何もないと噂の福島県にある常磐線双葉駅周辺を散策してみました。海岸付近にオープンした双葉町産業交流センターが一帯の中心となっていて、駅からのシャトルバスも運行。周辺には新たに企業も進出しており、カフェやショップを併設した「スーパーゼロミル」という施設もあります。徐々に活気を取り戻し始めていますから、何もないというのは言い過ぎでしょう。なお、駅の山側には自治体が主導となった宅地開発も進んでいて、駅前の一戸建てに入居することも可能なようです。
復活した双葉駅
JR常磐線「いわきー原ノ町」の一部区間は、東日本大震災の影響で9年間にわたり不通となっていましたが、2020年3月14日に再開となりました。
しかし、乗客のほとんどは通過利用。
最後の最後に復旧した富岡ー浪江の区間は原発事故の影響を真正面から受けてしまったエリアで、同区間は運転再開後も厳しい状況が続いておりました。
中でも原発から近い駅の一つである「双葉駅」は、特急を含む全列車が停車するものの、駅前にはバリケードが設置されて先に進めない状態であることは他で報じられている通り。
「これでは復旧したとは言えない」
しかし、街の復活を願い、たとえ利用者がいなくとも、特急ひたち号を含むすべての列車の停車は続きました。
双葉駅で降りてみた
そんな双葉駅。
ずっと気になっていて行きたかったのですが、何もない場所にわざわざ行くのも気が引ける。
そう思っていたら、とあるYouTuberさんから「双葉駅周辺の施設でイベントを行う」という話があり、明確な予定を持って双葉駅に下車する運びとなりました。
これは楽しみです。
乗車したのは特急「ひたち3号」仙台行き。水戸駅から乗車。ほぼ満席の状態で北上しますが、いわきを過ぎる頃には乗車率も落ち着いてきます。
双葉駅に到着する頃には「どんな目立ち方をしてしまうんだろう」という(土合駅下車時に似た)独特な緊張感とともに席を立ち、ついに降り立ちます。
一緒に降りた乗客は10人以上いましたが、この日は同じイベントの参加者がいたため、双葉駅は特需に沸いており、乗降客数は参考にならないでしょう。
双葉駅は1面1線です。パッと見た感じは2面2線ですが、もう一方は使われていないダミーホームです。常磐線の同駅周辺では、列車は単線で、その横に緊急車両が通れるスペースが設けられている区間が多く、その流れを受けているのでしょう。行き違いをさせなければならないほどの本数もありません。
そんな感じなので平面の駅舎にしても問題ないように感じられますが、双葉駅は橋上駅舎となっていて、問答無用で2階に上がることになっています。
双葉駅は東京近郊区間に含まれていて、Suicaも使えますが、駅には係員さんはいません。
しかし、複雑な精算でもピンク色の精算機を使えば大丈夫。どこかの有人駅に繋がり、遠隔で精算することができます。モバイルSuicaでも大丈夫ですし、改札機を通らないような大きいきっぷでもカメラで読み取れる仕組みが導入されています。
指定席券売機もありますので、当駅からの乗車も心配なし。
双葉駅からは路線バスが運行
双葉駅を降りたらバリケード、というのは昔の話。
今では双葉駅から太平洋に向けて立ち入ることができるようになっていて、周辺施設への路線バスも運行されています。
路線バスは、双葉駅と原子力災害伝承館の2点間を結ぶシャトル便です。1乗車200円ということですが、いつ野生動物とエンカウントするかもわからない道のりを安全かつ快適に移動できる手段としては貴重です。
スーパーゼロミルに入店
今回は別に用意してもらったシャトルバスで目的地へ。
スーパーゼロミルという浅野撚糸さんの工場兼店舗です。
施設の屋根に設置されたモニュメントが見どころなのですが、
残念ながらその全景はドローンから見るしかなく、施設内からは「なんとなくあそこがRなんだろうな」などと雰囲気で感じ取るしかありません。笑
そんなエピソードも自虐的にお話してくれるガイドさんによると、浅野撚糸さんはかつて「潰れかけたときに取引先の方々から助けてもらった経験」があるそう。
