青春18きっぷの仕様変更で損する人と得する人

青春18きっぷが仕様変更される

全国のJR線の普通列車が乗り降り自由となる青春18きっぷ。

近年、廃止論がささやかれていた中、我々が目にしたニュースは斜め上を行くものでした。

当然、SNS上では非難の嵐。

前言撤回を求める署名活動まで起きる状況となりました。

お察しの通り、控えめに言っても「大改悪」です。

日頃、JR各社の肩を持ちがちな著者であっても、今回の件は養護できません。

青春18きっぷの仕様変更で損する人

「大改悪」と言っているわけですから、ほとんどの人が「損する人」に該当しますが、一応復習しておきましょう。

週休２日制のサラリーマン

青春18きっぷは、学生の長期休みに合わせて発売されています。これは学生の旅行を支援するというよりは、学生の利用が大半を占める地方のローカル線において「学校の長期休み中に空気を運ぶくらいなら人を運んだほうがいい」という発想で設定されています。

しかし、青春18きっぷは学生だけでなく幅広い層から支持を得ていました。

週休２日制が浸透している日本において、期間中の任意の５日間を自由に選んで利用できるという青春18きっぷの利便性の高さは抜きに出ていました。

ある週末に２日分利用して、次の週末に２日分利用、余った分を日帰りで１日分利用。

日が離れてもいいからこそ、自由な使い方ができたのです。

しかし、これからはそれができなくなります。

つまり、連続した休みを取れないサラリーマンは手を出せなくなります。

帰省利用の学生さん

お盆や年末年始の帰省時に新幹線を使うと高額になります。

そのため、青春18きっぷを使って実家に帰省していたという人も多いでしょう。

この場合、例えば東京ー大阪間であれば、

・行きに１日分を利用
・帰りに１日分を利用

という使い方ができたのです。

これなら、実質２回分（4820円）で往復できたのです。

しかしこれからはその使い方が許されません。

無理やりやろうとするならば、５日以内に往復を済ませる方法がありますが、それでも12050円かかり、中３日は無駄になります。

５日以上滞在するのであれば、

・行きに３日用を使用（10000円）
・帰りに３日用を使用（10000円）

合計20000円の費用がかかります。

これまでと比較して４倍以上の出費になるのです。

家族や友達と旅行する人

これまでは５人グループの日帰り旅行に１冊使用することができました。この使い方であれば、１人あたり2410円です。

しかし、これからは日帰り旅行であっても３日用を１人１枚持つ必要があります。これからは１人あたり10000円かかるのです。

この場合でも４倍以上のコストアップです。

青春18きっぷを使って北海道に行こうとする人

これまでは、奥津軽いまべつ駅から木古内駅までの北海道新幹線と、木古内駅から函館駅（五稜郭駅）までの道南いさりび鉄道の利用がセットになったオプション券を2500円で購入することができました。

しかし、これからは新青森駅から木古内駅までの北海道新幹線を利用できるようになった代わりに、オプション券の金額が4500円まで跳ね上がりました。

2000円以上の値上がりを許容できる人はあまりいないでしょう。

青春18きっぷの仕様変更で得する人

損する人が悲鳴を上げている中で、得する人もいるのでご紹介します。

どうしても「青春18きっぷ＋オプション券」で海を渡りたい人

オプション券の値段が跳ね上がっていますので、もはや青春18きっぷで海をわたるメリットはほとんどなく、北海道＆東日本パスの活用や、青函フェリーや津軽海峡フェリーで渡るのが正解となります。

どうしても青春18きっぷで渡りたい！という人であれば、これまでは津軽線の普通列車と代行タクシーを乗り継いだうえで、奥津軽いまべつ駅というほとんど何も無い駅で北海道新幹線を待たなければなりませんでした。

しかし、これからは新青森駅から利用できるようになりますから「得をした」と言えるでしょう。

JRの駅改札で勤務する人

JRの駅改札口で働く人達は得をすることになります。青春18きっぷ自体の金額は変わらない（＝同じように売れれば同じ売上が立つ）という状況の中、改札口での業務を削減することができました。

・きっぷの発行年を確認する作業
・きっぷの有効期間を確認する作業
・きっぷに入鋏する作業
・きっぷの入鋏印の日付を確認する作業
・青春18きっぷ利用者による改札口の行列をさばく作業

これらすべてを消すことができます。

一方で、青春18きっぷ改悪に伴い意見を述べるクレーマー対策というのも少し増えるかもしれませんが、それは末端の人間にはどうしようもできません。

「お客様ご自身でお客様相談室にご連絡ください」といえばいいのです。

おいしいですよね。

リタイア済みの世代

JR東日本で働く方へのインタビュー記事によると、青春18きっぷの利用者としてボリュームゾーンと言われているのは、実はご高齢の方だそうです。

おそらく若い頃に青春18きっぷで旅行したときの経験があり、時間に余裕ができたあとにも普通列車の旅を楽しまれているのでしょう。

リタイア済みであれば、時間の使い方は自由自在。

もともと連続５日利用していた人も多いでしょうし、そういう人には全く影響がありません。

今回の改悪によって青春18きっぷの利用者数は間違いなく減るでしょうから、これまでと比較して普通列車の混雑も緩和されることが予想されます。

マイナス要素がなければ、車内環境の改善分だけ「得をした」と言えるのではないでしょうか。

ちなみにSNS上には「シニア65きっぷ」に改称したらどうか？という皮肉もありますが、さすがにそれはやりすぎです。シニアであっても青春時代の心はあるのです。

未使用分を使い切れずに捨てていた人

周りを見ると、実は「５日間も使い切れない」と言っている人が意外といらっしゃるようです。

実際に私自身も、そのような知人から「残り２回分をタダであげる」と利用最終日の夕方に言われたことが２回もあります。あまりにかわいそうなので、実費分として380円だけ渡して、彼の代わりに横浜から武蔵溝ノ口までで１回分を使いました。

実際にドブに捨てているようなことがあるので、３日用が新たに登場したのは「得をした」と言えるのかもしれません。

自動改札を活用したい人

これまでの青春18きっぷは、入鋏印を有人改札で見せないと改札を通過できません。

しかし、これからは自動改札機を通過できますので、よりシームレスにご利用いただけます。

これにより得をする人のタイプには下記があります。

スタンプラリーをする人

季節のスタンプラリーやエキタグ集め、駅スタンプなどを集めている人は、１駅進んで乗り降りするということも多いでしょう。

１駅ごとに、いちいち有人改札を２度も通る手間がなくなります。

秒単位で動いている人

お忙しい人は、「次の電車に乗りたい」と思っていることでしょう。

そんなときに立ちはだかる「有人改札の長蛇の列」は絶望的な存在でした。

これからは狙った電車に、狙い通りの乗車ができるようになります。

キセルを疑っていた駅係員

これまでの青春18きっぷは磁気情報を読まなかったことから、不正が横行していたといいます。

具体的には、日付を誤魔化してそのまま（混雑している）有人改札を突破する人や、１年前の余った青春18きっぷを年跨ぎで使ってしまう人、券面そのものを偽造する悪質なケースもあったようです。

これからは磁気情報で管理できますので、人を疑う心は不要になります。

まとめ

青春18きっぷの仕様変更に関して、損をする人と得をする人をまとめてみました。

• 一般的な利用者は損をします
• 休みを連続で取れる人や、5日分も使いきれなかった人、駅員さんは得をします

実質廃止になったといってもいい青春18きっぷ。

「利用低迷」を理由に、完全廃止に追い込まれる日も近いと私は思っています。

ではまた。