにきっぷを手配することは可能ですが、それぞれの会社の運賃・特急料金を個別に計算することになりますので、場合によっては割高になることもあります。
株主サービス券
おまけのように入れてくれている株主サービス券ですが、これは多角経営しているJR東日本ならではの「サービスの宝庫」です。
一つずつ見ていきましょう。

ドリンク100円引き券
ベックスコーヒーショップやベッカーズで利用できる、ドリンク100円引き券が3枚付いています。ドリンク割引券はVIEWカードを持っている人であれば簡単に手に入るものなのですが、この場合は50円引きです。100円も引いてくれるのは株主サービス券の強みですね。
これは間違いなく使い切ります。

駅レンタカー割引券
JR東日本エリアの駅レンタカー利用料金が30%引きになる券が3枚付いています。嬉しいのは免責補償とNOCサービス料が含まれているため、申し込みの時に悩む必要がないですね。
一方、乗り捨て料金は割引対象外とのこと。周遊するには使えませんね。

GALA湯沢スキー場割引券
GALA湯沢にまつわる割引券が入っています。
JRE MALL内のGALA湯沢サイトから株主専用リフト券を購入し、当日にカウンターで電子チケット+優待券を提示して引き換える流れのようです。
かつては半額になっていた優待券ですが、上記で買える株主専用リフト券は相場の1~2割引。ちょっと改悪かもしれません。
しかし、枚数が3枚から6枚に倍増したのはうれしいですね。
使うかなぁ…使わない気がしますが、雪遊びに子どもを連れて行くだけでもいいのかもしれませんし、スキーをしない人でも「サマーリフト」に使うこともできるようです。
3人家族なら夏に3枚、冬に3枚なんて使い方もアリですね。
ホテル割引券
JR東日本ホテルズ(メトロポリタンやメッツなど)を予約する際、株主優待プランを予約することが出来ます。およそ10-20%引きの相場で設定されているようです。
ホテルの割引券をもらうことは多いのですが、大抵の場合「正規料金から割引」なんですよ。しかしこれは相場を加味した割引。嬉しい特典ですね。アパホテルや東横インに飽きたら、こっちのホテルを使うのもアリですね。
ちなみに6枚もついています。

そのほか、レストラン割引券も3枚付いています。
リラクゼ割引券
マッサージ店の15%割引券が3枚付いています。絶妙な割引率。
ちなみにエステ初回割引サービスとの併用はできないようです…と言っても、何を言っているのか私にはさっぱりです。
私はマッサージというものがどうも苦手で、間違いなく使いませんので、妻に渡しておこうと思います。
鉄道博物館割引券
大宮の鉄道博物館入館料が50%引きになる券が2枚入っています。嬉しいですね。
入館料は、大人1,330円。小中高生上620円、幼児(3歳以上)310円です。
ちなみに我が家は3人家族なので、大人が2枚使って、子どもは正規幼児料金で入館しようと思います。
東京ステーションギャラリー割引券
東京ステーションギャラリーに50%引きで入場できる券が2枚入っています。対象外の企画展もあるようなので、その点は注意ですね。
JRE MALL 500円券
JRE MALLで1000円以上購入時に500円引きできる券が1枚入っています。
これは従来と比較して若干の劣化。これまでは無条件で500ポイントもらえていたわけですから、使い勝手は悪くなっています。
とはいえ、せっかくのクーポンですから使いましょう。
普段はAmazonや楽天に浸かりっぱなしのみなさまも、この機会にJRE MALLを使ってみましょうか。
STATION BOOTH 1時間券
面白い取り組みが来ました。
駅にあるブースを1時間利用できる券が1枚付いています。
割引券にQRコードが付いていて、これをかざして使うようです。

この箱に1時間入れます。どれくらい仕事がはかどるのか、試してみてください。
なお、本来であれば追加料金なしでできる予約ができません。空いていることが前提となります。
トッピング無料券
いろり庵きらく・そばいちで使える「たまご・わかめ・かき揚げ」の中から1品無料でトッピングできる券が3枚付いています。これなら絶対わかめだね。

かき揚げにしました。
割安な価格で軽めにいただける「モーニング時間帯」にも使えますので、ぜひお気軽に立ち寄ってみてください。
9月の「報告書」に割引券が付くことも
JR東日本の株主優待は3月のみですが、9月末時点の株主に送付される報告書類に割引券が付いてくることがあります。
2023年9月末の株主には、主に、
- ベックスコーヒーショップ100円引き券
- いろり庵きらくのトッピング券
などが付与されました。
わずかではありますが、もらえるものはもらっておきましょう。
まとめ
JR東日本の株主優待について、以下の知見を得ました。
- 株主優待割引証は運賃と料金が4割引きになる
- 料金はグリーン車も対象
- 運賃は片道乗車券1枚のみ対象
- 一筆書きで片道乗車券を買うと「ほぼ往復」できる
- 株主サービス券も魅力的
お目当ては「株主優待割引券(4割引)」であることは間違いありませんが、一緒についてくる株主サービス券も見逃せません。
幅広く事業を手掛けるJR東日本のサービスを体験する機会にもなる、株主優待本来の目的も果たしていますね。
ではまた。