いつかその時のお返しをしたいという想いが重なり、福島県双葉町への進出につながったそうです。
案内してくれたガイドさんによると、
「工場内は秘密がいっぱいなので絶対撮影するなよ!絶対拡散するなよ!絶対やめろよ!押すなよ!」
ということだったので、公開することにします。(※撮影拡散OKです)
この工場では「SUPER ZERO(R)」というタオルを作っていて、吸水性が高いことをウリにしています。
タオルの原料となる糸には水溶性ポリマが使われているとのこと。上記の写真は、非水溶性ポリマの糸と水溶性ポリマの糸をあわせている工程だそうです。
その後の詳しい話はありませんでしたが、その結果としてふわふわなタオルができるそうです。
ちょっとだけ持ち合わせている化学の知識で私から補足。
おそらくですが、せっかく縫い合わせても水溶性ポリマは水に溶けてなくなりますので、我々が購入するタオルには既に入っていません。じゃあなぜそんな回りくどい事をするのか。というと、あえて水溶性ポリマも含ませた形で一旦タオルを作り、あとで水に溶かして水溶性ポリマ部分のみを除去することで、完成したタオルに隙間の多い構造を形成するのでしょう。使用時には、この隙間に水を含ませることができますから、吸水性や保温性の高いふわふわとした触り心地のタオルに仕上がります。
あくまで私の予想で、もしかするとここに企業のマル秘ノウハウがあるのかもしれません。
で、そのタオルがほしいとなったら、買えます。
お腹が空いた?
食べられます。
キーズカフェ
>> 食べログ
食べログでは辛辣な評価のようですが、私は気に入りました。
双葉町産業交流センターへ
スーパーゼロミルを出て、歩いて海沿いへ向かいます。
道路は歩道を含めてきれいに整備されており、とても歩きやすいです。
徒歩5分程度で原子力災害伝承館に到着します。
…が、事前調査の館内展示内容と見比べて入場料が高く(大人600円)、代わりにすぐ隣の双葉町産業交流センターへ向かいます。
簡単ではありますが、館内にフードコートがある他、コンビニ(ファミリーマート)も入店。店舗の少ない地域で貴重な存在です。
この施設の最上階からは太平洋を一望できます。
震災を知っている人は色々と考えてしまうかもしれませんが、しかし眼前に広がっているのは確かにきれいな海であると言い切ることもまた、許されるでしょう。
そして、施設内には震災の記録を後世に伝える展示室もあります。ここで見つけた下記の本が大変参考になります。
ついつい読みふけってしまいましたが、改めて震災の強さを思い知り、その備えの大切さを再認識することになりました。
双葉町は「だるま」が有名
さて、気を取り直して。
そこらじゅうで見られるのが「だるま」のお土産品です。
もし気になるようでしたら連れて帰ってあげてください。
ちなみに「赤べこ」もよく見ますが、こちらは会津のキャラであり、たまたま浜通りに遊びに来ているだけだと思います。でもかわいいので連れて帰ってあげてください。
双葉駅の西側は宅地開発中
駅に戻って反対側にまわります。
すると、駅を出て徒歩10秒のところに一軒家が立ち並んでいることがわかります。
周辺は自治体が主導となって宅地開発されていて、既に入居済みの建物も見られますが、まだ希望者は入居できるようです。
駅前に住みたいという方は是非どうぞ。
まとめ
少々名残惜しいですが、そろそろ帰りの時間です。
特急「ひたち22号」で水戸に帰ります。奇しくも「ひたち3号」の折り返しです。
双葉駅で降りてみて、以下の知見を得ました。
- 双葉駅はJR常磐線の途中駅
- 特急を含む全ての列車が停車する
- 駅前のバリケードは撤去
- 新しい企業が進出中
- 吸水性の高いタオルが手に入る「スーパーゼロミル」
- 高い入場料の「原子力災害伝承館」
- 無料で満足度の高い「双葉町産業交流センター」
- 駅の山側では「宅地開発中」
みなさまも、2024年6月現在の情報としてご参考ください。
ではまた。